2023年度予算案の焦点② 農林水産 危機的状況に即応策なし
2023年度の農林水産関係予算案は、22年度当初予算比94億円減の2兆2683億円です。うち、公共事業費が3億円増の6983億円、非公共事業費が97億円減の1兆5700億円です。また、林野関係が81億円増の3057億円、水産関係が9億円減の1919億円です。
新型コロナウイルスの大流行やウクライナ危機などの影響で、世界の食料不安が顕在化したことを受け、「食料安全保障の確立と農林水産業の持続可能な成長の推進」を掲げてはいます。しかし、従来の施策を踏襲しているだけで、内実が伴っていません。食料安全保障を掲げながら、38%に低迷する食料自給率の向上への本格的取り組みがありません。畜産・酪農や米作の危機的な現状に対しても、即応する施策がみられません。
窮状打開に遠く
畜産・酪農の生産基盤の強化の一環で、畜産・酪農経営安定対策に2265億円を計上しました。22年度当初比31億円の減額です。従来通り所要額を措置したとしていますが、国際価格の上昇や円安の影響などによる資材や飼料の急騰で従来にない困難に見舞われている生産現場にとって、窮状の打開にはほど遠い内容です。なお、飼料穀物備蓄・流通合理化事業には22年度と同額の18億円を計上しました。
新型コロナウイルス禍などによる外食需要の落ち込みで米価が暴落し、食用米からの大規模な転作が求められています。その中で、水田を活用して作付けする麦、大豆、米粉用米などを支援する水田活用直接支払い交付金に2918億円を計上しました。22年度当初比132億円の減額です。減額分のうち、22億円を畑地化促進助成へ、110億円をコメ新市場開拓促進事業へ振り向けました。なお、飼料用米への転作は専用品種への特化を狙っており、一般品種については支援単価を24年度から段階的に引き下げる方向です。
輸出戦略109億円
30年までに5兆円目標の実現を目指す農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略の実施には、22年度当初比1億円増の109億円を計上しました。海外での販売力の強化に1億円減の23億円、輸出産地・事業者育成・展開に同額の7億円、知的財産の管理・保護と海外流出の防止に2億円増の5億円を充てています。
政府は22年12月末、食料安全保障強化政策大綱を決定しました。関連予算の財源は、毎年の予算編成過程で確保するとしました。ただし、23年度予算案には間に合っていません。政策大綱はまた、政府の農政を方向付ける食料・農業・農村基本法の改定案を23年度中に国会へ提出するとし、検討作業を急ぐ意向を示しました。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年1月20日付掲載
ウクライナ侵略をはじめ、世界的な食糧危機が危ぶまれる中、日本の食糧自給率をあげることは喫緊の課題。
それに対する予算はあまりにも不十分です。
円安のもと、農産物輸入額の高騰が続いています。輸出戦略などする前に、もっと足元を見ないといけないよ。
2023年度の農林水産関係予算案は、22年度当初予算比94億円減の2兆2683億円です。うち、公共事業費が3億円増の6983億円、非公共事業費が97億円減の1兆5700億円です。また、林野関係が81億円増の3057億円、水産関係が9億円減の1919億円です。
新型コロナウイルスの大流行やウクライナ危機などの影響で、世界の食料不安が顕在化したことを受け、「食料安全保障の確立と農林水産業の持続可能な成長の推進」を掲げてはいます。しかし、従来の施策を踏襲しているだけで、内実が伴っていません。食料安全保障を掲げながら、38%に低迷する食料自給率の向上への本格的取り組みがありません。畜産・酪農や米作の危機的な現状に対しても、即応する施策がみられません。
窮状打開に遠く
畜産・酪農の生産基盤の強化の一環で、畜産・酪農経営安定対策に2265億円を計上しました。22年度当初比31億円の減額です。従来通り所要額を措置したとしていますが、国際価格の上昇や円安の影響などによる資材や飼料の急騰で従来にない困難に見舞われている生産現場にとって、窮状の打開にはほど遠い内容です。なお、飼料穀物備蓄・流通合理化事業には22年度と同額の18億円を計上しました。
新型コロナウイルス禍などによる外食需要の落ち込みで米価が暴落し、食用米からの大規模な転作が求められています。その中で、水田を活用して作付けする麦、大豆、米粉用米などを支援する水田活用直接支払い交付金に2918億円を計上しました。22年度当初比132億円の減額です。減額分のうち、22億円を畑地化促進助成へ、110億円をコメ新市場開拓促進事業へ振り向けました。なお、飼料用米への転作は専用品種への特化を狙っており、一般品種については支援単価を24年度から段階的に引き下げる方向です。
輸出戦略109億円
30年までに5兆円目標の実現を目指す農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略の実施には、22年度当初比1億円増の109億円を計上しました。海外での販売力の強化に1億円減の23億円、輸出産地・事業者育成・展開に同額の7億円、知的財産の管理・保護と海外流出の防止に2億円増の5億円を充てています。
政府は22年12月末、食料安全保障強化政策大綱を決定しました。関連予算の財源は、毎年の予算編成過程で確保するとしました。ただし、23年度予算案には間に合っていません。政策大綱はまた、政府の農政を方向付ける食料・農業・農村基本法の改定案を23年度中に国会へ提出するとし、検討作業を急ぐ意向を示しました。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年1月20日付掲載
ウクライナ侵略をはじめ、世界的な食糧危機が危ぶまれる中、日本の食糧自給率をあげることは喫緊の課題。
それに対する予算はあまりにも不十分です。
円安のもと、農産物輸入額の高騰が続いています。輸出戦略などする前に、もっと足元を見ないといけないよ。
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