きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語⑤ 太陽系材料の物質も

2023-05-05 07:10:17 | 科学だいすき
竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語⑤ 太陽系材料の物質も

人類が手にした最も始原的な試料である小惑星リュウグウの粒子。その砂や石から、液体の水や多種多様な有機物などが発見されました。各分野の専門チームの分析結果から、太陽系誕生から間もない時の記録や、太陽系形成以前の未知の物質が含まれていることが垣間見えてきました。

磁場の痕跡残る
粒子の化学的特徴や物性などを分析した東北大学の中村智樹教授は、リュウグウ粒子から、樹木の年輪のような同心円状のしま模様を持つ球状の磁鉄鉱の結晶を見つけました。
しま模様は、リュウグウの元となった天体(母天体)内で、水と鉱物の反応が起こった時の磁場環境を反映していると、中村さんは説明します。
母天体が太陽光の届かないガスやちりから成るガス星雲の中で生まれた可能性を示すもので、ガス星雲内で生じた磁場の情報が結晶に刻まれたのではないかと考えています。
「過去の磁場を記録した天然のハードディスクといえる。母天体の中で化学反応が進んでいた頃、周辺にはまだ原始惑星系円盤があったと推測できる」
有機物を分析したチームの結果でも一部の有機物は、ガス星雲や原始惑星系円盤の外側といったマイナス200度以下の低温環境で形成されたことが分かっています。
有機物の分析チームを率いた奈良岡浩九州大学教授は、ガス星雲にある低分子の有機物や氷がリュウグウ母天体に集まり、氷が解けた水と反応した結果、2万種もの有機分子が形成されたと考えています。



左は磁鉄鉱の結晶の電子顕微鏡画像。
右のBとCは磁場環境の反映を示す解析画像で、粒子内部の同心円状のしま模様は磁力線が矢印の方向に巻いていることを示しています(©JFCC、北海道大学、日立、東北大学)

詳細は「分析中」
中村さんは、太陽系ができる前の時代に形成された小さな固体粒子状の物質「プレソーラー粒子」も見つけています。
「リュウグウの大部分は、水と強く反応しているが、わずかながら反応していない所がある。それは太陽系ができる前の物質であることを意味する。見つけた時は興奮した」
中村さんによると、見つけた物質は、大きさは1マイクロメートル(1000分の1ミリメートル)以下で含水鉱物がみられない小さな粒子の集合物だといいます。
「リュウグウが誕生した時は、太陽系の大本となった宇宙の物質がたくさんあったはず。水との反応で物質がだんだん変化していったと考えられる」と中村さん。「元素組成など詳細はよく分かっておらず分析中だ」と意気込みます。
気体の分析チームの結果によると、粒子中に太陽系誕生以前の希ガスが含まれていることが分かっています。
チームリーダーの岡崎隆司九州大学准教授は「リュウグウには、他の天体からやってきたちりなど、太陽系の材料物質が多く存在する」と指摘。その成分と希ガスの情報から新しい太陽系進化の絵が描けるかもしれないと期待を込めます。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月4日付掲載


過去の磁場を記録した天然のハードディスクといえる。母天体の中で化学反応が進んでいた頃、周辺にはまだ原始惑星系円盤があったと推測できる。
太陽系が形成される以前、他の天体からもたらされたものもあるとか。そんな恵みの痕跡をだどる分析は始まったばかり。
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