世界経済の構造転換④ 日本の貿易 中国に依存
群馬大学名誉教授 山田博文さん
原材料・資源の乏しい日本は戦後、最大の貿易相手国だった米国に依存することで、世界第2位の経済大国になりました。しかし21世紀に入ると、世界経済は構造転換し、日本の最大貿易相手国も米国から中国に交代しました。日本の貿易相手国の構造は根本的に変化しました。
米国わずか14%
日本の経済成長を支える貿易相手国は、2004年以来、米国に代わって中国(中国+香港)が最大となりました。21年現在の日本の輸出入総額168兆円のうち、中国はその25・2%を占めますが、米国はわずか14・1%です。ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国ですら14・9%に達し、米国を追い越しています。さらに、台湾(5・8%)、韓国(5・5%)も主要な貿易相手になりました。(図)
このように、日本の輸出入総額の過半(51・4%)は、アジアの主要国に依存する時代になりました。欧米に土砂降り輸出し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」との賛辞をあびた世界一の貿易黒字大国の日本はもはやありません。日本が「先進国」としての経済的地位を維持したいのなら、対外経済関係は欧米から成長著しいアジアにシフトすること以外にありません。それが21世紀の日本が生き残る道といえるでしょう。
それにもかかわらず、自国の最大の貿易相手国を「仮想敵国」に見立て、「台湾有事」に参戦するなど、常識的には理解不能です。そもそも米国の最大の貿易相手国も中国であり、貿易総額の20%(日本は5%)を占めますから、米中間の戦争もありえないでしょう。やれば双方が壊滅的な打撃を受けるからです。むしろ、米中貿易は年々増大し、昨年は過去最高(約7600億ドル)を記録しています。
奇妙な政冷経熱
米日対中国の政権間の対立が表面化していますが、この3カ国の経済界はますます相互依存を深め、貿易額を増やしています。「政冷経熱」の奇妙な事態は、それぞれの政権の内部事情、すなわちライバル国を勇ましくたたき、外に「敵」をつくることで内部を固め、政権の持続を図ろうとする外交戦略のように思われてなりません。迷惑するのは、原材料不足と物価高に直撃される米中日3カ国の企業と国民です。
観光庁によれば、コロナ禍前の19年の訪日外国人数は3188万人に達し、彼らのインバウンド消費額は4兆8135億円でした。賃金や年金の実質削減で、日本の国内消費は長期停滞状況にあります。インバウンド消費は、とくに生活雑貨・観光・サービス産業など、停滞を余儀なくされてきた地域経済の活性化に貢献しました。
この貴重なインバウンド消費をけん引するのはアジアからの訪日客です。その最大の中国からの959万人は、1兆7704億円(全体の36・8%)を消費しました。他方、日本に兵器を爆買いさせる米国はどうかというと、インバウンド消費に貢献する人数はわずか172万人(3228億円、全体の6・7%)で、日本への貢献度は中国の5分の1以下です。
テレビで大谷選手のホームランやハリウッド映画に慣れ親しむ私たちは、足元の経済で構造的な変化が起きていることに、もっと目を向ける必要があるようです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月1日付掲載
日本の経済成長を支える貿易相手国は、2004年以来、米国に代わって中国(中国+香港)が最大となりました。21年現在の日本の輸出入総額168兆円のうち、中国はその25・2%を占めますが、米国はわずか14・1%。
「政冷経熱」の奇妙な事態は、それぞれの政権の内部事情、すなわちライバル国を勇ましくたたき、外に「敵」をつくることで内部を固め、政権の持続を図ろうとする外交戦略のように思われてなりません。
群馬大学名誉教授 山田博文さん
原材料・資源の乏しい日本は戦後、最大の貿易相手国だった米国に依存することで、世界第2位の経済大国になりました。しかし21世紀に入ると、世界経済は構造転換し、日本の最大貿易相手国も米国から中国に交代しました。日本の貿易相手国の構造は根本的に変化しました。
米国わずか14%
日本の経済成長を支える貿易相手国は、2004年以来、米国に代わって中国(中国+香港)が最大となりました。21年現在の日本の輸出入総額168兆円のうち、中国はその25・2%を占めますが、米国はわずか14・1%です。ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国ですら14・9%に達し、米国を追い越しています。さらに、台湾(5・8%)、韓国(5・5%)も主要な貿易相手になりました。(図)
このように、日本の輸出入総額の過半(51・4%)は、アジアの主要国に依存する時代になりました。欧米に土砂降り輸出し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」との賛辞をあびた世界一の貿易黒字大国の日本はもはやありません。日本が「先進国」としての経済的地位を維持したいのなら、対外経済関係は欧米から成長著しいアジアにシフトすること以外にありません。それが21世紀の日本が生き残る道といえるでしょう。
それにもかかわらず、自国の最大の貿易相手国を「仮想敵国」に見立て、「台湾有事」に参戦するなど、常識的には理解不能です。そもそも米国の最大の貿易相手国も中国であり、貿易総額の20%(日本は5%)を占めますから、米中間の戦争もありえないでしょう。やれば双方が壊滅的な打撃を受けるからです。むしろ、米中貿易は年々増大し、昨年は過去最高(約7600億ドル)を記録しています。
奇妙な政冷経熱
米日対中国の政権間の対立が表面化していますが、この3カ国の経済界はますます相互依存を深め、貿易額を増やしています。「政冷経熱」の奇妙な事態は、それぞれの政権の内部事情、すなわちライバル国を勇ましくたたき、外に「敵」をつくることで内部を固め、政権の持続を図ろうとする外交戦略のように思われてなりません。迷惑するのは、原材料不足と物価高に直撃される米中日3カ国の企業と国民です。
観光庁によれば、コロナ禍前の19年の訪日外国人数は3188万人に達し、彼らのインバウンド消費額は4兆8135億円でした。賃金や年金の実質削減で、日本の国内消費は長期停滞状況にあります。インバウンド消費は、とくに生活雑貨・観光・サービス産業など、停滞を余儀なくされてきた地域経済の活性化に貢献しました。
この貴重なインバウンド消費をけん引するのはアジアからの訪日客です。その最大の中国からの959万人は、1兆7704億円(全体の36・8%)を消費しました。他方、日本に兵器を爆買いさせる米国はどうかというと、インバウンド消費に貢献する人数はわずか172万人(3228億円、全体の6・7%)で、日本への貢献度は中国の5分の1以下です。
テレビで大谷選手のホームランやハリウッド映画に慣れ親しむ私たちは、足元の経済で構造的な変化が起きていることに、もっと目を向ける必要があるようです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月1日付掲載
日本の経済成長を支える貿易相手国は、2004年以来、米国に代わって中国(中国+香港)が最大となりました。21年現在の日本の輸出入総額168兆円のうち、中国はその25・2%を占めますが、米国はわずか14・1%。
「政冷経熱」の奇妙な事態は、それぞれの政権の内部事情、すなわちライバル国を勇ましくたたき、外に「敵」をつくることで内部を固め、政権の持続を図ろうとする外交戦略のように思われてなりません。
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