読み解き 新ガイドライン⑤ 日米の命令系統は? 米軍指揮下 逃げられず
新ガイドラインでは、平時から有事まで日米が「調整」を行う「同盟調整メカニズム」の設置が盛り込まれました。これは事実上の日米統合司令部と呼ぶべきもの。自衛隊が米軍の戦争に完全に組み込まれ、逃れられなくなる危険があります。
「調整」の名目で
軍は必ず司令部を持ち、傘下の部隊を指揮下に置きます。多国籍軍など、複数の軍が共同作戦を行う場合も、基本的に1人の司令官が全権を握ります。
日本はこれまで、イラク戦争や「対テロ」戦争に派兵してきました。しかし、米軍主導の多国籍軍の指揮下に入れば、自衛隊の活動が憲法上、できないとされる「他国の武力行使との一体化」につながることから、直接の指揮下には入らず、防衛省などを通じて多国籍軍との「調整」を行うという形を取ってきました。
「日本有事」で自衛隊を米軍の指揮下に組み込む「統合司令部」の設置も、表向きは否定してきました。国家主権にも関わる問題だからです。
ただ、イラク、「対テロ」戦争で米軍は一貫して、自衛隊を「連合軍」の一員とみなし、日米共同演習などでも事実上、米軍が主導しています。「調整」の名の下で、米軍の指揮下に置かれているに近い実態があります。
日米共同方面隊指揮所演習ヤマサクラ=2013年12月(米陸軍ウェブサイトから)
「平時」から機能
1997年の前指針で米軍と自衛隊の情報共有や協議を行う「調整メカニズム」の設置が盛り込まれました。これは戦争司令部とも呼べるものです。
ただ、同メカニズムは平素から設置するものの、機能するのは日本への武力攻撃や「周辺事態」が発生してからとなっています。
これに対して「同盟調整メカニズム」は平時から機能し、集団的自衛権の行使やイラク・アフガン型の戦争といった事態まで「切れ目のない形で…活用」されます。
その結果、どうなるか。例えば、新指針では、「戦地」での自衛隊派兵を可能にする「戦争立法」に基づき、自衛隊が戦闘地域で米軍への物資や弾薬などの補給を行うことが盛り込まれています。
「戦争立法」では、海外派兵で自衛隊の活動区域が「戦闘現場」になれば、活動を「休止」「退避」するとしています。しかし、「同盟調整メカニズム」に基づいて、自衛隊が米軍の前線での活動に不可欠な補給を担っていれば、勝手に戦場から逃げることなど不可能になるのは目に見えています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年5月8日付掲載
自衛隊が米軍の指揮下に入るって事は、憲法上からも認められないし、国家主権に関わる問題。でも、演習では事実上米軍指揮下で行われてきました。
新ガイドラインでは、「戦争立法」ですら踏み込んでいない事、実際の戦闘の場面でも米軍の指揮下に置かれることになります。
新ガイドラインでは、平時から有事まで日米が「調整」を行う「同盟調整メカニズム」の設置が盛り込まれました。これは事実上の日米統合司令部と呼ぶべきもの。自衛隊が米軍の戦争に完全に組み込まれ、逃れられなくなる危険があります。
「調整」の名目で
軍は必ず司令部を持ち、傘下の部隊を指揮下に置きます。多国籍軍など、複数の軍が共同作戦を行う場合も、基本的に1人の司令官が全権を握ります。
日本はこれまで、イラク戦争や「対テロ」戦争に派兵してきました。しかし、米軍主導の多国籍軍の指揮下に入れば、自衛隊の活動が憲法上、できないとされる「他国の武力行使との一体化」につながることから、直接の指揮下には入らず、防衛省などを通じて多国籍軍との「調整」を行うという形を取ってきました。
「日本有事」で自衛隊を米軍の指揮下に組み込む「統合司令部」の設置も、表向きは否定してきました。国家主権にも関わる問題だからです。
ただ、イラク、「対テロ」戦争で米軍は一貫して、自衛隊を「連合軍」の一員とみなし、日米共同演習などでも事実上、米軍が主導しています。「調整」の名の下で、米軍の指揮下に置かれているに近い実態があります。
日米共同方面隊指揮所演習ヤマサクラ=2013年12月(米陸軍ウェブサイトから)
「平時」から機能
1997年の前指針で米軍と自衛隊の情報共有や協議を行う「調整メカニズム」の設置が盛り込まれました。これは戦争司令部とも呼べるものです。
ただ、同メカニズムは平素から設置するものの、機能するのは日本への武力攻撃や「周辺事態」が発生してからとなっています。
これに対して「同盟調整メカニズム」は平時から機能し、集団的自衛権の行使やイラク・アフガン型の戦争といった事態まで「切れ目のない形で…活用」されます。
その結果、どうなるか。例えば、新指針では、「戦地」での自衛隊派兵を可能にする「戦争立法」に基づき、自衛隊が戦闘地域で米軍への物資や弾薬などの補給を行うことが盛り込まれています。
「戦争立法」では、海外派兵で自衛隊の活動区域が「戦闘現場」になれば、活動を「休止」「退避」するとしています。しかし、「同盟調整メカニズム」に基づいて、自衛隊が米軍の前線での活動に不可欠な補給を担っていれば、勝手に戦場から逃げることなど不可能になるのは目に見えています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年5月8日付掲載
自衛隊が米軍の指揮下に入るって事は、憲法上からも認められないし、国家主権に関わる問題。でも、演習では事実上米軍指揮下で行われてきました。
新ガイドラインでは、「戦争立法」ですら踏み込んでいない事、実際の戦闘の場面でも米軍の指揮下に置かれることになります。