デュアルユース(軍民両用)の危険⑤ 殺傷型の無人兵器も
安保3文書の改定に向けて、自民党が4月に発表した「提言」は、「戦い方の変化」を強調しました。その推進力は「急速な技術革新」だといいます。「AI(人工知能)、無人機、量子技術等の先端技術」によって出現している「新たな『戦い方』」に対応するため、最先端の民生技術を取り入れた兵器研究・開発が必要だといいます。
ベルリンで開かれた安全保障会議で展示された無人航空機ドローンのモデル=11月30日(ロイター)
未来
「未来の戦場」はどのような世界になると想定されているのでしょうか。中央省庁などからの委託により調査研究を行っている「未来工学研究所」(平澤冷理事長)が行った「技術革新がもたらす安全保障環境の変容と我が国の対応」報告書(2020年3月)がその一端を明らかにしています。
〈ロボット工学〉
無人航空機(UAV)、無人潜航艇(UUV)、無人車両(UGV)などの活用が進み、部分的ないし全面的に有人の兵器を置き換える。これらの無人兵器は有人兵器よりも長時間・長距離にわたって行動することができ、危険な敵地上空での偵察や攻撃にすでに広く活用されている。今後は輸送、補給、空中給油、傷病兵の回収などさらに幅広い分野に進出することになる。AIやIT(情報技術)との組み合わせにより、広範囲に分散した無人兵器が群(スウォーム)として振る舞うことで、新たな戦闘方法が出現することも予見される。
〈人工知能(Al)〉
AIが人間の指揮官の意思決定を支援するようになる。軍事計画の策定に関し、AIが人間の指揮官に選択肢を示す。偵察機や偵察衛星が入手した画像情報をAIが自動判別することで人間の分析官の事務量を軽減するといった用途での利用はすでに開始されている。
また、サイバー戦やミサイル防衛など、極端に進行速度の速い戦闘局面ではAIが人間の意思決定を全面的に代替する可能性がある。AIがロボット工学と組み合わされた場合には、殺傷型自律無人兵器(LAWS)として完全に人間の介在しない戦闘が実現する。現実と見分けがつかない偽映像などが登場し、情報戦がさらに熾烈(しれつ)さを増す。
〈バイオ技術〉
DNA操作や化学物質によって兵士の肉体的能力や認知能力などを拡張し、筋力や持久力を通常の人間よりもはるかに高めたり、夜間でも目が見えるなどの能力を付与することができるようになる。合成生物学によってより感染性や毒性の強い生物兵器や、敵の兵器やそれらを動かす燃料を分解してしまう新カテゴリーの生物兵器が出現する。一方で兵士の抗体を強化することも可能となる。
〈情報通信技術〉
軍事組織の運用するあらゆる装備品がネットワークによって接続され、戦場におけるモノのインターネット化が実現する。指揮通信統制系統が効率化し、軍事組織は前線における兵士個々人から宇宙空間までの全戦闘領域の情報をリアルタイムで共有しながら、より少数の兵力でも大きな効果を発揮する軍事作戦が可能となる。
〈神経工学〉
兵士の脳同士を直接接続してコミュニケーションをとる。人間の思考を反映して動く兵器などが出現する。また、敵の精神的・身体的能力を低下させ、捕虜の尋問をより効果的に行うことを可能とする。
〈宇宙技術〉
桁違いに安価な宇宙輸送が可能となることで、これまでに例を見ない大型の人工衛星や多数の「衛星コンステレーション」(多数の小型衛星を連携させて情報収集能力を高めるシステム)を軌道上に配備できるようになり、宇宙を用いた偵察、通信、航法能力が飛躍的に拡大する。レーザー迎撃システムが宇宙空間に配備される。他方で、人工衛星を標的とする対衛星攻撃が活発化する。
生活
「軍事対軍事」の力の論理が科学・技術を覆ってしまえば、科学・技術は、人類の生存を脅かす存在になってしまいます。人々の生活を豊かにするという本来の科学・技術の役割が果たせるようデュアルユース(軍民両用)の危険を取り除くための仕組みづくりが求められています。
(おわり)(金子豊弘、小村優、日隈広志が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年12月17日付掲載
未来の戦場では、ロボット工学、人工知能(AI)、バイオ技術、情報通信技術、神経工学、宇宙技術などありとあらゆるものが活用されると。
「軍事対軍事」の力の論理が科学・技術を覆ってしまえば、科学・技術は、人類の生存を脅かす存在に。人々の生活を豊かにするという本来の科学・技術の役割が果たせるようデュアルユース(軍民両用)の危険を取り除くための仕組みづくりが求められます。
安保3文書の改定に向けて、自民党が4月に発表した「提言」は、「戦い方の変化」を強調しました。その推進力は「急速な技術革新」だといいます。「AI(人工知能)、無人機、量子技術等の先端技術」によって出現している「新たな『戦い方』」に対応するため、最先端の民生技術を取り入れた兵器研究・開発が必要だといいます。
ベルリンで開かれた安全保障会議で展示された無人航空機ドローンのモデル=11月30日(ロイター)
未来
「未来の戦場」はどのような世界になると想定されているのでしょうか。中央省庁などからの委託により調査研究を行っている「未来工学研究所」(平澤冷理事長)が行った「技術革新がもたらす安全保障環境の変容と我が国の対応」報告書(2020年3月)がその一端を明らかにしています。
〈ロボット工学〉
無人航空機(UAV)、無人潜航艇(UUV)、無人車両(UGV)などの活用が進み、部分的ないし全面的に有人の兵器を置き換える。これらの無人兵器は有人兵器よりも長時間・長距離にわたって行動することができ、危険な敵地上空での偵察や攻撃にすでに広く活用されている。今後は輸送、補給、空中給油、傷病兵の回収などさらに幅広い分野に進出することになる。AIやIT(情報技術)との組み合わせにより、広範囲に分散した無人兵器が群(スウォーム)として振る舞うことで、新たな戦闘方法が出現することも予見される。
〈人工知能(Al)〉
AIが人間の指揮官の意思決定を支援するようになる。軍事計画の策定に関し、AIが人間の指揮官に選択肢を示す。偵察機や偵察衛星が入手した画像情報をAIが自動判別することで人間の分析官の事務量を軽減するといった用途での利用はすでに開始されている。
また、サイバー戦やミサイル防衛など、極端に進行速度の速い戦闘局面ではAIが人間の意思決定を全面的に代替する可能性がある。AIがロボット工学と組み合わされた場合には、殺傷型自律無人兵器(LAWS)として完全に人間の介在しない戦闘が実現する。現実と見分けがつかない偽映像などが登場し、情報戦がさらに熾烈(しれつ)さを増す。
〈バイオ技術〉
DNA操作や化学物質によって兵士の肉体的能力や認知能力などを拡張し、筋力や持久力を通常の人間よりもはるかに高めたり、夜間でも目が見えるなどの能力を付与することができるようになる。合成生物学によってより感染性や毒性の強い生物兵器や、敵の兵器やそれらを動かす燃料を分解してしまう新カテゴリーの生物兵器が出現する。一方で兵士の抗体を強化することも可能となる。
〈情報通信技術〉
軍事組織の運用するあらゆる装備品がネットワークによって接続され、戦場におけるモノのインターネット化が実現する。指揮通信統制系統が効率化し、軍事組織は前線における兵士個々人から宇宙空間までの全戦闘領域の情報をリアルタイムで共有しながら、より少数の兵力でも大きな効果を発揮する軍事作戦が可能となる。
〈神経工学〉
兵士の脳同士を直接接続してコミュニケーションをとる。人間の思考を反映して動く兵器などが出現する。また、敵の精神的・身体的能力を低下させ、捕虜の尋問をより効果的に行うことを可能とする。
〈宇宙技術〉
桁違いに安価な宇宙輸送が可能となることで、これまでに例を見ない大型の人工衛星や多数の「衛星コンステレーション」(多数の小型衛星を連携させて情報収集能力を高めるシステム)を軌道上に配備できるようになり、宇宙を用いた偵察、通信、航法能力が飛躍的に拡大する。レーザー迎撃システムが宇宙空間に配備される。他方で、人工衛星を標的とする対衛星攻撃が活発化する。
生活
「軍事対軍事」の力の論理が科学・技術を覆ってしまえば、科学・技術は、人類の生存を脅かす存在になってしまいます。人々の生活を豊かにするという本来の科学・技術の役割が果たせるようデュアルユース(軍民両用)の危険を取り除くための仕組みづくりが求められています。
(おわり)(金子豊弘、小村優、日隈広志が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年12月17日付掲載
未来の戦場では、ロボット工学、人工知能(AI)、バイオ技術、情報通信技術、神経工学、宇宙技術などありとあらゆるものが活用されると。
「軍事対軍事」の力の論理が科学・技術を覆ってしまえば、科学・技術は、人類の生存を脅かす存在に。人々の生活を豊かにするという本来の科学・技術の役割が果たせるようデュアルユース(軍民両用)の危険を取り除くための仕組みづくりが求められます。
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