気候危機打開へ 北欧フィンランド先進都市を訪ねて③ 進む脱石炭エネルギー
12月のトゥルク市内の気温は0度を下回ります。ただ、建物に入れば暖房がきいて暖かく、セーターなしでも過ごせます。市の目指す循環型社会の実現に向け、各家庭に提供されるエネルギーの中では、脱石炭の動きが進んでいます。トゥルク市から西に約15キロのナーンタリ市にあるマルチ燃料コージェネレーション発電所を訪れました。
電動バスに揺られて約50分。港沿いの発電所に到着しました。敷地内には木材チップが積まれ、木の香りが漂ってきます。この発電所は2017年、既存の石炭火力発電所の一部を置き換える形で建設されました。燃料は主に間伐材や切り株、樹皮といったバイオマスを使用し、電気と熱を生産します。ボイラーで温められた水が地下のトンネルを通してトゥルク市を含む4自治体へ送られ、地域暖房として利用されます。
マイヤ・ヘネル氏=2021年12月14日、ナーンタリ市内
バイオマス75%
現在、バイオマスの発電量の割合は75%に達しています。フィンランドの基幹産業は持続可能な森林管理を基にした林業のため、廃材入手の際に新たに木を切る必要がないと言います。
「できるだけ環境に配慮し、脱石炭を目指す」。こう話すのは、発電所を所有するエネルギー会社「トゥルク・リージョナル・エナジー(TSE)」のマイヤ・ヘネル最高経営責任者です。
TSEは今年、石炭泥炭といった化石燃料由来の発電をゼロにする計画。50年以上にわたり運用されてきた石炭火力発電所は、今後数年のうちにすべて稼働停止します。
トラックが到着し積み荷を降ろすと、あたりにさびた鉄のようなにおいが充満しました。火力発電所に使用する泥炭です。敷地内には石炭がうずたかく積まれた貯蔵所も残っています。ヘネル氏は、「これが最後の石炭となることを願っている」と話しました。
市によると、全国で泥炭に従事する労働者は約2000人。エネルギーの移行で雇用が失われないよう、国は再就職の支援体制を整え、「公正な移行」を目指すとしています。
4年前に導入されたマルチ燃料コージェネ発電所のタービン=2021年12月14日、ナーンタリ市内
【バイオマス発電】
動植物に由来する有機物、家畜排せつ物、稲わら、林業の廃材などをエネルギー源として利用し、直接燃焼して行う発電です。
木質バイオマス資源は、光合成で大気から二酸化炭素を吸収して成長するため、バイオマス燃料を燃焼させても森林を更新すれば、大気中の二酸化炭素の排出量をトータルでゼロにすることが可能です。一方、バイオマス源の一つとされているパーム油をとるために、森林伐採をすれば環境破壊につながるとの指摘もあります。
模索は社会責任
昨年、英北部グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の合意文書では、石炭火力発電の「段階的削減」を目指すことが明記されました。
ヘネル氏はこう語ります。「化石燃料由来の発電からの撤退は世界の流れだ。温室効果ガスの排出量削減をもっとも実現しやすいのはエネルギー業界。安定供給という使命があるなか、できることを模索するのが社会的責任だ」。
(トゥルク〈フィンランド南西部〉=桑野白馬 写真も)
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年1月18日付掲載
現在、バイオマスの発電量の割合は75%に達しています。フィンランドの基幹産業は持続可能な森林管理を基にした林業のため、廃材入手の際に新たに木を切る必要がない。
全国で泥炭に従事する労働者は約2000人。エネルギーの移行で雇用が失われないよう、国は再就職の支援体制を整え、「公正な移行」を目指す。
化石燃料由来の発電からの撤退は世界の流れだ。温室効果ガスの排出量削減をもっとも実現しやすいのはエネルギー業界。安定供給という使命があるなか、できることを模索するのが社会的責任。
それぞれの国の特質を生かして、再生可能エネルギーへ移行する戦略を!
12月のトゥルク市内の気温は0度を下回ります。ただ、建物に入れば暖房がきいて暖かく、セーターなしでも過ごせます。市の目指す循環型社会の実現に向け、各家庭に提供されるエネルギーの中では、脱石炭の動きが進んでいます。トゥルク市から西に約15キロのナーンタリ市にあるマルチ燃料コージェネレーション発電所を訪れました。
電動バスに揺られて約50分。港沿いの発電所に到着しました。敷地内には木材チップが積まれ、木の香りが漂ってきます。この発電所は2017年、既存の石炭火力発電所の一部を置き換える形で建設されました。燃料は主に間伐材や切り株、樹皮といったバイオマスを使用し、電気と熱を生産します。ボイラーで温められた水が地下のトンネルを通してトゥルク市を含む4自治体へ送られ、地域暖房として利用されます。
マイヤ・ヘネル氏=2021年12月14日、ナーンタリ市内
バイオマス75%
現在、バイオマスの発電量の割合は75%に達しています。フィンランドの基幹産業は持続可能な森林管理を基にした林業のため、廃材入手の際に新たに木を切る必要がないと言います。
「できるだけ環境に配慮し、脱石炭を目指す」。こう話すのは、発電所を所有するエネルギー会社「トゥルク・リージョナル・エナジー(TSE)」のマイヤ・ヘネル最高経営責任者です。
TSEは今年、石炭泥炭といった化石燃料由来の発電をゼロにする計画。50年以上にわたり運用されてきた石炭火力発電所は、今後数年のうちにすべて稼働停止します。
トラックが到着し積み荷を降ろすと、あたりにさびた鉄のようなにおいが充満しました。火力発電所に使用する泥炭です。敷地内には石炭がうずたかく積まれた貯蔵所も残っています。ヘネル氏は、「これが最後の石炭となることを願っている」と話しました。
市によると、全国で泥炭に従事する労働者は約2000人。エネルギーの移行で雇用が失われないよう、国は再就職の支援体制を整え、「公正な移行」を目指すとしています。
4年前に導入されたマルチ燃料コージェネ発電所のタービン=2021年12月14日、ナーンタリ市内
【バイオマス発電】
動植物に由来する有機物、家畜排せつ物、稲わら、林業の廃材などをエネルギー源として利用し、直接燃焼して行う発電です。
木質バイオマス資源は、光合成で大気から二酸化炭素を吸収して成長するため、バイオマス燃料を燃焼させても森林を更新すれば、大気中の二酸化炭素の排出量をトータルでゼロにすることが可能です。一方、バイオマス源の一つとされているパーム油をとるために、森林伐採をすれば環境破壊につながるとの指摘もあります。
模索は社会責任
昨年、英北部グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の合意文書では、石炭火力発電の「段階的削減」を目指すことが明記されました。
ヘネル氏はこう語ります。「化石燃料由来の発電からの撤退は世界の流れだ。温室効果ガスの排出量削減をもっとも実現しやすいのはエネルギー業界。安定供給という使命があるなか、できることを模索するのが社会的責任だ」。
(トゥルク〈フィンランド南西部〉=桑野白馬 写真も)
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年1月18日付掲載
現在、バイオマスの発電量の割合は75%に達しています。フィンランドの基幹産業は持続可能な森林管理を基にした林業のため、廃材入手の際に新たに木を切る必要がない。
全国で泥炭に従事する労働者は約2000人。エネルギーの移行で雇用が失われないよう、国は再就職の支援体制を整え、「公正な移行」を目指す。
化石燃料由来の発電からの撤退は世界の流れだ。温室効果ガスの排出量削減をもっとも実現しやすいのはエネルギー業界。安定供給という使命があるなか、できることを模索するのが社会的責任。
それぞれの国の特質を生かして、再生可能エネルギーへ移行する戦略を!
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