お箸で はしわたし① 世界の共通の話題
国際箸学会理事長 小宮山 栄
「なぜ、箸などに興味を持ったのか?」。よく聞かれる。答えは「箸は面白い!しかも世界の人と『共通の話題』が作れるから…」である。
私は業務用特殊広角ミラーの製造と販売にかかわってきた。モノづくり歴40年。単純だが機能面ですごいものに興味を持ってきた。中でも40~50歳代のころは下駄だった。下駄は靴に比べ、左右が共通、大きさも大体でよく、ムレない。そしてすぐ履ける。草履やスリッパに比べても少し高さがあるので、地べたの水やゴミから足を守り、しかも歩きやすい。私の小中高校時代はほとんど全員が下駄で通っていた。それが今、ほぼ全員が靴下と靴。
「こんなすばらしい下駄がなぜ消えたのか?」と考え続けた。
「なぜ?」
「それは、コンクリートの時代に合ったクッション性のある下駄を開発できなかったから…」
それが私の結論だった。そしてお金と時問と知恵の協力者ができたら、開発するのが夢だった。
いろんな人に話してみたが、「面白い!」と言って推薦文をくれたのは、建築家の北川原温さんぐらいで、ほとんどが変人扱いをするか無視するかであった。そのうち本業の新商品の売れ行き不振もあり、いつの間にか下駄の開発をやめていた。今考えてみると、下駄の話はみんなとの「共通の話題」にならなかったのである。
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【突き刺す、はさみ切る、持ち上げる・・・。片手だけで鳥のくちばしと同じ仕事ができます】
15年前ぐらいのことだったろうか。勉強会仲間の友人があるトップセールスマンの講演を聞き、しきりに感心していた。「人間は共通の話題があると、一気に心理的な壁が取り除けて、親しくなる」という。「共通の話題か!」
それ以来、私も、「共通の話題」というキーワードに興味を持ち始めた。近所の人とのあいさつは「今日は寒いですね」であり、飲み屋では「今朝、地震がありましたね」などの話の種から、知らない人とでも話せる。そして会社の営業には「共通の話題から話せ」と言っている。行事の時の幹事には「出席者の共通の話題を中心にするんだぞ」と話すようになった。
日本人は桜の季節になるとうれしくなるが、これは共通の話題から話がはずんでいく要因もあると思う。その点「下駄」は共通の話題にならなかった。しかし、箸の話は世界の人々と共通の話題になると思う。
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【真剣に箸ピーにとりくむイヌイットの子どもたち(グローバルエドベンチャーのホームページ「宮下典子隊員の日誌」から)】
例えば、冒険家の太陽満郎さんのグループの女性がイヌイットの子どもたちに、殻付きピーナツを箸で移動させるゲーム「箸ピー」をやってもらったところ、大変盛り上がったそうだ(グローバルエドベンチャーのホームページ参照)。
箸はあらゆるものと共通の話題になる可能性がある。例えば、下記の○○論の頭に「箸と」をつければ面白いと思う。「教育論」「環境論」「道具論」「くちばし論・進化論」「モノづくり論」「デザイン論」「食文化論」「マーケティング論」「日本人論」「ゲーム論」など。共通の話題ができれば、つながりができ、人生は楽しくなるのだ。(金曜掲載)
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「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年10月1日付掲載
洋食では、スプーンとナイフとフォークが必要だが、和食では箸があれはたいてい事足りる。ものすごい機能的な道具なのだ!
その箸の正しい使い方を改めて学びなおしたいですね。
国際箸学会理事長 小宮山 栄
「なぜ、箸などに興味を持ったのか?」。よく聞かれる。答えは「箸は面白い!しかも世界の人と『共通の話題』が作れるから…」である。
私は業務用特殊広角ミラーの製造と販売にかかわってきた。モノづくり歴40年。単純だが機能面ですごいものに興味を持ってきた。中でも40~50歳代のころは下駄だった。下駄は靴に比べ、左右が共通、大きさも大体でよく、ムレない。そしてすぐ履ける。草履やスリッパに比べても少し高さがあるので、地べたの水やゴミから足を守り、しかも歩きやすい。私の小中高校時代はほとんど全員が下駄で通っていた。それが今、ほぼ全員が靴下と靴。
「こんなすばらしい下駄がなぜ消えたのか?」と考え続けた。
「なぜ?」
「それは、コンクリートの時代に合ったクッション性のある下駄を開発できなかったから…」
それが私の結論だった。そしてお金と時問と知恵の協力者ができたら、開発するのが夢だった。
いろんな人に話してみたが、「面白い!」と言って推薦文をくれたのは、建築家の北川原温さんぐらいで、ほとんどが変人扱いをするか無視するかであった。そのうち本業の新商品の売れ行き不振もあり、いつの間にか下駄の開発をやめていた。今考えてみると、下駄の話はみんなとの「共通の話題」にならなかったのである。
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【突き刺す、はさみ切る、持ち上げる・・・。片手だけで鳥のくちばしと同じ仕事ができます】
15年前ぐらいのことだったろうか。勉強会仲間の友人があるトップセールスマンの講演を聞き、しきりに感心していた。「人間は共通の話題があると、一気に心理的な壁が取り除けて、親しくなる」という。「共通の話題か!」
それ以来、私も、「共通の話題」というキーワードに興味を持ち始めた。近所の人とのあいさつは「今日は寒いですね」であり、飲み屋では「今朝、地震がありましたね」などの話の種から、知らない人とでも話せる。そして会社の営業には「共通の話題から話せ」と言っている。行事の時の幹事には「出席者の共通の話題を中心にするんだぞ」と話すようになった。
日本人は桜の季節になるとうれしくなるが、これは共通の話題から話がはずんでいく要因もあると思う。その点「下駄」は共通の話題にならなかった。しかし、箸の話は世界の人々と共通の話題になると思う。
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【真剣に箸ピーにとりくむイヌイットの子どもたち(グローバルエドベンチャーのホームページ「宮下典子隊員の日誌」から)】
例えば、冒険家の太陽満郎さんのグループの女性がイヌイットの子どもたちに、殻付きピーナツを箸で移動させるゲーム「箸ピー」をやってもらったところ、大変盛り上がったそうだ(グローバルエドベンチャーのホームページ参照)。
箸はあらゆるものと共通の話題になる可能性がある。例えば、下記の○○論の頭に「箸と」をつければ面白いと思う。「教育論」「環境論」「道具論」「くちばし論・進化論」「モノづくり論」「デザイン論」「食文化論」「マーケティング論」「日本人論」「ゲーム論」など。共通の話題ができれば、つながりができ、人生は楽しくなるのだ。(金曜掲載)
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「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年10月1日付掲載
洋食では、スプーンとナイフとフォークが必要だが、和食では箸があれはたいてい事足りる。ものすごい機能的な道具なのだ!
その箸の正しい使い方を改めて学びなおしたいですね。