けいざい四季報2018Ⅱ ④ 企業不正 もうけ優先で安全軽視
①相次ぐ製造大手企業の不正。5月以降も次々発覚
②背景にもうけ優先、品質・安全・法令軽視の企業体質
③問われる経営陣の責任。社長退任後も会長にとどまる
昨年10月にアルミ・銅製品などの品質データ改ざんが明らかになった神戸製鋼所。4月には「第三者委員会報告書格付け委員会」が、同社の調査報告書(3月公表)を検証し結果を発表しました。神鋼の報告書は外部調査委員会がまとめたものを同社がまとめ直したものです。格付け委は、神鋼の見解と調査委の調査結果の区別ができず「報告書全体の内容に対して信用する根拠が失われる」、「根本原因の究明が十分になされたとは言い難い」と批判しています。
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検査データ改ざん問題で謝罪するSUBARUの経営陣=4月27日、東京都渋谷区
【続く品質不正発覚】
海外でも問題に
6月5日には、東京地検特捜部と警視庁捜査2課が不正競争防止法違反(虚偽表示)の容疑で、神鋼の東京本社などを家宅捜索しました。米司法省が調査に乗り出すなど、問題は海外にも及んでいます。
もうけのために安全性や法令を軽視する企業体質は、一連の不正に共通する問題です。SUBARU(スバル)は4月、データ改ざん問題の調査報告書を国土交通省に提出。不正の原因として完成検査業務の公益性・重要性に対する自覚の乏しさなどを挙げました。
5月以降、製造大手企業による品質データ改ざんなど、不正の発覚が相次いでいます。
日本ガイシは、電線から電柱に電気が伝わるのを防ぐ絶縁部品など11製品に、顧客と契約した検査をしていませんでした。不正は1990年代から2018年3月末までの長期にわたり、出荷数は累計約1億個に上ります。電力、鉄道会社など国内約200社、海外約300社に出荷していました。
スバルでは、新車の完成検査で行っている燃費・排ガスの自主検査で新たな不正が判明。国が定めた基準を逸脱していてもやり直しをしないなど、計934件に上ります。
宇部興産は、2月に判明したポリエチレンなどの品質データねつ造問題以外に、22製品で不正がありました。新たに明らかになったのはナイロンなどの樹脂や石灰石製品です。不正品の納入先は合計で113社。不正品の売上高は、18年3月期連結決算ベースで計160億円に上ります。
本体での発覚も
昨年11月以降、子会社の品質不正が問題となっていた三菱マテリアル。5月に子会社で、6月に本体の工場で、相次いで不正が発覚しました。
本体で不正があったのは直島製錬所(香川県直島町)です。コンクリート材料の銅スラグ骨材を必要な検査を行わないままJIS(日本工業規格)認証の製品としていました。15年1月から18年5月までの間に、生コンクリート製造会社など5社に出荷していました。
三菱マテは3月、一連の品質不正問題をめぐる最終調査報告書と再発防止策を公表していました。この時点で本体での不正の疑いを把握していたにもかかわらず公表しませんでした。4月にJISの認証機関から問題製品の出荷を自粛するよう求められても明らかにしませんでした。
株主総会で批判
いずれも不正は長期にわたる大規模なもので、経営陣の責任は重大です。しかし、経営陣は役員報酬の返上で対応。三菱マテとスバルでは当時の社長が退任しましたが、会長にとどまっており批判が上がっています。不正があった企業の株主総会では、株主から経営陣の責任を問う声が相次いで出されました。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年6月29日付掲載
検査をしてなかったり、検査結果を改ざんしていても、結果として製品は問題なく使えてるんだろって甘い考えがあるんですね。
技術立国が泣いてしまいます。
①相次ぐ製造大手企業の不正。5月以降も次々発覚
②背景にもうけ優先、品質・安全・法令軽視の企業体質
③問われる経営陣の責任。社長退任後も会長にとどまる
昨年10月にアルミ・銅製品などの品質データ改ざんが明らかになった神戸製鋼所。4月には「第三者委員会報告書格付け委員会」が、同社の調査報告書(3月公表)を検証し結果を発表しました。神鋼の報告書は外部調査委員会がまとめたものを同社がまとめ直したものです。格付け委は、神鋼の見解と調査委の調査結果の区別ができず「報告書全体の内容に対して信用する根拠が失われる」、「根本原因の究明が十分になされたとは言い難い」と批判しています。
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検査データ改ざん問題で謝罪するSUBARUの経営陣=4月27日、東京都渋谷区
【続く品質不正発覚】
三菱マテリアル | 新たに子会社で不正。具体的な数や企業名、対象製品などは非公表 | 本体工場でコンクリート材料を検査しないままJIS製品として出荷 |
日本ガイシ | 絶縁部品などで顧客と契約した検査せず。国内約200社、海外約300社に累計約1億個出荷 |
スバル | 完成車検査の燃費・排ガス検査で新たに発覚。国の基準逸脱もやり直しせず |
宇部興産 | 同社やグループ企業が製造した樹脂や石灰石製品などで品質データねつ造 |
海外でも問題に
6月5日には、東京地検特捜部と警視庁捜査2課が不正競争防止法違反(虚偽表示)の容疑で、神鋼の東京本社などを家宅捜索しました。米司法省が調査に乗り出すなど、問題は海外にも及んでいます。
もうけのために安全性や法令を軽視する企業体質は、一連の不正に共通する問題です。SUBARU(スバル)は4月、データ改ざん問題の調査報告書を国土交通省に提出。不正の原因として完成検査業務の公益性・重要性に対する自覚の乏しさなどを挙げました。
5月以降、製造大手企業による品質データ改ざんなど、不正の発覚が相次いでいます。
日本ガイシは、電線から電柱に電気が伝わるのを防ぐ絶縁部品など11製品に、顧客と契約した検査をしていませんでした。不正は1990年代から2018年3月末までの長期にわたり、出荷数は累計約1億個に上ります。電力、鉄道会社など国内約200社、海外約300社に出荷していました。
スバルでは、新車の完成検査で行っている燃費・排ガスの自主検査で新たな不正が判明。国が定めた基準を逸脱していてもやり直しをしないなど、計934件に上ります。
宇部興産は、2月に判明したポリエチレンなどの品質データねつ造問題以外に、22製品で不正がありました。新たに明らかになったのはナイロンなどの樹脂や石灰石製品です。不正品の納入先は合計で113社。不正品の売上高は、18年3月期連結決算ベースで計160億円に上ります。
本体での発覚も
昨年11月以降、子会社の品質不正が問題となっていた三菱マテリアル。5月に子会社で、6月に本体の工場で、相次いで不正が発覚しました。
本体で不正があったのは直島製錬所(香川県直島町)です。コンクリート材料の銅スラグ骨材を必要な検査を行わないままJIS(日本工業規格)認証の製品としていました。15年1月から18年5月までの間に、生コンクリート製造会社など5社に出荷していました。
三菱マテは3月、一連の品質不正問題をめぐる最終調査報告書と再発防止策を公表していました。この時点で本体での不正の疑いを把握していたにもかかわらず公表しませんでした。4月にJISの認証機関から問題製品の出荷を自粛するよう求められても明らかにしませんでした。
株主総会で批判
いずれも不正は長期にわたる大規模なもので、経営陣の責任は重大です。しかし、経営陣は役員報酬の返上で対応。三菱マテとスバルでは当時の社長が退任しましたが、会長にとどまっており批判が上がっています。不正があった企業の株主総会では、株主から経営陣の責任を問う声が相次いで出されました。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年6月29日付掲載
検査をしてなかったり、検査結果を改ざんしていても、結果として製品は問題なく使えてるんだろって甘い考えがあるんですね。
技術立国が泣いてしまいます。