気候危機と小型炉② 安全性検証は不十分
小型原子炉への関心が高まっている背景には、安全への要求が高まったことによる原発建設の長期化や費用の増大があります。原子力産業界などが、初期投資の少ない小型炉へ期待を寄せているのです。
しかし、小型炉は1基当たりの建設費は少なくなりますが、発電量当たりのコストは高くなります。小型モジュール炉(SMR)は、工場でパッケージ製造し、現地で組み立てるため工期短縮とコスト削減が図れるとしていますが、そのためには100基、200基といった大量発注が必要となります。
原発メーカーなどは、「安全性が高い」ことをSMRの売りにしています。舘野淳・元中央大学教授は、「小さいと事故を起こしてもコントロールしやすいとはいえます。しかし、本質的安全が高まったわけではなく、それぞれの原発の安全性の検証は不十分です。また、大規模な自然災害やテロなども考慮する必要があります」と話します。
実用化にはさらにハードルがあります。計画されているSMRの多くが、ウラン濃縮度を5%以上としており、中には高濃度のプルトニウム燃料を利用する計画もあります。核燃料の調達や処理・処分、さらに核拡散防止も課題となります。
原子力規制委員会の更田豊志委員長も「わが国で5%を超える濃縮度の燃料の利用が許されるのか」、「現行の再処理とは.相いれない燃料を使う炉型もある」と指摘。全体像を見て「つじつまの合う議論」が必要と繰り返し発言しています。
(おわり)
お金の無駄
原子力資料情報室の松久保肇・事務局長の話
海外の計画を見ても、商用の小型炉に関しては、仮にすべてが順調に進んだとしても2028年以降に動き始めるという状況です。まだ建設も始まっていません。温暖化対策として期待はできないのです。
日本では、大型の原発を1カ所に集中して立地させていますが、経済的メリットがあるのでそうしてきたわけで、小型炉にあまりメリットはありません。日本の原発産業界は、国内での原発の新設もなく、海外での注文も逃してきて、小型炉に活路を見いだそうとしているのでしょう。しかし、海外でも小型炉に多くの需要は期待できません。
SMR開発を国が支援するというのは、ほぼ死んでいるような産業を補助金で生き延びさせるという話で、お金の無駄遣いです。産業転換によって活路を見いだす方が、産業界にとっても有意義なはずです。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月4日付掲載
実用化にはさらにハードルが。計画されているSMRの多くが、ウラン濃縮度を5%以上としており、中には高濃度のプルトニウム燃料を利用する計画もあります。核燃料の調達や処理・処分、さらに核拡散防止も課題となる。
SMR開発を国が支援するというのは、ほぼ死んでいるような産業を補助金で生き延びさせるという話で、お金の無駄遣いです。産業転換によって活路を見いだす方が、産業界にとっても有意義なはず。
小型原子炉への関心が高まっている背景には、安全への要求が高まったことによる原発建設の長期化や費用の増大があります。原子力産業界などが、初期投資の少ない小型炉へ期待を寄せているのです。
しかし、小型炉は1基当たりの建設費は少なくなりますが、発電量当たりのコストは高くなります。小型モジュール炉(SMR)は、工場でパッケージ製造し、現地で組み立てるため工期短縮とコスト削減が図れるとしていますが、そのためには100基、200基といった大量発注が必要となります。
原発メーカーなどは、「安全性が高い」ことをSMRの売りにしています。舘野淳・元中央大学教授は、「小さいと事故を起こしてもコントロールしやすいとはいえます。しかし、本質的安全が高まったわけではなく、それぞれの原発の安全性の検証は不十分です。また、大規模な自然災害やテロなども考慮する必要があります」と話します。
実用化にはさらにハードルがあります。計画されているSMRの多くが、ウラン濃縮度を5%以上としており、中には高濃度のプルトニウム燃料を利用する計画もあります。核燃料の調達や処理・処分、さらに核拡散防止も課題となります。
原子力規制委員会の更田豊志委員長も「わが国で5%を超える濃縮度の燃料の利用が許されるのか」、「現行の再処理とは.相いれない燃料を使う炉型もある」と指摘。全体像を見て「つじつまの合う議論」が必要と繰り返し発言しています。
(おわり)
お金の無駄
原子力資料情報室の松久保肇・事務局長の話
海外の計画を見ても、商用の小型炉に関しては、仮にすべてが順調に進んだとしても2028年以降に動き始めるという状況です。まだ建設も始まっていません。温暖化対策として期待はできないのです。
日本では、大型の原発を1カ所に集中して立地させていますが、経済的メリットがあるのでそうしてきたわけで、小型炉にあまりメリットはありません。日本の原発産業界は、国内での原発の新設もなく、海外での注文も逃してきて、小型炉に活路を見いだそうとしているのでしょう。しかし、海外でも小型炉に多くの需要は期待できません。
SMR開発を国が支援するというのは、ほぼ死んでいるような産業を補助金で生き延びさせるという話で、お金の無駄遣いです。産業転換によって活路を見いだす方が、産業界にとっても有意義なはずです。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月4日付掲載
実用化にはさらにハードルが。計画されているSMRの多くが、ウラン濃縮度を5%以上としており、中には高濃度のプルトニウム燃料を利用する計画もあります。核燃料の調達や処理・処分、さらに核拡散防止も課題となる。
SMR開発を国が支援するというのは、ほぼ死んでいるような産業を補助金で生き延びさせるという話で、お金の無駄遣いです。産業転換によって活路を見いだす方が、産業界にとっても有意義なはず。
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