気候危機と小型炉① 「この10年」に間に合わず
国会では、日本維新の会の議員が「小型原子炉」の検討を迫ると、岸田文雄首相が「小型炉や高速炉をはじめとする革新原子力の開発などの取り組みを着実に進めたい」と呼応。国民民主党の玉木雄一郎代表も小型炉や高速炉の「実証実験に取り組むべきだ」と主張するなど、小型炉開発を求める議論があります。脱炭素社会のためと言いますが、本当でしょうか―。(松沼環)
昨年だけでも、米国GE日立ニュークリアエナジーが、カナダで進められている小型炉を受注し、米国ニュースケール社がアイダホ州で開発を目指す小型炉事業にIHIと日揮が参画といった小型原子炉に関するニュースが相次ぎました。
小型モジュール炉(SMR)とは、一般に電気出力30万キロワット以下で、パッケージ(モジュール)で製造されている原子炉のこと。
ニュースケール社が開発を進めるSMRの概要=資源エネルギー庁資料から
政府が昨年決定した第6次エネルギー基本計画は、2030年までに高速炉開発の着実な推進、小型モジュール炉(SMR)技術の実証を進めるとしています。22年度予算案には、高速炉やSMRの技術開発に43・5億円が盛り込まれています。
SMRとは、一般に電気出力30万キロワット以下で、パッケージ(モジュール)で製造されている原子炉のこと。小型炉の一種です。さまざまなタイプがあり、国際原子力機関(IAEA)の資料によれば70種類以上が提案されています。ほとんどが開発中。米国、英国、カナダでは政府からの多額の援助を受け小型炉の開発が進められています。
しかし、いま求められているのは、世界の気温上昇を産業革命以前と比べて1・5度に抑えるため、温室効果ガスの排出を30年までに10年比で45%削減し、50年ごろまでに実質ゼロにすることです。
昨年11月の国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、「この10年が徹底的に重要」だとして、この10年に対策を加速する必要があると強調しています。
しかし、米原子力規制委員会の設計認証を得たニュースケール社のSMR計画でも運転開始予定は29年です。実現のめどや、時期も不確実なものに依存するのは、再生可能エネルギーをはじめ既存の温暖化対策普及を先送りすることになります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月3日付掲載
米原子力規制委員会の設計認証を得たニュースケール社のSMR計画でも運転開始予定は29年です。実現のめどや、時期も不確実なものに依存するのは、再生可能エネルギーをはじめ既存の温暖化対策普及を先送りすることに。
国会では、日本維新の会の議員が「小型原子炉」の検討を迫ると、岸田文雄首相が「小型炉や高速炉をはじめとする革新原子力の開発などの取り組みを着実に進めたい」と呼応。国民民主党の玉木雄一郎代表も小型炉や高速炉の「実証実験に取り組むべきだ」と主張するなど、小型炉開発を求める議論があります。脱炭素社会のためと言いますが、本当でしょうか―。(松沼環)
昨年だけでも、米国GE日立ニュークリアエナジーが、カナダで進められている小型炉を受注し、米国ニュースケール社がアイダホ州で開発を目指す小型炉事業にIHIと日揮が参画といった小型原子炉に関するニュースが相次ぎました。
小型モジュール炉(SMR)とは、一般に電気出力30万キロワット以下で、パッケージ(モジュール)で製造されている原子炉のこと。
ニュースケール社が開発を進めるSMRの概要=資源エネルギー庁資料から
政府が昨年決定した第6次エネルギー基本計画は、2030年までに高速炉開発の着実な推進、小型モジュール炉(SMR)技術の実証を進めるとしています。22年度予算案には、高速炉やSMRの技術開発に43・5億円が盛り込まれています。
SMRとは、一般に電気出力30万キロワット以下で、パッケージ(モジュール)で製造されている原子炉のこと。小型炉の一種です。さまざまなタイプがあり、国際原子力機関(IAEA)の資料によれば70種類以上が提案されています。ほとんどが開発中。米国、英国、カナダでは政府からの多額の援助を受け小型炉の開発が進められています。
しかし、いま求められているのは、世界の気温上昇を産業革命以前と比べて1・5度に抑えるため、温室効果ガスの排出を30年までに10年比で45%削減し、50年ごろまでに実質ゼロにすることです。
昨年11月の国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、「この10年が徹底的に重要」だとして、この10年に対策を加速する必要があると強調しています。
しかし、米原子力規制委員会の設計認証を得たニュースケール社のSMR計画でも運転開始予定は29年です。実現のめどや、時期も不確実なものに依存するのは、再生可能エネルギーをはじめ既存の温暖化対策普及を先送りすることになります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月3日付掲載
米原子力規制委員会の設計認証を得たニュースケール社のSMR計画でも運転開始予定は29年です。実現のめどや、時期も不確実なものに依存するのは、再生可能エネルギーをはじめ既存の温暖化対策普及を先送りすることに。
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