けいざい四季報2024Ⅲ (中) 国内経済 政府と生活実態のズレ鮮明
【ポイント】
①実質賃金が前年同月比増に転換するも、ボーナスなど一時的な収入が要因
②食料品を中心に値上げラッシュが継続。
上半期の物価高倒産は過去最多に
③大企業の内部留保が過去最大を更新。政府は国民生活より大企業支援重視
政府は9月の月例経済報告で国内の景気判断を「緩やかに回復している」としました。しかし、タクシー運転手や小売店主などに街角の景気実感を聞いた景気ウオッチャー調査は9月、家計動向の指数を中心に低下し、4カ月ぶりに悪化しました。政府の認識と生活実態のズレが鮮明です。
店頭で品定めする買い物客=東京都内
上昇も一時的
7月の実質賃金は2カ月連続で前年を上回りました。実質賃金の上昇を受け武見敬三厚生労働相(当時)は記者会見で「賃上げの明るい動きが着実に現れてきている」と胸を張りました。しかし、実質賃金の内訳をみると、現金給与総額で0・3%の上昇となりましたが、基本給や残業代など、「きまって支給する給与」に限ると、1%の減少です。ボーナスなど一時的な収入が実質賃金を押し上げているのです。8月には「ボーナス効果」が剥落し、3カ月ぶりにマイナス圏入りしました。
そのため、所得の先行きが見通せず、8月の家計調査で実質消費支出(季節調整値)は前年同月比1・9%の減少でした。また、4~6月期の国内総生産(GDP)でも家計最終消費支出(除く持ち家の帰属家賃)は前年同期を0・42%下回り、減少は4期連続となりました。
食品の値上げ家計消費が低迷する背景に定期収入の伸び悩みに加えて、物価高騰があります。8月の全国消費者物価指数は前年同月比2・8%の上昇でした。物価上昇は食料品で目立ち3・6%増でした。とりわけ日々の食卓に欠かせない米類は28・3%の大幅上昇で、1975年9月以来48年11カ月ぶりの上昇幅を記録しました。先行指標とされる9月の都区部消費者物価も2・0%の上昇となっており、物価高騰が引き続く見通しです。
帝国データバンクのまとめでは、主要食品メーカー195社における10月の食品値上げは2911品目にのぼり、4月を上回る年内最大の値上げラッシュとなっています。同社によると4~9月期の物価高倒産は過去最多でした。
国内経済の主な出来事(7~9月)
企業利益最大
国民生活が困窮する一方で、大企業は大もうけを続けています。2023年度の法人企業統計によると、資本金10億円以上の大企業(金融業と保険業を含む全産業)の内部留保は、539・3兆円と過去最大を更新しました。経常利益は76・3兆円、配当金は32・5兆円とそれぞれ過去最大を更新しています。
しかも政府はGX(グリーントランスフォーメーション=脱炭素)や経済安保などを口実に大企業に多額の補助金を注ぎ込んでいます。経済産業省は電気自動車向け蓄電池生産に最大3479億円の補助をすると発表。対象はトヨタや日産、スバル、マツダの大手自動車会社および関連メーカーです。
大企業を優遇する政治のもとで企業不祥事が目立ちます。7月31日にはトヨタ自動車が新車の型式認証の不正で国土交通省から是正命令を受けています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年10月10日付掲載
政府は9月の月例経済報告で国内の景気判断を「緩やかに回復している」と。しかし、タクシー運転手や小売店主などに街角の景気実感を聞いた景気ウオッチャー調査は9月、家計動向の指数を中心に低下し、4カ月ぶりに悪化。政府の認識と生活実態のズレが鮮明。
食品の値上げ家計消費が低迷する背景に定期収入の伸び悩みに加えて、物価高騰が。8月の全国消費者物価指数は前年同月比2・8%の上昇。物価上昇は食料品で目立ち3・6%増。とりわけ日々の食卓に欠かせない米類は28・3%の大幅上昇で、1975年9月以来48年11カ月ぶりの上昇幅を記録。
【ポイント】
①実質賃金が前年同月比増に転換するも、ボーナスなど一時的な収入が要因
②食料品を中心に値上げラッシュが継続。
上半期の物価高倒産は過去最多に
③大企業の内部留保が過去最大を更新。政府は国民生活より大企業支援重視
政府は9月の月例経済報告で国内の景気判断を「緩やかに回復している」としました。しかし、タクシー運転手や小売店主などに街角の景気実感を聞いた景気ウオッチャー調査は9月、家計動向の指数を中心に低下し、4カ月ぶりに悪化しました。政府の認識と生活実態のズレが鮮明です。
店頭で品定めする買い物客=東京都内
上昇も一時的
7月の実質賃金は2カ月連続で前年を上回りました。実質賃金の上昇を受け武見敬三厚生労働相(当時)は記者会見で「賃上げの明るい動きが着実に現れてきている」と胸を張りました。しかし、実質賃金の内訳をみると、現金給与総額で0・3%の上昇となりましたが、基本給や残業代など、「きまって支給する給与」に限ると、1%の減少です。ボーナスなど一時的な収入が実質賃金を押し上げているのです。8月には「ボーナス効果」が剥落し、3カ月ぶりにマイナス圏入りしました。
そのため、所得の先行きが見通せず、8月の家計調査で実質消費支出(季節調整値)は前年同月比1・9%の減少でした。また、4~6月期の国内総生産(GDP)でも家計最終消費支出(除く持ち家の帰属家賃)は前年同期を0・42%下回り、減少は4期連続となりました。
食品の値上げ家計消費が低迷する背景に定期収入の伸び悩みに加えて、物価高騰があります。8月の全国消費者物価指数は前年同月比2・8%の上昇でした。物価上昇は食料品で目立ち3・6%増でした。とりわけ日々の食卓に欠かせない米類は28・3%の大幅上昇で、1975年9月以来48年11カ月ぶりの上昇幅を記録しました。先行指標とされる9月の都区部消費者物価も2・0%の上昇となっており、物価高騰が引き続く見通しです。
帝国データバンクのまとめでは、主要食品メーカー195社における10月の食品値上げは2911品目にのぼり、4月を上回る年内最大の値上げラッシュとなっています。同社によると4~9月期の物価高倒産は過去最多でした。
国内経済の主な出来事(7~9月)
7/2 | 23年度の個人株主過去最多に |
7/5 | 公取委がトヨタ子会社に下請法違反で勧告 |
7/11 | 日経平均が史上最高値4万2224円 |
7/25 | 百貨店の上半期免税売上高が過去最大3344億円を記録 |
7/31 | 国土交通省がトヨタに型式認証不正で是正命令 |
7/31 | 日銀が追加利上げを決定 |
8/5 | 日経平均株価暴落、4451円安 |
8/8 | 上半期経常黒字過去2番目の高水準 |
8/30 | 7月の完全失業率悪化2.7% |
9/2 | 大企業内部留保が539兆円に |
9/6 | 経産省が蓄電池生産に3479億円の補助金を発表 |
9/9 | 4~6月期GDP改定値が下方修正で年2.9%増に |
9/11 | 日経平均株価が7営業日続落 |
9/18 | 8月の貿易赤字、6953億円に |
9/26 | 7月実質賃金確報値で0.3%増 |
9/27 | 9月の都区部物価、2.0%上昇 |
企業利益最大
国民生活が困窮する一方で、大企業は大もうけを続けています。2023年度の法人企業統計によると、資本金10億円以上の大企業(金融業と保険業を含む全産業)の内部留保は、539・3兆円と過去最大を更新しました。経常利益は76・3兆円、配当金は32・5兆円とそれぞれ過去最大を更新しています。
しかも政府はGX(グリーントランスフォーメーション=脱炭素)や経済安保などを口実に大企業に多額の補助金を注ぎ込んでいます。経済産業省は電気自動車向け蓄電池生産に最大3479億円の補助をすると発表。対象はトヨタや日産、スバル、マツダの大手自動車会社および関連メーカーです。
大企業を優遇する政治のもとで企業不祥事が目立ちます。7月31日にはトヨタ自動車が新車の型式認証の不正で国土交通省から是正命令を受けています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年10月10日付掲載
政府は9月の月例経済報告で国内の景気判断を「緩やかに回復している」と。しかし、タクシー運転手や小売店主などに街角の景気実感を聞いた景気ウオッチャー調査は9月、家計動向の指数を中心に低下し、4カ月ぶりに悪化。政府の認識と生活実態のズレが鮮明。
食品の値上げ家計消費が低迷する背景に定期収入の伸び悩みに加えて、物価高騰が。8月の全国消費者物価指数は前年同月比2・8%の上昇。物価上昇は食料品で目立ち3・6%増。とりわけ日々の食卓に欠かせない米類は28・3%の大幅上昇で、1975年9月以来48年11カ月ぶりの上昇幅を記録。