きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

第48回「視点」展 写真は時代の鏡か

2023-06-12 07:05:51 | 文化・芸術・演劇など
第48回「視点」展 写真は時代の鏡か
中村梧郎

視点展の写真群はパワフルである。そこには現代社会の凝縮があり、画面には鋭い感性と表現力とがみなぎっている。
今年も2600枚を超す作品の選考には苦痛とエネルギーを要した。展示壁面の制約があるために入選作品を厳選しなければならないからだ。
視点賞となった豆塚猛の「大和古事記風土記」はとりわけ美しい作品であった。古事記を題名に組み込んではいるが、私には天地開闢(てんちかいびゃく)の神秘よりも、清少納言・枕草子の描写を呼び覚まされるものとなった。「…あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、むらさきだちたる雲の細くたなびきたる」…。6枚組の写真は、対象と場所、季節、光、白鶏、いずれにおいても飛びぬけた表象性を備えていた。



豆塚猛「大和古事記風土記」(6枚組)

奨励賞、山本やす子の「プランター農業-我家の経済-」は視点がガラリと変わって身近な暮らしの一角を捉える。熊谷一之の「車窓 鶴見線」は電車から見えた人間と工業地帯の連続写真である。下村いさおの「花」は街中で花柄を見た途端に見事なフレーミングでシャッターを押したことがわかる。


下村いさお「花」(4枚組)

宮田敏幸の「牡蛎(かき)海女」。モノクロ1枚で来日労働者のたくましさを捉えた。ヤング賞となった単写真は酒好きの祖父が「最後の一滴まで」と容器を傾ける姿をすかさず撮ったものだ。
だが、ここですべての作品を紹介・評価するわけにもいかない。会場の壁面に展開されている写真群のすばらしさを、直に見てほしいと願うしかない。
今のスマホは皆が写真を撮れる条件を生んだ。すると「もっと上手に写真を撮りたい」という欲が必ず出る。これは模倣と訓練、切磋琢磨を重ねれば誰でも獲得できるワザなのだ。それをバックアップしているのが現代写真研究所の写真講座である。6月開講のこの教室と、視点展を主催する「リアリズム写真集団」への参集こそが写真文化を支える力となってゆく。
アサヒカメラなど写真誌がまたもや廃刊となってしまっている今日である。だが、「新しい戦前」がささやかれる時代の、怒りや喜び、哀しさを鏡のように表すのに、写真ほど優れたメディアは無い。それを目のあたりにできるのが全国公募の視点作品展なのである。
(なかむら・ごろう フォトジャーナリスト、「視点」展選考委員)
*13日まで、東京都美術館(上野公園内)電話03(3823)6921。その後、仙台、兵庫、三重を巡回

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年6月9日付掲載


視点賞となった豆塚猛の「大和古事記風土記」はとりわけ美しい作品。古事記を題名に組み込んではいるが、私には天地開闢(てんちかいびゃく)の神秘よりも、清少納言・枕草子の描写を呼び覚まされるものと。
下村いさおの「花」は街中で花柄を見た途端に見事なフレーミングでシャッターを押したこと。
「新しい戦前」がささやかれる時代の、怒りや喜び、哀しさを鏡のように表すのに、写真ほど優れたメディアは無い。それを目のあたりにできるのが全国公募の視点作品展。
スマホで簡単に写真が撮れる時代。その感性を表現して欲しい。

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