安保3文書 危険な大転換① 日本発ミサイル戦争も
戦後の安全保障政策を大転換する安保3文書の閣議決定(16日)。岸田文雄首相は「1年以上、丁寧なプロセスを経た」と豪語しますが、大半は密室での議論であり、その内容は国民にほとんど知らされていません。3文書の問題点を明らかにしていきます。
最上位の戦略文書である「国家安全保障戦略」は、今回の3文書を「戦後のわが国の安全保障政策を実践面から大きく転換するものである」と宣言しています。これに関して岸田首相は16日の記者会見で、「平和安全法制によって、法的・理論的には整った。今回の3文書で、実践面からも安全保障体制を強化する」と述べています。集団的自衛権の行使を可能とした2015年の安保法制を実践面で強化し、「戦争国家づくり」の総仕上げを図る考えです。
敵基地攻撃能力 行使に踏み込む
最大の「転換」は、歴代政権が違憲としてきた敵基地攻撃能力(反撃能力)の行使に踏み込んだことです。
【敵基地攻撃能力のポイント】
●理由ミサイル防衛だけでは他国のミサイル脅威に対抗できない
●定義相手領域で有効な反撃を加えるスタンド・オフ防衛能力
●要件安保法制の新「武力行使の3要件」に基づく=日本が攻撃を受けていなくても、集団的自衛権の行使で攻撃可能
●対象「相手の領域」=具体的な目標は明記せず。指揮統制機能も含む(=与党合意)
●着手日本が武力攻撃を受けていなくても、相手国が「着手」すれば攻撃。「着手」したかどうかは総合的に判断(=与党合意)
敵基地攻撃能力とは何か。安保戦略は、「自衛の措置」として、「相手の領域で有効な反撃を加えるスタンド・オフ防衛能力」だと定義し、他国領域を攻撃する能力だとしています。
「防衛力整備計画」では、具体的な、「スタンド・オフ防衛能力」配備計画(表)を示しています。
「スタンド・オフ・ミサイル」関連の主な計画
【国産】
陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾の発射装置
○12式地対艦誘導弾(能力向上型)の量産
○高速滑空弾の開発・量産
○高速滑空弾(能力開発型)の開発・量産
○極超音速誘導弾の開発
【輸入】
○JSM(F35A戦闘機に搭載)の取得
○JASSM(F15戦闘機に搭載)の取得
○トマホーク(潜水艦に搭載?)
潜水艦から発射されるトマホーク(レイセオン社ウェブサイトから)
【その他】
○火薬庫の整備
○試験場の新設
○F15戦闘機の改修
○ミサイル発射型潜水艦の導入
12式地対艦誘導弾の能力向上型(射程を1000キロ以上に延伸)を地上、艦艇、航空機に配備。地上・艦艇発射型は27年度までの運用能力獲得を目指しています。運用部隊は当面、全国に11個中隊を配備する計画です。
さらに、高速滑空弾や極超音速誘導弾といった高性能ミサイルの開発を進めます。
ただ、これらは今後5年間で完成する見通しがないため、米国製の長距離巡航ミサイル・トマホーク(射程1600キロ)の大量購入を検討。F35、F15戦闘機から発射するミサイル(JSM、JASSM)の購入も進めています。
ミサイルを格納する火薬庫や発射試験場を建設。発射地点を秘匿し、効果的な攻撃を行うため、スタンド・オフ・ミサイル発射可能な潜水艦まで導入しようとしています。
「攻撃着手」定義 首相説明できず
これまで日本政府は、自国領域に攻撃が発生した場合にのみ、これを排除するために武力行使する「専守防衛」を基本原則としてきました。この「専守防衛」を大きく踏み越え、まさに日本は周辺国に「ミサイル戦争」を仕掛けようとしています。
しかし、攻撃を仕掛ける「相手の領域」が具体的にどこを指すのか示されておらず、事実上、全域が攻撃対象になります。自民党は相手国の「指揮統制機能」も含まれると解釈。そこには政府機関や軍司令部も当然含まれることになり、全面戦争につながる危険があります。
さらに、政府は実際に攻撃を受けていなくても、「着手」すれば攻撃可能という立場です。
ただ、何をもって「着手」と判断するのか。首相は16日の会見で「着手」の定義を間われ、「いろいろな学説があり難しい問題だ」として説明できませんでした。
相手国から見れば日本が国際法違反の先制攻撃を仕掛けたとみなされます。「反撃能力」は「国民の命と暮らしを守るため」に保有するとしていますが、逆に相手国の報復攻撃を引き起こし、国土の戦場化をもたらします。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年12月18日付掲載
最大の「転換」は、歴代政権が違憲としてきた敵基地攻撃能力(反撃能力)の行使に踏み込んだこと。
12式地対艦誘導弾の能力向上型(射程を1000キロ以上に延伸)を地上、艦艇、航空機に配備。地上・艦艇発射型は27年度までの運用能力獲得を目指しています。運用部隊は当面、全国に11個中隊を配備する計画。
さらに、高速滑空弾や極超音速誘導弾といった高性能ミサイルの開発を進めます。
まさに、日本本国の専守防衛の範囲を超え、周辺国に「ミサイル戦争」を仕掛けるものに。
戦後の安全保障政策を大転換する安保3文書の閣議決定(16日)。岸田文雄首相は「1年以上、丁寧なプロセスを経た」と豪語しますが、大半は密室での議論であり、その内容は国民にほとんど知らされていません。3文書の問題点を明らかにしていきます。
最上位の戦略文書である「国家安全保障戦略」は、今回の3文書を「戦後のわが国の安全保障政策を実践面から大きく転換するものである」と宣言しています。これに関して岸田首相は16日の記者会見で、「平和安全法制によって、法的・理論的には整った。今回の3文書で、実践面からも安全保障体制を強化する」と述べています。集団的自衛権の行使を可能とした2015年の安保法制を実践面で強化し、「戦争国家づくり」の総仕上げを図る考えです。
敵基地攻撃能力 行使に踏み込む
最大の「転換」は、歴代政権が違憲としてきた敵基地攻撃能力(反撃能力)の行使に踏み込んだことです。
【敵基地攻撃能力のポイント】
●理由ミサイル防衛だけでは他国のミサイル脅威に対抗できない
●定義相手領域で有効な反撃を加えるスタンド・オフ防衛能力
●要件安保法制の新「武力行使の3要件」に基づく=日本が攻撃を受けていなくても、集団的自衛権の行使で攻撃可能
●対象「相手の領域」=具体的な目標は明記せず。指揮統制機能も含む(=与党合意)
●着手日本が武力攻撃を受けていなくても、相手国が「着手」すれば攻撃。「着手」したかどうかは総合的に判断(=与党合意)
敵基地攻撃能力とは何か。安保戦略は、「自衛の措置」として、「相手の領域で有効な反撃を加えるスタンド・オフ防衛能力」だと定義し、他国領域を攻撃する能力だとしています。
「防衛力整備計画」では、具体的な、「スタンド・オフ防衛能力」配備計画(表)を示しています。
「スタンド・オフ・ミサイル」関連の主な計画
【国産】
陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾の発射装置
○12式地対艦誘導弾(能力向上型)の量産
○高速滑空弾の開発・量産
○高速滑空弾(能力開発型)の開発・量産
○極超音速誘導弾の開発
【輸入】
○JSM(F35A戦闘機に搭載)の取得
○JASSM(F15戦闘機に搭載)の取得
○トマホーク(潜水艦に搭載?)
潜水艦から発射されるトマホーク(レイセオン社ウェブサイトから)
【その他】
○火薬庫の整備
○試験場の新設
○F15戦闘機の改修
○ミサイル発射型潜水艦の導入
12式地対艦誘導弾の能力向上型(射程を1000キロ以上に延伸)を地上、艦艇、航空機に配備。地上・艦艇発射型は27年度までの運用能力獲得を目指しています。運用部隊は当面、全国に11個中隊を配備する計画です。
さらに、高速滑空弾や極超音速誘導弾といった高性能ミサイルの開発を進めます。
ただ、これらは今後5年間で完成する見通しがないため、米国製の長距離巡航ミサイル・トマホーク(射程1600キロ)の大量購入を検討。F35、F15戦闘機から発射するミサイル(JSM、JASSM)の購入も進めています。
ミサイルを格納する火薬庫や発射試験場を建設。発射地点を秘匿し、効果的な攻撃を行うため、スタンド・オフ・ミサイル発射可能な潜水艦まで導入しようとしています。
「攻撃着手」定義 首相説明できず
これまで日本政府は、自国領域に攻撃が発生した場合にのみ、これを排除するために武力行使する「専守防衛」を基本原則としてきました。この「専守防衛」を大きく踏み越え、まさに日本は周辺国に「ミサイル戦争」を仕掛けようとしています。
しかし、攻撃を仕掛ける「相手の領域」が具体的にどこを指すのか示されておらず、事実上、全域が攻撃対象になります。自民党は相手国の「指揮統制機能」も含まれると解釈。そこには政府機関や軍司令部も当然含まれることになり、全面戦争につながる危険があります。
さらに、政府は実際に攻撃を受けていなくても、「着手」すれば攻撃可能という立場です。
ただ、何をもって「着手」と判断するのか。首相は16日の会見で「着手」の定義を間われ、「いろいろな学説があり難しい問題だ」として説明できませんでした。
相手国から見れば日本が国際法違反の先制攻撃を仕掛けたとみなされます。「反撃能力」は「国民の命と暮らしを守るため」に保有するとしていますが、逆に相手国の報復攻撃を引き起こし、国土の戦場化をもたらします。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年12月18日付掲載
最大の「転換」は、歴代政権が違憲としてきた敵基地攻撃能力(反撃能力)の行使に踏み込んだこと。
12式地対艦誘導弾の能力向上型(射程を1000キロ以上に延伸)を地上、艦艇、航空機に配備。地上・艦艇発射型は27年度までの運用能力獲得を目指しています。運用部隊は当面、全国に11個中隊を配備する計画。
さらに、高速滑空弾や極超音速誘導弾といった高性能ミサイルの開発を進めます。
まさに、日本本国の専守防衛の範囲を超え、周辺国に「ミサイル戦争」を仕掛けるものに。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます