阪神・淡路大震災20年 復興を問う④ 「創造的復興」
神戸空港建設強行し破たん
神戸でいまも語り継がれる出来事があります。
震災から約2週間後。「神戸空港は復興のシンボル。当然推進する」と当時の市長が宣言しました。がれきの下にまだ人が埋まり、被災者が避難所で寒さに耐えていたとき。市民はあぜんとしました。
「ストップ神戸空港」の会の北岡浩事務局長は「人を助けてこそ復興のはずなのに空港とは、と誰もが思った」とふり返ります。
「空港より被災者を救え」という市民の声を無視して建設が強行された神戸空港=神戸市中央区
巨大開発を推進
被災者に自力再建を強いる一方で国・自治体がおこなった「復興」とは何だったのか。
国や県は「単に震災前の状態に回復するのでなく、『創造的復興を』というスローガンを掲げ、震災に便乗して以前から計画していた巨大開発を「復興」の名を冠して推進したのでした。
震災後10年間の国・自治体の復興事業費は16兆3千億円。その6割、9兆8千億円が県の復興計画の柱の一つ「多核・ネットワーク型都市圏の形成」に投入されました。
そこにはインフラ整備のほか、高速道路網建設、新都市づくり、神戸港の最新鋭整備、巨大再開発、土地区画整理、神戸空港1など大型事業がズラリ。復興とは無関係の関空2期工事への出資までありました。ゼネコン・大企業むけの「復興」であることは明らかです。
ところが20年の間に、この「創造的復興」路線が破綻していきます。
「復興のシンポル」という神戸空港(2006年開港)は、棄客数が年403万人という需要予測にたいし235万人(13年度)と低迷。収入の中心を占めるはずの着陸料収入は当初見込みの3分の1強にとどまり(同)、別会計からの繰り入れが増える一方です。
さらに空港島の土地が売れないため借金約2千億円を返せず借り換えの連続と、惨たんたる状況です。
被災者本位こそ
事業費2710億円、面積20・1ヘクタールと西日本最大の巨大再開発である新長田駅南の「復興」再開発事業も同様です。
神戸市が事業主体で四十数棟のビルを林立させるものですが、地下・地上・2階の3層構造の広大な商業床が半分以上売れ残り、市は計画を変えて賃貸を導入。不明朗で高い管理費をめぐって商店主が管理会社を訴える事態にもなりました。
北岡氏は「ハコ物を造ればいいという復興策ではダメだと、いや応なしに証明されました。被災者には悲劇しかもたらさない。それでもまた三宮で大開発が計画されています。いまからでも政治の流れを被災者本位に切り替えるべきだ」と強調します。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年1月13日付掲載
「震災前の施設をそのまま再建したのではまた被害を大きくする」と理由づけで、「創造的復興」と冠して巨大開発が行われました。
震度6強まで耐えられる住宅や公共施設を造ることは必要でした。しかし、住民の意見や需要に合わない再開発で、新長田南などでは商店主や住民がいまだに苦しんでいます。
神戸空港建設強行し破たん
神戸でいまも語り継がれる出来事があります。
震災から約2週間後。「神戸空港は復興のシンボル。当然推進する」と当時の市長が宣言しました。がれきの下にまだ人が埋まり、被災者が避難所で寒さに耐えていたとき。市民はあぜんとしました。
「ストップ神戸空港」の会の北岡浩事務局長は「人を助けてこそ復興のはずなのに空港とは、と誰もが思った」とふり返ります。
「空港より被災者を救え」という市民の声を無視して建設が強行された神戸空港=神戸市中央区
巨大開発を推進
被災者に自力再建を強いる一方で国・自治体がおこなった「復興」とは何だったのか。
国や県は「単に震災前の状態に回復するのでなく、『創造的復興を』というスローガンを掲げ、震災に便乗して以前から計画していた巨大開発を「復興」の名を冠して推進したのでした。
震災後10年間の国・自治体の復興事業費は16兆3千億円。その6割、9兆8千億円が県の復興計画の柱の一つ「多核・ネットワーク型都市圏の形成」に投入されました。
そこにはインフラ整備のほか、高速道路網建設、新都市づくり、神戸港の最新鋭整備、巨大再開発、土地区画整理、神戸空港1など大型事業がズラリ。復興とは無関係の関空2期工事への出資までありました。ゼネコン・大企業むけの「復興」であることは明らかです。
ところが20年の間に、この「創造的復興」路線が破綻していきます。
「復興のシンポル」という神戸空港(2006年開港)は、棄客数が年403万人という需要予測にたいし235万人(13年度)と低迷。収入の中心を占めるはずの着陸料収入は当初見込みの3分の1強にとどまり(同)、別会計からの繰り入れが増える一方です。
さらに空港島の土地が売れないため借金約2千億円を返せず借り換えの連続と、惨たんたる状況です。
被災者本位こそ
事業費2710億円、面積20・1ヘクタールと西日本最大の巨大再開発である新長田駅南の「復興」再開発事業も同様です。
神戸市が事業主体で四十数棟のビルを林立させるものですが、地下・地上・2階の3層構造の広大な商業床が半分以上売れ残り、市は計画を変えて賃貸を導入。不明朗で高い管理費をめぐって商店主が管理会社を訴える事態にもなりました。
北岡氏は「ハコ物を造ればいいという復興策ではダメだと、いや応なしに証明されました。被災者には悲劇しかもたらさない。それでもまた三宮で大開発が計画されています。いまからでも政治の流れを被災者本位に切り替えるべきだ」と強調します。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年1月13日付掲載
「震災前の施設をそのまま再建したのではまた被害を大きくする」と理由づけで、「創造的復興」と冠して巨大開発が行われました。
震度6強まで耐えられる住宅や公共施設を造ることは必要でした。しかし、住民の意見や需要に合わない再開発で、新長田南などでは商店主や住民がいまだに苦しんでいます。
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