燃料油の高騰対策 大企業のため込み 補助金で膨張
2021年11月頃から、世界的な原油価格の高騰が起こりました。08年以来といわれる価格高騰に、多くの国民や国内産業・事業者が打撃を受けています。
これを受けて政府は、ガソリンなどの小売価格が一定額を超えた場合に、石油元売りや輸入業者に補助する「燃料油価格激変緩和対策事業」を22年1月から行っています。
「時限的・緊急避難的」として始まったこの事業の対象となるのは、ガソリン、軽油、灯油、重油、航空機燃料です。
補助上限額の拡充や事業期間の延長を繰り返し、現在まで6度にわたり合計6・2兆円もの予算が投入されています。(今年9月末まで実施予定)
この措置は、ガソリンスタンドなどの小売店や消費者へ直接補助するものではなく、「値下げを促すものではない」とされています。しかも、小売価格はあくまで全国平均であり、地域格差の是正も目的とはしていません。
昨年公表の財務省の調査では「ガソリンスタンドの経営改善に実質的に使われている事例もある」と指摘されており、価格抑制効果を疑問視する声も上がっています。
一方、補助を受けた業界大手各社の財務諸表を見ると、出光興産は当期純利益を20年度の349億円から22年度は4~12月期だけで2496億円に増加させました。三菱商事は同1726億円から同9558億円に増加させています。
主な内部留保である利益剰余金を見ると、最大手のエネオスは20年度から22年末までで5237億円も増やしています。大手商社も大幅増です。元売り各社が持つ石油の評価額が原油価格高騰と円安の影響によりかさ上げされたこと(在庫評価益)が最大の要因です。
欧州では、このエネルギー企業の“棚ぼた利益”に対して追加で課税する動き(ウィンドフォール課税)が全域で広がっています。
石油業界大手の内部留保は大幅増(億円)
利益剰余金の金額、各社決算資料から
日本共産党の岩渕友議員は参院経済産業委員会(22年12月)で、「大手元売りが巨額の利益を上げる一方で、中小・小規模事業者は値上げが難しく価格転嫁もできず、経営が深刻な事態になっている」とし、調査と資料開示を求めました。
しかし、政府は「(事業終了後に)精算する仕組みである」として“どこにいくら補助したのか”については、全額を開示していません。
小売価格の低減は必要ですが、巨額の税金投入ありきではなく、各社の超過利益や内部留保を還元させ、経営努力でまかなわせることが必要です。
価格高騰の影響は化石燃料に依存してきた政府・財界が招いた事態でもあります。国際価格に左右されない再生可能エネルギーの拡大が必要です。
阿部了(あべ・りょう 日本共産党国会議員団事務局)
「しんぶん赤旗」日曜版 2023年3月26日付掲載
ガソリンなどの小売価格が一定額を超えた場合に、石油元売りや輸入業者に補助する「燃料油価格激変緩和対策事業」。
レギュラーガソリン、1リットル130円台だったのが今は安いところでも150円台。
価格抑制の施策は必要ですが、実際は「ガソリンスタンドの経営改善に実質的に使われている事例もある」と指摘。
税金を使うのではなく、石油元売りや大手商社の内部留保などを還元して値下げすべきでは。
2021年11月頃から、世界的な原油価格の高騰が起こりました。08年以来といわれる価格高騰に、多くの国民や国内産業・事業者が打撃を受けています。
これを受けて政府は、ガソリンなどの小売価格が一定額を超えた場合に、石油元売りや輸入業者に補助する「燃料油価格激変緩和対策事業」を22年1月から行っています。
「時限的・緊急避難的」として始まったこの事業の対象となるのは、ガソリン、軽油、灯油、重油、航空機燃料です。
補助上限額の拡充や事業期間の延長を繰り返し、現在まで6度にわたり合計6・2兆円もの予算が投入されています。(今年9月末まで実施予定)
この措置は、ガソリンスタンドなどの小売店や消費者へ直接補助するものではなく、「値下げを促すものではない」とされています。しかも、小売価格はあくまで全国平均であり、地域格差の是正も目的とはしていません。
昨年公表の財務省の調査では「ガソリンスタンドの経営改善に実質的に使われている事例もある」と指摘されており、価格抑制効果を疑問視する声も上がっています。
一方、補助を受けた業界大手各社の財務諸表を見ると、出光興産は当期純利益を20年度の349億円から22年度は4~12月期だけで2496億円に増加させました。三菱商事は同1726億円から同9558億円に増加させています。
主な内部留保である利益剰余金を見ると、最大手のエネオスは20年度から22年末までで5237億円も増やしています。大手商社も大幅増です。元売り各社が持つ石油の評価額が原油価格高騰と円安の影響によりかさ上げされたこと(在庫評価益)が最大の要因です。
欧州では、このエネルギー企業の“棚ぼた利益”に対して追加で課税する動き(ウィンドフォール課税)が全域で広がっています。
石油業界大手の内部留保は大幅増(億円)
会社名 | 2020年度 | 21年度末 | 22年末 | 20年度との比 |
ENEOS HD | 1兆424 | 1兆5177 | 1兆5661 | 150% |
出光興産 | 4006 | 6453 | 8445 | 211% |
コスモエネルギー HD | 2120 | 3434 | 3905 | 184% |
三菱商事 | 4兆4227 | 5兆2044 | 5兆8922 | 133% |
三井物産 | 3兆5478 | 4兆1660 | 4兆7046 | 133% |
伊藤忠商事 | 3兆2389 | 3兆8120 | 4兆3077 | 133% |
丸紅 | 1兆674 | 1兆3797 | 1兆7083 | 160% |
日本共産党の岩渕友議員は参院経済産業委員会(22年12月)で、「大手元売りが巨額の利益を上げる一方で、中小・小規模事業者は値上げが難しく価格転嫁もできず、経営が深刻な事態になっている」とし、調査と資料開示を求めました。
しかし、政府は「(事業終了後に)精算する仕組みである」として“どこにいくら補助したのか”については、全額を開示していません。
小売価格の低減は必要ですが、巨額の税金投入ありきではなく、各社の超過利益や内部留保を還元させ、経営努力でまかなわせることが必要です。
価格高騰の影響は化石燃料に依存してきた政府・財界が招いた事態でもあります。国際価格に左右されない再生可能エネルギーの拡大が必要です。
阿部了(あべ・りょう 日本共産党国会議員団事務局)
「しんぶん赤旗」日曜版 2023年3月26日付掲載
ガソリンなどの小売価格が一定額を超えた場合に、石油元売りや輸入業者に補助する「燃料油価格激変緩和対策事業」。
レギュラーガソリン、1リットル130円台だったのが今は安いところでも150円台。
価格抑制の施策は必要ですが、実際は「ガソリンスタンドの経営改善に実質的に使われている事例もある」と指摘。
税金を使うのではなく、石油元売りや大手商社の内部留保などを還元して値下げすべきでは。
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