半導体バブル 揺れる北海道② 地下水量低下の恐れ
北海道千歳(ちとせ)市に進出する先端半導体企業「ラピダス」の工場や関連企業では、大量の水が使われる見込みです。他の企業の利用制限の恐れや地下水量の低下の問題が浮上しています。
半導体の製造では、不純物の精密洗浄に大量の水が欠かせず、半導体の微細化・高集積化に伴って高い水質が求められます。
太平洋側に面した道央・勇払(ゆうふつ)平野を安平(あびら)川がゆうぜんと流れています。道は、この川をラピダス工場への供給水源とする方針です。取水と送水は、苫小牧(とまこまい)地区工業用水道第2施設が行います。同施設は全体の給水能力が10万立方メートルで、そのうち新規に契約が可能な水量は約5万立方メートルとなっています。
道によると、ラピダスは25年の試作段階で1日あたり約4000立方メートル、27年の量産段階で同じく2万4000立方メートルを使うとしています。ラピダスが使うのは工業用水ですが、量産段階の使用量は千歳市の1日あたりの最大水道使用量の6割強に相当します。ラピダスとの契約により、今後に契約を行う企業の利用が制限される恐れがあります。
ラピダス工場に水を供給予定の安平(あびら)川の取水口=10月12日、北海道苫小牧(とまこまい)市
国民が負担
苫小牧地区工業用水道第2施設は現在、苫小牧市の工業団地や企業に水を供給しており、条例で管轄区域にない千歳市に送水していません。ラピダスに送水するには条例改正とあわせ、22キロメートルにおよぶ送水管延長の工事が必要です。また、同施設よりも標高が高いラピダス工場に送水するため、新たに中継ポンプ場の建設が想定されています。
これら事業費用は約200億円。条例は事業者(ラピダス)の全額負担を定めています。
岸田文雄政権は総合経済対策で、半導体工場建設向けの工業用水整備のための交付金の設置を盛り込みました。国民が事業費を負担する恐れがあります。
また、送水管の敷設方法やルートは確定していません。ラピダス工場と苫小牧地区工業用水道第2施設の中間には、「ラムサール条約」に登録されたウトナイ湖の水源の美々(びび)川水系が流れます。送水管を地下に敷設した場合、美々川の地下水の水量低下や水質悪化をおよぼす危険があります。
北海道の調査によると、美々川水系の地下水量は1995年から2006年までに4割減少しました。原因は「土地利用の変更」などとしています。千歳市の工業団地の誘致が影響しています。
すでに千歳市は30社に工業団地の土地を紹介し、約40社が商談待ちの状態です。
道の担当者は、ラピダスが地下水を使用する予定はないとしました。しかし他の企業の使用については「分からない」と回答。さらなる地下水量の低下が危険視されます。
保護の責任
日本野鳥の会苫小牧支部の鷲田(わしだ)善幸支部長は、個人の意見とした上で「工事による地下水量の減少は避けられない。ウトナイ湖を保護する責任が問われる」と強調します。
千歳市はラピダスとの環境保全の協定の締結に向けて内容を協議するとしていますが、地下水の保全が含まれるかは定かではありません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年11月17日付掲載
北海道千歳(ちとせ)市に進出する先端半導体企業「ラピダス」の工場や関連企業では、大量の水が使われる見込み。半導体の製造では、不純物の精密洗浄に大量の水が欠かせず、半導体の微細化・高集積化に伴って高い水質が求められます。
ラピダスが使うのは工業用水ですが、量産段階の使用量は千歳市の1日あたりの最大水道使用量の6割強に相当。
苫小牧から工業用水を調達するなら、新たに22キロの送水管の建設が必要。事業費用は約220億円。本来ならラピダスが負担すべきですが、岸田政権は交付金でまかなうと。結局、国民の税金じゃないの。
北海道千歳(ちとせ)市に進出する先端半導体企業「ラピダス」の工場や関連企業では、大量の水が使われる見込みです。他の企業の利用制限の恐れや地下水量の低下の問題が浮上しています。
半導体の製造では、不純物の精密洗浄に大量の水が欠かせず、半導体の微細化・高集積化に伴って高い水質が求められます。
太平洋側に面した道央・勇払(ゆうふつ)平野を安平(あびら)川がゆうぜんと流れています。道は、この川をラピダス工場への供給水源とする方針です。取水と送水は、苫小牧(とまこまい)地区工業用水道第2施設が行います。同施設は全体の給水能力が10万立方メートルで、そのうち新規に契約が可能な水量は約5万立方メートルとなっています。
道によると、ラピダスは25年の試作段階で1日あたり約4000立方メートル、27年の量産段階で同じく2万4000立方メートルを使うとしています。ラピダスが使うのは工業用水ですが、量産段階の使用量は千歳市の1日あたりの最大水道使用量の6割強に相当します。ラピダスとの契約により、今後に契約を行う企業の利用が制限される恐れがあります。
ラピダス工場に水を供給予定の安平(あびら)川の取水口=10月12日、北海道苫小牧(とまこまい)市
国民が負担
苫小牧地区工業用水道第2施設は現在、苫小牧市の工業団地や企業に水を供給しており、条例で管轄区域にない千歳市に送水していません。ラピダスに送水するには条例改正とあわせ、22キロメートルにおよぶ送水管延長の工事が必要です。また、同施設よりも標高が高いラピダス工場に送水するため、新たに中継ポンプ場の建設が想定されています。
これら事業費用は約200億円。条例は事業者(ラピダス)の全額負担を定めています。
岸田文雄政権は総合経済対策で、半導体工場建設向けの工業用水整備のための交付金の設置を盛り込みました。国民が事業費を負担する恐れがあります。
また、送水管の敷設方法やルートは確定していません。ラピダス工場と苫小牧地区工業用水道第2施設の中間には、「ラムサール条約」に登録されたウトナイ湖の水源の美々(びび)川水系が流れます。送水管を地下に敷設した場合、美々川の地下水の水量低下や水質悪化をおよぼす危険があります。
北海道の調査によると、美々川水系の地下水量は1995年から2006年までに4割減少しました。原因は「土地利用の変更」などとしています。千歳市の工業団地の誘致が影響しています。
すでに千歳市は30社に工業団地の土地を紹介し、約40社が商談待ちの状態です。
道の担当者は、ラピダスが地下水を使用する予定はないとしました。しかし他の企業の使用については「分からない」と回答。さらなる地下水量の低下が危険視されます。
保護の責任
日本野鳥の会苫小牧支部の鷲田(わしだ)善幸支部長は、個人の意見とした上で「工事による地下水量の減少は避けられない。ウトナイ湖を保護する責任が問われる」と強調します。
千歳市はラピダスとの環境保全の協定の締結に向けて内容を協議するとしていますが、地下水の保全が含まれるかは定かではありません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年11月17日付掲載
北海道千歳(ちとせ)市に進出する先端半導体企業「ラピダス」の工場や関連企業では、大量の水が使われる見込み。半導体の製造では、不純物の精密洗浄に大量の水が欠かせず、半導体の微細化・高集積化に伴って高い水質が求められます。
ラピダスが使うのは工業用水ですが、量産段階の使用量は千歳市の1日あたりの最大水道使用量の6割強に相当。
苫小牧から工業用水を調達するなら、新たに22キロの送水管の建設が必要。事業費用は約220億円。本来ならラピダスが負担すべきですが、岸田政権は交付金でまかなうと。結局、国民の税金じゃないの。