けいざい四季報2023Ⅱ ① 世界経済 物価と景気の両にらみ
ポイント
① 米国が追加利上げを見送り、引き締めの影響見極め。年内2回の利上げを示唆
② 欧州中銀が0・25%の利上げ。物価上昇圧力なお強く、金融の引き締めを継続
③ 中国は政策金利0・10%引き下げ。景気減速で。10カ月ぶり利上げでテコ入れ
米欧は、インフレ抑制のため利上げを実施する一方、引き締めの景気への影響も見極めようとしています。他方、景気が減速の中国は、10カ月ぶりの利下げを実施しました。
利上げ見送り
米連邦準備制度理事会(FRB)は6月14日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、追加利上げの見送りを決めました。政策の現状維持は11会合ぶり。
政策金利は年5~5・25%を維持。同時に公表した会合参加者の政策金利見通し(中央値)は年5・5~5・75%と、年内に通常の0・25%幅であと2回利上げするシナリオとなっています。
FRBは約40年ぶりの高インフレを封じ込めるため、昨年3月から合計5%の大幅利上げを実施。5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比4・0%上昇と、11カ月連続で上昇が鈍化しました。
他方、急速な利上げで、経営環境が悪化したシリコンバレー銀行など3行が相次いで経営破綻。銀行の融資基準が厳しくなったことも景気にブレーキをかける恐れがあります。いったん利上げを休止し、景気への影響を見極め、物価と景気の両にらみで、追加引き締めのタイミングを慎重に探る構えです。
定例理事会の後、記者会見するラガルド欧州中銀総裁=6月15日、フランクフルト(ロイター)
引き締め継続
欧州中央銀行(ECB)は6月15日の定例理事会で、政策金利を0・25%引き上げました。利上げは昨年7月以降8会合連続。インフレ率は鈍化しているものの、物価上昇圧力は依然強いとして、金融の引き締めを継続。ただ、前回の5月会合では、景気への影響を配慮して、利上げ幅を0・5%から0・25%へ縮小しています。
民間銀行がECBに資金を預ける際に適用する中銀預入金利は3・50%と、2001年以来22年ぶりの高水準になります。主要政策金利は4・00%に上昇します。
ラガルドECB総裁は、経済指標に大きな変更がない限り「7月に利上げを継続する可能性は高い」と述べています。
欧州連合(EU)統計局が6月16日発表した5月のユーロ圏消費者物価指数(確定値)は前年同月比6・1%上昇で、速報値からは変わらず。前月の7・0%上昇からは鈍化しましたが、なお高い水準です。
世界経済の主な出来事(4~6月)
テコ入れ図る
中国人民銀行(中央銀行)は6月20日、事実上の政策金利である最優遇貸出金利(LPR)を0・10%引き下げました。利下げは昨年8月以来10カ月ぶりで、現在の仕組みが始まった2019年以来最低となりました。
新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策が終了したものの、景気は減速。金融緩和でテコ入れを図ります。
国家統計局が5月31日発表した5月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は48・8、景気の拡大・縮小の分かれ目の50を2カ月連続で下回りました。
税関総署が6月7日発表した5月の貿易統計によると、前年同月比で輸出は7・5%減少で、3カ月ぶりのマイナス。輸入も4・5%減と、3カ月連続で前年を下回りました。
5月の都市部の失業率は5・2%と4月と同水準。しかし、16~24歳の若者は20・8%と、4月の20・4%から悪化し、最悪を更新しました。不動産市場も冷え込んでいます。(つづく)(4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年6月28日付掲載
FRBは約40年ぶりの高インフレを封じ込めるため、昨年3月から合計5%の大幅利上げを実施。5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比4・0%上昇と、11カ月連続で上昇が鈍化。
欧州中央銀行(ECB)は6月15日の定例理事会で、政策金利を0・25%引き上げ。利上げは昨年7月以降8会合連続。インフレ率は鈍化しているものの、物価上昇圧力は依然強いとして、金融の引き締めを継続。ただ、前回の5月会合では、景気への影響を配慮して、利上げ幅を0・5%から0・25%へ縮小。
アメリカも欧州も、独自の金融政策で物価安定へ努力。
ポイント
① 米国が追加利上げを見送り、引き締めの影響見極め。年内2回の利上げを示唆
② 欧州中銀が0・25%の利上げ。物価上昇圧力なお強く、金融の引き締めを継続
③ 中国は政策金利0・10%引き下げ。景気減速で。10カ月ぶり利上げでテコ入れ
米欧は、インフレ抑制のため利上げを実施する一方、引き締めの景気への影響も見極めようとしています。他方、景気が減速の中国は、10カ月ぶりの利下げを実施しました。
利上げ見送り
米連邦準備制度理事会(FRB)は6月14日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、追加利上げの見送りを決めました。政策の現状維持は11会合ぶり。
政策金利は年5~5・25%を維持。同時に公表した会合参加者の政策金利見通し(中央値)は年5・5~5・75%と、年内に通常の0・25%幅であと2回利上げするシナリオとなっています。
FRBは約40年ぶりの高インフレを封じ込めるため、昨年3月から合計5%の大幅利上げを実施。5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比4・0%上昇と、11カ月連続で上昇が鈍化しました。
他方、急速な利上げで、経営環境が悪化したシリコンバレー銀行など3行が相次いで経営破綻。銀行の融資基準が厳しくなったことも景気にブレーキをかける恐れがあります。いったん利上げを休止し、景気への影響を見極め、物価と景気の両にらみで、追加引き締めのタイミングを慎重に探る構えです。
定例理事会の後、記者会見するラガルド欧州中銀総裁=6月15日、フランクフルト(ロイター)
引き締め継続
欧州中央銀行(ECB)は6月15日の定例理事会で、政策金利を0・25%引き上げました。利上げは昨年7月以降8会合連続。インフレ率は鈍化しているものの、物価上昇圧力は依然強いとして、金融の引き締めを継続。ただ、前回の5月会合では、景気への影響を配慮して、利上げ幅を0・5%から0・25%へ縮小しています。
民間銀行がECBに資金を預ける際に適用する中銀預入金利は3・50%と、2001年以来22年ぶりの高水準になります。主要政策金利は4・00%に上昇します。
ラガルドECB総裁は、経済指標に大きな変更がない限り「7月に利上げを継続する可能性は高い」と述べています。
欧州連合(EU)統計局が6月16日発表した5月のユーロ圏消費者物価指数(確定値)は前年同月比6・1%上昇で、速報値からは変わらず。前月の7・0%上昇からは鈍化しましたが、なお高い水準です。
世界経済の主な出来事(4~6月)
4/28 | 米FRBがシリコンバレー銀に対する監督・規制検証結果公表 |
5/1 | 米ファースト銀が経営破綻。シリコンバレー銀以来3行目 |
5/3 | 米FRBが0.25%の利上げ。利上げは10会合連続 |
5/4 | 欧州中銀が0.25%の利上げ。上げ幅を0.5%から縮小 |
5/31 | 5月の中国製造業購買担当者景況指数発表。2カ月連続50割れ |
6/7 | 5月の中国貿易統計発表。輸出7.5%減、輸入4.5%減 |
6/9 | 5月の中国消費者物価指数を発表。前年同月比0.2%上昇 |
6/13 | 5月の米消費者物価指数発表。前年同月比4.0%上昇 |
6/13 | 米FRBが金利を据え置き。政策の現状維持は11会合ぶり |
6/15 | 欧州中銀が0.25%の利上げ。利上げは8会合連続 |
6/16 | 5月のユーロ圏消費者物価指数発表。前年同月比6.1%上昇 |
6/20 | 中国人民銀行が実質的な政策金利を0.10%引き下げ |
テコ入れ図る
中国人民銀行(中央銀行)は6月20日、事実上の政策金利である最優遇貸出金利(LPR)を0・10%引き下げました。利下げは昨年8月以来10カ月ぶりで、現在の仕組みが始まった2019年以来最低となりました。
新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策が終了したものの、景気は減速。金融緩和でテコ入れを図ります。
国家統計局が5月31日発表した5月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は48・8、景気の拡大・縮小の分かれ目の50を2カ月連続で下回りました。
税関総署が6月7日発表した5月の貿易統計によると、前年同月比で輸出は7・5%減少で、3カ月ぶりのマイナス。輸入も4・5%減と、3カ月連続で前年を下回りました。
5月の都市部の失業率は5・2%と4月と同水準。しかし、16~24歳の若者は20・8%と、4月の20・4%から悪化し、最悪を更新しました。不動産市場も冷え込んでいます。(つづく)(4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年6月28日付掲載
FRBは約40年ぶりの高インフレを封じ込めるため、昨年3月から合計5%の大幅利上げを実施。5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比4・0%上昇と、11カ月連続で上昇が鈍化。
欧州中央銀行(ECB)は6月15日の定例理事会で、政策金利を0・25%引き上げ。利上げは昨年7月以降8会合連続。インフレ率は鈍化しているものの、物価上昇圧力は依然強いとして、金融の引き締めを継続。ただ、前回の5月会合では、景気への影響を配慮して、利上げ幅を0・5%から0・25%へ縮小。
アメリカも欧州も、独自の金融政策で物価安定へ努力。
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