きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

2021年経済の潮流② 解雇事由の危険な罠

2021-01-16 07:54:25 | 経済・産業・中小企業対策など
2021年経済の潮流② 解雇事由の危険な罠
桜美林大学教授 藤田実さん

コロナの世界的流行(パンデミック)は雇用の分極化を浮き彫りにしました。
非正規雇用労働者は営業の自粛や時短要請で雇い止めされ、住む場所だけでなく、食べ物にも事欠くようになり、雇用の不安定さが鮮明となりました。
また、国民の命と健康を守る医療や介護労働者、生活必需品などの販売に従事する商業従事者、物流を担う運輸労働者などの「エッセンシャルワーカー」はコロナ下でも国民生活の維持のために感染の危険を冒しても勤務し続けています。同様に、感染の危険があるにもかかわらず、満員電車で通勤を余儀なくされた労働者もいました。感染のリスクを負いながらも国民の健康と生活を維持するために出勤せざるを得ない労働者が多数います。
しかし、これらの中には売上高や収入の減少により減給されたり雇い止めされたりした労働者も存在します。リスクを負いながら仕事に従事しているのに日本社会はその働きに報いていません。



パソコンに向かう女性

システム再編
他方で事務・管理労働者、IT(情報技術)などの専門技術者はテレワーク(在宅勤務など)が推奨され、自宅でリモートワーク(遠隔勤務)に従事しました。リモートワークに関しては脱大都市、地方移住などの事例が多く報道されるとともに、ポストコロナ(コロナ後の世界)においても定着するとみなされています。
経団連など財界は、リモートワークの定着をにらんで雇用システムの再編に乗り出しています。リモートワークに関し、生産性が下がったという調査結果が発表され、国際比較でも生産性が上がったという回答は欧米や中国・韓国と比べても低いという調査結果が報道されています。
こうした調査結果を受け、経団連は目標の明確化による成果発揮とその前提としての労働者一人ひとりの職務・職責の明確化が求められるとしています。これは「ジョブ型雇用」に基づく成果主義の徹底を目指すということでもあります。実際に、日立製作所や富士通などIT企業は、ジョブ型雇用への転換を打ち出しています。
では、職務を明確にするジョブ型雇用は労働者にどんな状況をもたらすのでしょうか。
ジョブ型雇用は、担当するジョブ(職務)を明確にし、そのジョブに担当する能力のある労働者を充て、ジョブに応じた賃金を支払うというものです。したがってジョブの成果発揮度合いに応じて賃金を支払うということにはなりません。あくまで担当能力のある労働者がそのジョブを担うということなので、ジョブの発揮度合いを評価するということはあり得ないというべきです。

安定保障せず
またジョブ型雇用では、日本企業が行うような自由な配置転換や評価を理由にしたリストラは制限されるとされますが、それは必ずしも雇用の安定を保障しません。ジョブに応じて採用されるので、担当するジョブが事業の再編で無くなれば解雇されることになります。従来は工場閉鎖時などに、労働者は転勤や配置転換で雇用が確保されてきましたが、ジョブ型雇用ではそうした対応は必ずしも必要とされません。ある意味では、ジョブ型雇用を機能させるために解雇規制を緩和し、ジョブがなくなれば解雇も自由というルールを定着させる必要があります。日立製作所や富士通などのIT企業が導入に熱心なのは、技術革新が激しく、事業構造の再編が必要とされる業種だからです。ジョブ型雇用システムを導入する狙いは、労働者の入れ替えを自由にし、事業構造の転換に対応できるようにするためとみられます。
財界は、コロナ・パンデミックを奇貨にして、リモートワークで生産性を上げるためには、ジョブの明確化が必要であるということを理由にして、ジョブ型雇用を導入しようとしています。しかし、そこには解雇自由な世界という危険な罠(わな)が隠れていることに注意すべきです。
(この項おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年1月14日付掲載


新型コロナのもとで、テレワークが普及。それに便乗する形で「ジョブ型雇用」も持ち込まれようとしています。
担当するジョブが無くなれば解雇も自由という危険な働かせ方です。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿