奇跡の海を守れ! 山口・上関原発建設を許すな!
中国電力が強行する上関(かみのせき)原子力発電所=山口県上関町=の建設計画をめぐり、緊張が高まっています。海面埋め立て工事再開に伴い、2月23日には作業員や警備員の暴行で住民ら2人が病院に運ばれる事態も。“瀬戸内の原風景”が残る現地はいまー。 北條伸矢記者
建設予定地の長島田ノ浦から海を挟んで4キロに位置する離島、祝島(いわいしま)を訪ねました。人口490人。定期船は1日わずか3往復です。
工事現場を真正面に望む波止場で、50代の女性が話します。
「工事船が動いたという情報が入り、2月21日の未明、みんなと漁船で現場沖に駆けつけました。目の前に原発を造られてはたまりません。事故が起きたら、私たちは逃げられん」
建設計画が浮上してから29年。島民の9割が加わる「上関原発を建てさせない祝島島民の会」を先頭に反対運動が続き、計画は立ち往生しています。ハマチやタイの漁場を奪われる島の漁業者は補償金11億円の受け取りを拒否してきました。
祝島 島内デモ千回超で団結!
月曜が定例
運動の象徴は毎週定例の「島内デモ」です。月曜夜、天候や事情が許す限り実施。これまで1080回以上を数えます。
「もともと自然発生的に始まった行動です。抗議の意思を確認して情報を共有する。高齢化が進み、最近は“お元気確認”の意味もあるんです」
こう説明するのは、「島民の会」代表運営委員の山戸貞夫さん(60)です。島民の75%が65歳以上ですが、島おこしの機運も高まっています。
海路の要所として古くから知られる祝島は、万葉集にも登場。海を渡る祭り「神舞(かんまい)」、路地裏を彩る石積みの練り塀も有名です。
無農薬栽培のビワ、名産のヒジキに加え、近年は島民が出す残飯だけで育てるブタの放牧も。さらに今年から、島の自立をめざす「自然エネルギー100%構想」が始まりました。太陽光発電、産業振興、原発反対運動への支援を有機的に結びつけた独創的な試みです。
山戸さんは「悲壮感はありません。原発頼みから脱却する道をみんなで探っています」と語ります。
生態系壊す
上関町全体の人口は最近30年間でほぼ半減し、現在約3600人。原発建設の是非が町民世論を二分しています。小柳昭さん(84)=元日本共産党町議=が言います。
「計画が発覚した29年前、原発反対は町議会で私一人でした。その後の各種選挙では、住民の4割が原発反対候補に投票しています。本音は反対、という人も少なくありません」
「島民の会」も参加する「原発に反対する上関町民の会」の人たちとともに、小柳さんは原発に頼らない町づくりを長年呼びかけてきました。共産党上関支部の田中照久さん(39)が強調します。
「原発誘致で人口が増えたという話は聞いたことがありません。原発財源でハコモノが増えても、人が住んでいなければ意味がない。原発に頼らない町づくりが大切です」
原発完成後は、海水温より7度も高い温排水が毎秒190トンも出ます。漁業は壊滅的な打撃を受け、生態系への影響も避けられません。自然海岸が75%(瀬戸内海平均は21%)も残り、“奇跡の海”と称される長島地区の自然破壊が心配です。
世界に5千羽しかいない希少鳥類カンムリウミスズメ、イルカの仲間スナメリ…。原発建設予定地の周辺には、絶滅が危ぶまれている希少動物が生息しています。「長島の自然を守る会」代表の高島美登里さんが訴えます。
「原発建設は、生物多様性の宝庫を台無しにします。いま中止させれば、まだ間に合います。全国にも、世界にも支援を呼びかけたい」
上関原子力発電所とは
上関町長島の西端、田ノ浦に中国電力が建設を計画している原子力発電所。出力137.3万キロワットの改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を2基設置する予定で、用地面積160万平方メートル中、14万平方メートルが海上埋め立て地です。
中国電力は2009年10月に埋め立て工事に着手し、同12月、1号機の設置許可申請を提出しました。
原発建設に対しては、日本生態学会、日本ベントス(底生生物)学会、日本鳥学会が合同で工事の一時中断などを要求。映画監督の山田洋次さん、作家の椎名誠さんら言論文化人、ジャーナリストが昨年(2010年)10月、連名で建設中止を求める「緊急声明」を発表しています。
日本共産党の市田忠義書記局長は2010年4月、参院環境委員会で上関原発について質問。生物多様性保全にとって「非常に貴重な場所だ」と述べ、「原発の建設計画をやめ、海洋保護区に指定すべきだ」と求めました。
民主党政権は、前自公政権以上に原発を増設する立場。しかし昨年来の上関原発反対全国署名は100万筆に達する勢いです。民主、自民両党の国会議員らが椙次いで現地を視察する動きも生まれています
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年3月6日付掲載
山口県は僕の生まれ故郷。法事などで親戚が集まった時には、上関原発のことが話題になります。
「放射能漏れが起こったら大変」と危機感を持っています。
僕は「それ以上に温排水で環境が変わることが問題」と訴えています。
原発の建設予定地の長島は本州の上関と橋でつながっています。しかし、祝島は一日3往復の定期船しかありません。
もしもの時には逃げる手段がないんです。
ぜひとも建設中止にさせないといけませんネ。
中国電力が強行する上関(かみのせき)原子力発電所=山口県上関町=の建設計画をめぐり、緊張が高まっています。海面埋め立て工事再開に伴い、2月23日には作業員や警備員の暴行で住民ら2人が病院に運ばれる事態も。“瀬戸内の原風景”が残る現地はいまー。 北條伸矢記者
建設予定地の長島田ノ浦から海を挟んで4キロに位置する離島、祝島(いわいしま)を訪ねました。人口490人。定期船は1日わずか3往復です。
工事現場を真正面に望む波止場で、50代の女性が話します。
「工事船が動いたという情報が入り、2月21日の未明、みんなと漁船で現場沖に駆けつけました。目の前に原発を造られてはたまりません。事故が起きたら、私たちは逃げられん」
建設計画が浮上してから29年。島民の9割が加わる「上関原発を建てさせない祝島島民の会」を先頭に反対運動が続き、計画は立ち往生しています。ハマチやタイの漁場を奪われる島の漁業者は補償金11億円の受け取りを拒否してきました。
祝島 島内デモ千回超で団結!
月曜が定例
運動の象徴は毎週定例の「島内デモ」です。月曜夜、天候や事情が許す限り実施。これまで1080回以上を数えます。
「もともと自然発生的に始まった行動です。抗議の意思を確認して情報を共有する。高齢化が進み、最近は“お元気確認”の意味もあるんです」
こう説明するのは、「島民の会」代表運営委員の山戸貞夫さん(60)です。島民の75%が65歳以上ですが、島おこしの機運も高まっています。
海路の要所として古くから知られる祝島は、万葉集にも登場。海を渡る祭り「神舞(かんまい)」、路地裏を彩る石積みの練り塀も有名です。
無農薬栽培のビワ、名産のヒジキに加え、近年は島民が出す残飯だけで育てるブタの放牧も。さらに今年から、島の自立をめざす「自然エネルギー100%構想」が始まりました。太陽光発電、産業振興、原発反対運動への支援を有機的に結びつけた独創的な試みです。
山戸さんは「悲壮感はありません。原発頼みから脱却する道をみんなで探っています」と語ります。
生態系壊す
上関町全体の人口は最近30年間でほぼ半減し、現在約3600人。原発建設の是非が町民世論を二分しています。小柳昭さん(84)=元日本共産党町議=が言います。
「計画が発覚した29年前、原発反対は町議会で私一人でした。その後の各種選挙では、住民の4割が原発反対候補に投票しています。本音は反対、という人も少なくありません」
「島民の会」も参加する「原発に反対する上関町民の会」の人たちとともに、小柳さんは原発に頼らない町づくりを長年呼びかけてきました。共産党上関支部の田中照久さん(39)が強調します。
「原発誘致で人口が増えたという話は聞いたことがありません。原発財源でハコモノが増えても、人が住んでいなければ意味がない。原発に頼らない町づくりが大切です」
原発完成後は、海水温より7度も高い温排水が毎秒190トンも出ます。漁業は壊滅的な打撃を受け、生態系への影響も避けられません。自然海岸が75%(瀬戸内海平均は21%)も残り、“奇跡の海”と称される長島地区の自然破壊が心配です。
世界に5千羽しかいない希少鳥類カンムリウミスズメ、イルカの仲間スナメリ…。原発建設予定地の周辺には、絶滅が危ぶまれている希少動物が生息しています。「長島の自然を守る会」代表の高島美登里さんが訴えます。
「原発建設は、生物多様性の宝庫を台無しにします。いま中止させれば、まだ間に合います。全国にも、世界にも支援を呼びかけたい」
上関原子力発電所とは
上関町長島の西端、田ノ浦に中国電力が建設を計画している原子力発電所。出力137.3万キロワットの改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を2基設置する予定で、用地面積160万平方メートル中、14万平方メートルが海上埋め立て地です。
中国電力は2009年10月に埋め立て工事に着手し、同12月、1号機の設置許可申請を提出しました。
原発建設に対しては、日本生態学会、日本ベントス(底生生物)学会、日本鳥学会が合同で工事の一時中断などを要求。映画監督の山田洋次さん、作家の椎名誠さんら言論文化人、ジャーナリストが昨年(2010年)10月、連名で建設中止を求める「緊急声明」を発表しています。
日本共産党の市田忠義書記局長は2010年4月、参院環境委員会で上関原発について質問。生物多様性保全にとって「非常に貴重な場所だ」と述べ、「原発の建設計画をやめ、海洋保護区に指定すべきだ」と求めました。
民主党政権は、前自公政権以上に原発を増設する立場。しかし昨年来の上関原発反対全国署名は100万筆に達する勢いです。民主、自民両党の国会議員らが椙次いで現地を視察する動きも生まれています
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年3月6日付掲載
山口県は僕の生まれ故郷。法事などで親戚が集まった時には、上関原発のことが話題になります。
「放射能漏れが起こったら大変」と危機感を持っています。
僕は「それ以上に温排水で環境が変わることが問題」と訴えています。
原発の建設予定地の長島は本州の上関と橋でつながっています。しかし、祝島は一日3往復の定期船しかありません。
もしもの時には逃げる手段がないんです。
ぜひとも建設中止にさせないといけませんネ。