超低金利と銀行経営② 過度な緩和と金融阻害
メガバンクなどが貸し出しを減らしている背景には、自己資本比率の問題があります。自己資本比率とは、銀行の財務の健全性に関する指標の一つで、自己資本(資本金や過去の利益の蓄積)の資産(貸出債権など)に対する比率のことです。国内業務だけの銀行は4%以上、国際業務を行うメガバンクなどは8%以上に、自己資本比率を維持することが求められます。
自己資本に制約
リーマン・ショック以降、国際的に銀行の健全性へのチェックが強まる中で、メガバンク3行は自己資本比率を高めてきました。ところが、2012年から自己資本比率に関する国際基準が変更され、これまでは自己資本に入れていたものの一部ができなくなった結果、3行とも比率を大幅に低下させました。今後、さらに基準が厳しくなる可能性もあり、メガバンクは、それに対応できるようにと、利益を積み上げ、自己資本比率を上昇させてきました。
ところが、超低金利で業務純益が低下すると、自己資本が思うように増えなくなります。このため、貸し出しを減らして分母の資産額を圧縮することで、自己資本比率を高めようとしているものと思われます。
日銀の黒田東彦総裁も、昨年11月に行った外国での講演で、「金利を下げすぎると、預貸金利ざやの縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害される」という可能性について言及してします。メガバンクの17年度決算には、それがすでに表れているといえます。日銀の行き過ぎた金融緩和が、逆に金融を阻害する事態になってきているのです。
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三菱UFJ銀行本館=東京都千代田区
自己資本比率別の地方銀行数
地銀財務に不安
一方、地方銀行はメガバンクと違って、その多くが貸し出しを増やしています。しかし、業務純益が伸びないなかで貸し出しを増やせば、自己資本比率の低下を招くおそれが強まります。実際、17年度の決算を見ると、地方銀行105行中79行が前年度より自己資本比率を低下させています。安倍政権発足前の12年度との比較では、自己資本比率を低下させた地方銀行は88行に達します。
自己資本比率の国内基準(4%以上)を適用している地方銀行(94行)についてみると、この5年間で、「10%超」の銀行は半分以下に減り、5年前には1行もなかった「7%以下」も4行に増えています。
超低金利が長期化するなかで、財務状況が悪化し、経営統合などを模索する動きも広がっています。店舗やATMの縮小・整理など、利用者へのサービス悪化も心配されます。また、投機的な不動産投資など、不健全な融資が広がるおそれもあります。「異次元緩和」が国民に大きな被害をもたらす危険が強まっていると言わざるを得ません。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年6月8日付掲載
「都市銀行が中小企業への貸し出しを渋っている」と言われることがありますが、自己資本比率を維持するために選別しているのですね。
そのためにも、いい加減に超低金利政策は改めないと。
メガバンクなどが貸し出しを減らしている背景には、自己資本比率の問題があります。自己資本比率とは、銀行の財務の健全性に関する指標の一つで、自己資本(資本金や過去の利益の蓄積)の資産(貸出債権など)に対する比率のことです。国内業務だけの銀行は4%以上、国際業務を行うメガバンクなどは8%以上に、自己資本比率を維持することが求められます。
自己資本に制約
リーマン・ショック以降、国際的に銀行の健全性へのチェックが強まる中で、メガバンク3行は自己資本比率を高めてきました。ところが、2012年から自己資本比率に関する国際基準が変更され、これまでは自己資本に入れていたものの一部ができなくなった結果、3行とも比率を大幅に低下させました。今後、さらに基準が厳しくなる可能性もあり、メガバンクは、それに対応できるようにと、利益を積み上げ、自己資本比率を上昇させてきました。
ところが、超低金利で業務純益が低下すると、自己資本が思うように増えなくなります。このため、貸し出しを減らして分母の資産額を圧縮することで、自己資本比率を高めようとしているものと思われます。
日銀の黒田東彦総裁も、昨年11月に行った外国での講演で、「金利を下げすぎると、預貸金利ざやの縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害される」という可能性について言及してします。メガバンクの17年度決算には、それがすでに表れているといえます。日銀の行き過ぎた金融緩和が、逆に金融を阻害する事態になってきているのです。
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三菱UFJ銀行本館=東京都千代田区
自己資本比率別の地方銀行数
自己資本比率 | 2012年度 | 17年度 |
10%超 | 67 | 31 |
8~10% | 25 | 53 |
7~8% | 2 | 6 |
7%以下 | 0 | 4 |
計 | 94 | 94 |
地銀財務に不安
一方、地方銀行はメガバンクと違って、その多くが貸し出しを増やしています。しかし、業務純益が伸びないなかで貸し出しを増やせば、自己資本比率の低下を招くおそれが強まります。実際、17年度の決算を見ると、地方銀行105行中79行が前年度より自己資本比率を低下させています。安倍政権発足前の12年度との比較では、自己資本比率を低下させた地方銀行は88行に達します。
自己資本比率の国内基準(4%以上)を適用している地方銀行(94行)についてみると、この5年間で、「10%超」の銀行は半分以下に減り、5年前には1行もなかった「7%以下」も4行に増えています。
超低金利が長期化するなかで、財務状況が悪化し、経営統合などを模索する動きも広がっています。店舗やATMの縮小・整理など、利用者へのサービス悪化も心配されます。また、投機的な不動産投資など、不健全な融資が広がるおそれもあります。「異次元緩和」が国民に大きな被害をもたらす危険が強まっていると言わざるを得ません。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年6月8日付掲載
「都市銀行が中小企業への貸し出しを渋っている」と言われることがありますが、自己資本比率を維持するために選別しているのですね。
そのためにも、いい加減に超低金利政策は改めないと。