2021年度概算要求の焦点① 税財政 膨らむ軍事費・大企業支援
2021年度予算編成に向けた各省庁からの概算要求と「税制改正」要望が出そろいました。菅義偉内閣が発足してはじめての予算編成です。特徴をみました。
各省庁が提出した21年度の概算要求・要望の合計額は105兆4071億円。100兆円を超えるのは7年連続です。
■2021年度概算要求の姿
21年度は要求、要望を合わせた額。20年度は消費税増税対策を除いた「通常分」の額
21年度の概算要求には多数の事項要求が含まれており、予算編成の過程でさらに多額になる恐れがある
それぞれ所管の要求額、予算額は四捨五入されているため、合計額と一致しない
1カ月遅く
21年度の概算要求は、新型コロナウイルスへの政府の対応が優先され、提出締切は例年より1カ月遅い9月末に設定されました。要求額を算出する基準も簡単にし、20年度当初予算と同額を基本としました。コロナ対応など「緊要な経費」は別枠で、上限なく要望が出せます。その結果、コロナ対策費は、現時点で金額を示さない「事項要求」が多く、年末の予算案は歳出総額が過去最大を更新する見通しです。
その中でも、軍事費が増大する一方、社会保障抑制路線は続けています。コロナ禍で窮乏する国民生活を支える施策が求められているのに、応えるものにはなっていません。
軍事費は5兆4898億円と過去最大になりました。5兆円を超えるのは6年連続。9年連続で前年度を上回り、7年連続で過去最高を更新しました。辺野古新基地建設など米軍再編・SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費や「イージス・アショア」の代替経費などは「事項要求」です。20年度と同水準で計上されれば、約2000億円が上積みされることになります。
社会保障分野で、厚生労働省は年金・医療にかかる経費として昨年と同額の30兆8562億円を要求。高齢化の進展による経費の自然増は示されていません。
負担増と給付減の姿勢は変わりません。コロナ禍で経営危機となっている医療・介護施設への支援は盛り込まれませんでした。21年度は介護報酬改定の年に当たり、注目されます。
文部科学省は、公立小中学校での少人数学級実現のための予算を「事項要求」として盛り込みました。コロナ対策で社会的距離の確保が求められる中、高まった少人数学級を求める世論が反映したものです。ただ、実現の可否やその水準については予断を許しません。
消費税率の引き下げを求める署名への協力を呼びかける各界連の人たち=10月1日、東京・新宿駅西口
原発に固執
菅首相が強調するデジタル化の推進では、内閣官房がデジタル庁(仮称)の設置準備や運営などに必要な経費を事項要求で盛り込みました。デジタル庁の発足は、国民が望まないマイナンバーカードを強権的に普及させるため。個人情報の漏えいなど危険な政策です。総務省は、マイナンバーカードの普及促進として1451億円を要求。自治体の情報セキュリティー強化などを進めるとして、139・5億円を盛り込みました。経済産業省は、民間企業での新技術への対応などを目的とする「デジタルを活用した産業の転換」に394億円を求めました。
内閣官房は、情報収集衛星(スパイ衛星)の開発・運用として886億円を要求。経産省は、小型原発などの開発支援に12億円、プルトニウムを使用する高速炉の開発委託事業に45億円を計上しました。
21年度「税制改正」要望には、コロナ禍による景気悪化への対応として国民的要求が高まっている消費税減税が含まれていません。一方、研究開発減税の拡充が盛り込まれました。上限を法人税の45%まで引き上げることや適用対象の拡大を要求。国民生活の悪化を尻目に、大企業支援を拡充します。(つづく)(9回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年10月13日付掲載
厚生労働省の予算は、規模としては大きいのですが、高齢化の進展にともなう経費の増加が反映されれいません。
少人数学級のための予算が初めて盛り込まれています。
デジタル庁の発足のための経費も盛り込まれました。
2021年度予算編成に向けた各省庁からの概算要求と「税制改正」要望が出そろいました。菅義偉内閣が発足してはじめての予算編成です。特徴をみました。
各省庁が提出した21年度の概算要求・要望の合計額は105兆4071億円。100兆円を超えるのは7年連続です。
■2021年度概算要求の姿
所管 | 21年度概算要求 | 20年度当初予算 |
皇室費 | 85億 | 116億 |
国会 | 1321億 | 1285億 |
裁判所 | 3302億 | 3242億 |
会計検査院 | 169億 | 171億 |
内閣・内閣本府など | 4兆0270億 | 3兆8539億 |
警察庁 | 3368億 | 3372億 |
総務省 | 16兆8263億 | 16兆5194億 |
(うち地方交付税交付金など) | (16兆1288億) | (15兆8093億) |
法務省 | 8362億 | 7887億 |
外務省 | 8090億 | 7120億 |
財務省 | 1兆8944億 | 1兆8064億 |
文部科学省 | 5兆9118億 | 5兆3060億 |
厚生労働省 | 32兆9895億 | 32兆9861億 |
農林水産省 | 2兆5620億 | 2兆1370億 |
経済産業省 | 1兆1909億 | 9341億 |
国土交通省 | 6兆1437億 | 6兆0788億 |
環境省 | 4084億 | 3240億 |
防衛省 | 5兆4898億 | 5兆2625億 |
小計 | 79兆9137億 | 77兆5276億 |
(うち一般歳出) | (63兆7849億) | (61兆7184億) |
国債費 | 25兆4934億 | 23兆3515億 |
合計 | 105兆4071億 | 100兆8791億 |
21年度の概算要求には多数の事項要求が含まれており、予算編成の過程でさらに多額になる恐れがある
それぞれ所管の要求額、予算額は四捨五入されているため、合計額と一致しない
1カ月遅く
21年度の概算要求は、新型コロナウイルスへの政府の対応が優先され、提出締切は例年より1カ月遅い9月末に設定されました。要求額を算出する基準も簡単にし、20年度当初予算と同額を基本としました。コロナ対応など「緊要な経費」は別枠で、上限なく要望が出せます。その結果、コロナ対策費は、現時点で金額を示さない「事項要求」が多く、年末の予算案は歳出総額が過去最大を更新する見通しです。
その中でも、軍事費が増大する一方、社会保障抑制路線は続けています。コロナ禍で窮乏する国民生活を支える施策が求められているのに、応えるものにはなっていません。
軍事費は5兆4898億円と過去最大になりました。5兆円を超えるのは6年連続。9年連続で前年度を上回り、7年連続で過去最高を更新しました。辺野古新基地建設など米軍再編・SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費や「イージス・アショア」の代替経費などは「事項要求」です。20年度と同水準で計上されれば、約2000億円が上積みされることになります。
社会保障分野で、厚生労働省は年金・医療にかかる経費として昨年と同額の30兆8562億円を要求。高齢化の進展による経費の自然増は示されていません。
負担増と給付減の姿勢は変わりません。コロナ禍で経営危機となっている医療・介護施設への支援は盛り込まれませんでした。21年度は介護報酬改定の年に当たり、注目されます。
文部科学省は、公立小中学校での少人数学級実現のための予算を「事項要求」として盛り込みました。コロナ対策で社会的距離の確保が求められる中、高まった少人数学級を求める世論が反映したものです。ただ、実現の可否やその水準については予断を許しません。
消費税率の引き下げを求める署名への協力を呼びかける各界連の人たち=10月1日、東京・新宿駅西口
原発に固執
菅首相が強調するデジタル化の推進では、内閣官房がデジタル庁(仮称)の設置準備や運営などに必要な経費を事項要求で盛り込みました。デジタル庁の発足は、国民が望まないマイナンバーカードを強権的に普及させるため。個人情報の漏えいなど危険な政策です。総務省は、マイナンバーカードの普及促進として1451億円を要求。自治体の情報セキュリティー強化などを進めるとして、139・5億円を盛り込みました。経済産業省は、民間企業での新技術への対応などを目的とする「デジタルを活用した産業の転換」に394億円を求めました。
内閣官房は、情報収集衛星(スパイ衛星)の開発・運用として886億円を要求。経産省は、小型原発などの開発支援に12億円、プルトニウムを使用する高速炉の開発委託事業に45億円を計上しました。
21年度「税制改正」要望には、コロナ禍による景気悪化への対応として国民的要求が高まっている消費税減税が含まれていません。一方、研究開発減税の拡充が盛り込まれました。上限を法人税の45%まで引き上げることや適用対象の拡大を要求。国民生活の悪化を尻目に、大企業支援を拡充します。(つづく)(9回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年10月13日付掲載
厚生労働省の予算は、規模としては大きいのですが、高齢化の進展にともなう経費の増加が反映されれいません。
少人数学級のための予算が初めて盛り込まれています。
デジタル庁の発足のための経費も盛り込まれました。