消費税導入31年 ゆがむ公平性 金持ち減税の穴埋めに
1989年に消費税が導入されて以降、税制の公平性は大きくゆがめられてきました。
この間の消費税、法人税、所得税の動きを見てみましょう。
消費税は税率3%でスタートし、97年度に5%、安倍政権のもとで2014年度に8%、今年10月に10%に引き上げられました。
消費税増税の一方で、大企業・富裕層向けの減税が繰り返されてきました。国の法人税の税率は消費税導入前は42%でしたが、消費税導入を機に何度も税率が引き下げられ、現在では23・2%になっています。所得税の最高税率も60%から45%まで下げられました。
その結果、消費税の税収は90年度の4・6兆円から、19年度(予算)には19・9兆円と、4倍以上に増加しました。
他方で、法人税収は90年度の18・4兆円から、19年度は12・9兆円に3割も減りました。同じく26兆円あった所得税収は19・9兆円に2割以上も減少しました。
消費税増税による経済悪化も法人税と所得税の税収を減らす一因になりました。大企業と富裕層は減税の恩恵を受けましたが、庶民と中小企業には増税と不況の地獄だけしかありませんでした。
この31年間で消費税収は累計397兆円に上ります。しかし、法人3税(法人税、法人住民税、法人事業税)の減収額は累計で298兆円、所得税・住民税の減収額も累計で275兆円に達しました。消費税が増えた分は法人税・所得税などの減収分に消えてしまったのです。これでは社会保障も財政も良くなるはずがありません。
税金の負担が公平であるかどうかについて、近代国家では、“税額や税率が同じ”などという形式的な公平ではなく、実質的な公平、つまり負担能力に応じた負担(応能負担原則)が求められます。税金はもうかっている支払い能力のある人ほど、たくさん払ってもらうということです。
主な大企業の実際の法人税負担率
法人3税は法人税、法人住民税、法人事業税。
2019年3月期の個別決算から菅税理士が試算。
税の公平という点から考えると、消費税導入後の税制は、所得が低い人ほど所得に対する負担率が高い逆進的な消費税が増税され、大企業・富裕層は減税されることによって大きくゆがめられてきました。
逆に言えば、このゆがみを正せば、消費税を減税しても、暮らしと社会保障の財源は生み出せるということです。
19年3月期決算で主要な大企業の実際の税負担率を計算すると、法人3税を合わせた法定税率は30%程度なのに、NTTは5・8%、トヨタ19・1%など、法定税率より大幅に低くなっています。(表)
その原因は、試験研究費の一部を税額から控除する研究開発減税や、子会社などからの配当を利益から除く受取配当益金不算入など、もっぱら大企業だけが利用できる優遇税制があるからです。
この優遇税制を正し、法人税、所得税の税率をもとに戻すべきです。さらに私は、法人税も、所得税と同じように利益が増えれば税率も上がる累進税率にすべきだと考えます。
菅隆徳(すが・たかのり 税理士)
「しんぶん赤旗」日曜版 2019年11月10日付掲載
消費税が導入されて31年間。企業の支払う法人税は減り、所得税も減っている。その穴埋めをしたのが消費税。
消費税は、多く消費する高額所得者も、少ししか消費しない少額所得者も均等に負担するので平等と思われがちだが、それは大間違い。
確かに、高額所得者は多く消費するので多い消費税を支払っている。しかし、所得に対する消費の割合を見ると、高額所得者は多くを貯蓄や投資に回していて消費は一部。少額所得者は所得のほとんどを消費に回している。
よって、少額所得者の方が消費税の負担の比率が圧倒的に重い。
1989年に消費税が導入されて以降、税制の公平性は大きくゆがめられてきました。
この間の消費税、法人税、所得税の動きを見てみましょう。
消費税は税率3%でスタートし、97年度に5%、安倍政権のもとで2014年度に8%、今年10月に10%に引き上げられました。
消費税増税の一方で、大企業・富裕層向けの減税が繰り返されてきました。国の法人税の税率は消費税導入前は42%でしたが、消費税導入を機に何度も税率が引き下げられ、現在では23・2%になっています。所得税の最高税率も60%から45%まで下げられました。
その結果、消費税の税収は90年度の4・6兆円から、19年度(予算)には19・9兆円と、4倍以上に増加しました。
他方で、法人税収は90年度の18・4兆円から、19年度は12・9兆円に3割も減りました。同じく26兆円あった所得税収は19・9兆円に2割以上も減少しました。
消費税増税による経済悪化も法人税と所得税の税収を減らす一因になりました。大企業と富裕層は減税の恩恵を受けましたが、庶民と中小企業には増税と不況の地獄だけしかありませんでした。
この31年間で消費税収は累計397兆円に上ります。しかし、法人3税(法人税、法人住民税、法人事業税)の減収額は累計で298兆円、所得税・住民税の減収額も累計で275兆円に達しました。消費税が増えた分は法人税・所得税などの減収分に消えてしまったのです。これでは社会保障も財政も良くなるはずがありません。
税金の負担が公平であるかどうかについて、近代国家では、“税額や税率が同じ”などという形式的な公平ではなく、実質的な公平、つまり負担能力に応じた負担(応能負担原則)が求められます。税金はもうかっている支払い能力のある人ほど、たくさん払ってもらうということです。
主な大企業の実際の法人税負担率
企業名 | 税引き前純利益 | 法人3税 | 負担率 |
トヨタ | 2兆3231億円 | 4440億円 | 19% |
NTT | 1兆1996億円 | 699億円 | 5.8% |
ホンダ | 4860億円 | 518億円 | 10.7% |
三菱商事 | 3862億円 | 168億円 | 4.4% |
住友商事 | 2643億円 | 6億円 | 0.2% |
キヤノン | 2457億円 | 317億円 | 12.9% |
ブリヂストン | 2135億円 | 357億円 | 16.7% |
パナソニツク | 1923億円 | 307億円 | 16.0% |
2019年3月期の個別決算から菅税理士が試算。
税の公平という点から考えると、消費税導入後の税制は、所得が低い人ほど所得に対する負担率が高い逆進的な消費税が増税され、大企業・富裕層は減税されることによって大きくゆがめられてきました。
逆に言えば、このゆがみを正せば、消費税を減税しても、暮らしと社会保障の財源は生み出せるということです。
19年3月期決算で主要な大企業の実際の税負担率を計算すると、法人3税を合わせた法定税率は30%程度なのに、NTTは5・8%、トヨタ19・1%など、法定税率より大幅に低くなっています。(表)
その原因は、試験研究費の一部を税額から控除する研究開発減税や、子会社などからの配当を利益から除く受取配当益金不算入など、もっぱら大企業だけが利用できる優遇税制があるからです。
この優遇税制を正し、法人税、所得税の税率をもとに戻すべきです。さらに私は、法人税も、所得税と同じように利益が増えれば税率も上がる累進税率にすべきだと考えます。
菅隆徳(すが・たかのり 税理士)
「しんぶん赤旗」日曜版 2019年11月10日付掲載
消費税が導入されて31年間。企業の支払う法人税は減り、所得税も減っている。その穴埋めをしたのが消費税。
消費税は、多く消費する高額所得者も、少ししか消費しない少額所得者も均等に負担するので平等と思われがちだが、それは大間違い。
確かに、高額所得者は多く消費するので多い消費税を支払っている。しかし、所得に対する消費の割合を見ると、高額所得者は多くを貯蓄や投資に回していて消費は一部。少額所得者は所得のほとんどを消費に回している。
よって、少額所得者の方が消費税の負担の比率が圧倒的に重い。