竜宮の玉手箱 はやぶさ２ 砂の物語② 結晶の中に“４６億年前の水”

竜宮の玉手箱　はやぶさ２　砂の物語②　結晶の中に“４６億年前の水”

「ほんの一滴だが大きな意味がある」
小惑星リュウグウの粒子から液体の水を発見した分析チームを率いる中村智樹東北大学教授はこう強調しました。
見つかった液体の水は、結晶の中に閉じ込められた、塩や有機物を含む炭酸水。それも“４６億年前の水”だというのです。


六角板状の結晶内部の小さな穴から液体の水が見つかりました（©ＮＡＳＡ／ＪＳＣ、東北大学）

リュウグウ粒子を構成している大部分は、水の成分（水酸基）を結晶構造の中に含んでいる含水鉱物です。元素の存在量や鉱物の種類などから、かつてリュウグウの元となった天体（母天体）には、岩石とほぼ同じ体積の大量の水があったと考えられています。
中村さんらは、粒子の化学的な特徴や物性などの詳細な分析から得た証拠を元にリュウグウの形成・進化についてシミュレーションを実施。母天体は太陽系形成から約２００万年後、水と二酸化炭素が氷の状態で存在するマイナス２００度以下の極寒の宇宙空間で、固体微粒子や氷が集まって誕生したことをつきとめました。
母天体の内部は、放射性物質の崩壊熱で３００万年ほどかけて５０度まで上昇。解けた水や二酸化炭素と固体微粒子が反応して含水鉱物や炭酸塩鉱物などの形成が進行したことが考えられました。
発見した液体は、この時期に形成された結晶が成長していく過程で取り込まれたもので、まさに４６億年前の炭酸水だとみられています。
母天体にはその後、ほかの天体が衝突し、その岩片が集まってリュウグウが形成されたといいます。
地球の海は、リュウグウ母天体のような水を大量に抱える小天体が宇宙から飛来し原始地球にもたらしたと考えられています。中村さんは「地球の海や有機物の起源に直接関わる証拠を発見できた」と話しました。
（つづく）

「しんぶん赤旗」日刊紙　2023年4月30日付掲載

リュウグウ粒子を構成している大部分は、水の成分（水酸基）を結晶構造の中に含んでいる含水鉱物。元素の存在量や鉱物の種類などから、かつてリュウグウの元となった天体（母天体）には、岩石とほぼ同じ体積の大量の水があったと。
発見した液体は、この時期に形成された結晶が成長していく過程で取り込まれたもので、まさに４６億年前の炭酸水だと。
地球の海は、リュウグウ母天体のような水を大量に抱える小天体が宇宙から飛来し原始地球にもたらしたと考えられています。中村さんは「地球の海や有機物の起源に直接関わる証拠を発見できた」と。