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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

AI規制 EU案の光と影① 悪用防ぎ活用を促進

2021-05-14 07:24:30 | 経済・産業・中小企業対策など
AI規制 EU案の光と影① 悪用防ぎ活用を促進
情報産業研究者 高野嘉史さんに聞く

欧州連合(EU)欧州委員会が発表した人工知能(AI)の利用に対する規制案(4月21日)について、情報産業研究者の高野嘉史(たかの・よしふみ)さんに寄稿してもらいました。

EUは2016年5月に一般データ保護規則(GDPR)を発効させるなど、個人情報保護に積極的に取り組んできました。
この個人情報保護と密接に関連するAIの分野でも、20年2月に「AI白書」を、同年10月に「AIなどの倫理的な枠組みに関する勧告」を発表するなど、規制のあり方についての議論をリードしてきました。

主要国では初
今回発表された規制案では目的が次のように説明されています。「AIが合法かつ安全で、現存のEU法規と価値観を尊重すること、AIへの投資と技術革新を促進すること、合法かつ安全で信頼に足るAIのために統合市場を発展させ、市場の細分化を防止すること」の三つです。
今後、欧州議会などでの審議を経て立法化されることになります。本格的なAI規制は世界の主要国では初めてということで注目を浴びています。
AIの利活用は社会経済生活のさまざまな分野に広がっています。日本でも、企業の問い合わせサイトなどでAIが回答することが珍しくなくなっています。若手棋士の活躍で注目を浴びている将棋でも、AIが一手ごとに対戦者の優劣を評価したり、最善の着手を示したりして、インターネット中継を興味深いものにしています。
その一方で、19年にリクルートキャリア社が就職情報サイトの閲覧履歴を解析して就職活動中の学生の内定辞退率を算出し、その結果を企業向けに販売していたことが明るみに出ました。また、犯罪の捜査で監視カメラの解析を通じて犯人を特定したこともしばしば報じられています。
中国などでは街頭に設置された監視カメラを通じて個人の行動を監視し、人権抑圧に使われているともいわれています。
このようにAIは、使い方によっては生活の利便性を高めてくれる一方、われわれが認知しない形で使われたり、AIの使用を公表していてもどのような分析に基づいて結論に至ったかがブラックボックス化したり、人権侵害につながったりする側面もあります。
手遅れにならないうちにAIの悪用を防止しようとするEUの動きは注目されます。同時にこの規制案には「光と影」があることを忘れてはなりません。



中国・上海のショッピングエリアに設置された監視カメラ=15日(ロイター)

ルールを整備
EUは規制によって監視社会への懸念を払しょくし、AI活用を促進するために、市民の権利保護や不正阻止のルールを整備することを目指しています。とりわけ顔認証などの生体認証技術は深刻な人権侵害につながりやすいことから、公共空間における警察などによる法執行目的での利用を「原則禁止」します。他方で、人命への脅威などを理由にした例外的な使用を認めており、乱用の危険もあります。AIへの投資と技術革新を促進してEUの競争力を強化するという下心もみえています。
この規制は、EUの市民に対してAI製品やサービスを提供する全ての企業に適用されることになっています。EU域外から提供されるものも規制対象です。このため、EU域外の企業はEU域内に文書で委任した権限を持つ代理人を任命することが求められます。
(つづく)(4回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年5月12日付掲載


AIは、使い方によっては生活の利便性を高めてくれる一方、われわれが認知しない形で使われたり、AIの使用を公表していてもどのような分析に基づいて結論に至ったかがブラックボックス化したり、人権侵害につながったりする側面も。
AIの規制の取り組みは主要国では初なので注目されます。

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