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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語④ “煙”から太古の“時”

2023-05-04 07:24:39 | 科学だいすき
竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語④ “煙”から太古の“時”

探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った着陸カプセルには砂や石のほか、小惑星由来のガスが含まれていることが確認されました。
地球圏外から気体状の物質を回収したのは世界初。玉手箱の“煙”から、太陽系ができる前の時代までさかのぼる“時”が見えてきました。
ガスは、2020年12月、カプセルが着陸した30時間後に採取されました。
分析の結果、希ガスの一つで、地球大気とは異なる同位体組成を持つヘリウムを検出。太陽から噴き出す粒子「太陽風」起源であることが分かりました。
分析チームは、太陽風起源のヘリウムは、リュウグウ粒子のごく表面(1000分の1ミリメートル)に多く含まれており、粒子表面が剥がれた際に、粒子から遊離したものである可能性が高いと結論づけました。



着陸カプセルから取り出した試料が入ったコンテナ(©JAXA、東京大学、九州大学、JAMSTEC)

シールが大活躍
揮発性が高い希ガスを逃がさずに地球に持ち帰ることに成功した裏には、試料が入ったカプセルを封じた特殊なシールの活躍がありました。
特殊なシールとは、密閉性が高い金属製のシール。開発に約10年かかったと、チームリーダーの岡崎隆司九州大学准教授は説明します。ベストな形状にたどり着くまで模擬品を作っては試しての繰り返しだったといいます。
「缶詰と同じで一度封をしたら二度と使えない一発ものなので、300回~400回試しながら形状を考えた。カプセル内のガスを採取した時は、一緒に開発してきた仲間と抱き合って喜んだ。泥臭いことをしてきたことが実った瞬間だった」

希ガスヒントに
チームはリュウグウ粒子中に含まれる気体成分の検出にも成功しました。
希ガスは、化学的に安定しており、他の物質とほとんど反応しません。岡崎さんは「希ガスを測ることで、リュウグウの材料物質の起源や、これまでの温度環境、太陽風の影響、宇宙空間にどのくらいさらされていたかなど重要な情報につながります」と説明します。
チームは、リュウグウ粒子を徐々に加熱しながら、粒子の中に閉じ込められていた希ガスなどの気体を抽出。同位体の分析から、太陽風や、宇宙空間を飛び交う高エネルギー粒子「宇宙線」を浴びて生成された希ガスが含まれていたことがわかりました。他にも太陽系形成時に取り込んだ希ガスや、太陽系誕生以前の希ガスも含まれていました。
また希ガスの量からリュウグウは約500万年間、宇宙線を浴びたことが判明。表層から地下1~2メートルの領域は、隕石(いんせき)衝突などで頻繁にかき混ざることはなかったと推定され、リュウグウは約500万年前に小惑星軌道から隕石衝突が少ない近地球軌道に移動してきたことが考えられました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月2日付掲載


揮発性が高い希ガスを逃がさずに地球に持ち帰ることに成功した裏には、試料が入ったカプセルを封じた特殊なシールの活躍が。
開発に10年かかたっと。缶詰と同じで一度封をしたら二度と使えない一発ものなので、300回~400回試しながら形状を考えた。
地道な努力が、小天体から石だけじゃなくって、気体まで持って帰ってくる画期につながったのですね。