「雇用によらない働き方」を問う③ 誤分類脱し均等待遇を
龍谷大学名誉教授 脇田滋さんに聞く
政府は安倍内閣から「雇用によらない働き方」を追認・拡大する動きを強めています。
2020年3月成立の改正高年齢者雇用安定法は、65~70歳の就業確保措置の一つとして、委託契約を盛り込みました。
高齢者流入狙う
増加する高齢者を個人請負形式で、インターネットを介する「ギグワーク」労働市場に流入させることが目的です。健康・安全の保護を欠き、健康悪化や労災の発生が心配されます。
21年3月の「フリーランス・ガイドライン」は、働く人が保険料を全額負担する「労災保険特別加入」職種を拡大するだけです。実態は労働者と変わりがないのに個人請負とする、違法な「誤分類」を政府が容認・推進するものです。「誤分類」の考え方や「法的推定」による立証責任の転換など、労働者としての権利保障を拡大する視点は見られません。
国際労働機関(ILO)や欧州連合(EU)も企業に労働法令を順守させるため、「誤分類」規制を重視しています。しかし日本では、政府が法違反を厳しく取り締まらない姿勢が際立っています。その結果、過労死をもたらす長時間労働やハラスメントがまん延し、雇用社会の劣化につながってきました。こうした状況の改善こそが、日本の政府・労働行政に課せられた緊急の課題です。
「労働者概念」については、違法な「誤分類」をなくすために、1985年労基法研究会報告の枠にとらわれず、ILOの2006年勧告が示す判定基準や「法的推定」を具体化した立法措置が必要です。
東電系列ワットラインによる請負労働者の解雇・契約打ち切り撤回を求める全労連・全国一般の人たち
団結権保障こそ
ILOや欧州諸国は個人請負形式の自営業者にも、集団的労使関係法(労働組合法など)に基づく団結活動の権利を広く認めています。労働組合などの団体を結成して、自らの要求を掲げて使用者・使用者団体と交渉することは、不可欠の権利だと考えられているのです。
日本では、非正規雇用に対する差別処遇が、短期・無期、扶養・被扶養、残業・配転の有無などの口実で正当化され、立法・行政・裁判でも広く認められてきました。
しかし、EUではパート、有期雇用、派遣の三つの非典型労働について、それぞれ「非差別」を明示する指令を定めました。均等待遇の世界的な流れのなかで日本でも18年、格差を規制し、均等・均衡待遇を義務づける法改正がありました。
「雇用によらない働き方」の拡大は、この均等待遇について責任回避の抜け道を企業に開くものです。働く人の権利実現のためには、「雇用によらない働き方」ではなく、違法を許さないことを示す「誤分類」という用語・考え方を広めることが必要です。
非正規雇用はもちろん、「誤分類」された就労者も「労働者」として雇用と権利を広く保障することが重要です。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年11月13日付掲載
高齢者の労働にも個人請負形式で、インターネットを介する「ギグワーク」労働市場の流入が行われつつあります。
EUではパート、有期雇用、派遣の三つの非典型労働について、それぞれ「非差別」を明示する指令を定めました。均等待遇の世界的な流れのなかで日本でも18年、格差を規制し、均等・均衡待遇を義務づける法改正が。
働く人の権利実現のためには、「雇用によらない働き方」ではなく、違法を許さないことを示す「誤分類」という用語・考え方を広めることが必要。
龍谷大学名誉教授 脇田滋さんに聞く
政府は安倍内閣から「雇用によらない働き方」を追認・拡大する動きを強めています。
2020年3月成立の改正高年齢者雇用安定法は、65~70歳の就業確保措置の一つとして、委託契約を盛り込みました。
高齢者流入狙う
増加する高齢者を個人請負形式で、インターネットを介する「ギグワーク」労働市場に流入させることが目的です。健康・安全の保護を欠き、健康悪化や労災の発生が心配されます。
21年3月の「フリーランス・ガイドライン」は、働く人が保険料を全額負担する「労災保険特別加入」職種を拡大するだけです。実態は労働者と変わりがないのに個人請負とする、違法な「誤分類」を政府が容認・推進するものです。「誤分類」の考え方や「法的推定」による立証責任の転換など、労働者としての権利保障を拡大する視点は見られません。
国際労働機関(ILO)や欧州連合(EU)も企業に労働法令を順守させるため、「誤分類」規制を重視しています。しかし日本では、政府が法違反を厳しく取り締まらない姿勢が際立っています。その結果、過労死をもたらす長時間労働やハラスメントがまん延し、雇用社会の劣化につながってきました。こうした状況の改善こそが、日本の政府・労働行政に課せられた緊急の課題です。
「労働者概念」については、違法な「誤分類」をなくすために、1985年労基法研究会報告の枠にとらわれず、ILOの2006年勧告が示す判定基準や「法的推定」を具体化した立法措置が必要です。
東電系列ワットラインによる請負労働者の解雇・契約打ち切り撤回を求める全労連・全国一般の人たち
団結権保障こそ
ILOや欧州諸国は個人請負形式の自営業者にも、集団的労使関係法(労働組合法など)に基づく団結活動の権利を広く認めています。労働組合などの団体を結成して、自らの要求を掲げて使用者・使用者団体と交渉することは、不可欠の権利だと考えられているのです。
日本では、非正規雇用に対する差別処遇が、短期・無期、扶養・被扶養、残業・配転の有無などの口実で正当化され、立法・行政・裁判でも広く認められてきました。
しかし、EUではパート、有期雇用、派遣の三つの非典型労働について、それぞれ「非差別」を明示する指令を定めました。均等待遇の世界的な流れのなかで日本でも18年、格差を規制し、均等・均衡待遇を義務づける法改正がありました。
「雇用によらない働き方」の拡大は、この均等待遇について責任回避の抜け道を企業に開くものです。働く人の権利実現のためには、「雇用によらない働き方」ではなく、違法を許さないことを示す「誤分類」という用語・考え方を広めることが必要です。
非正規雇用はもちろん、「誤分類」された就労者も「労働者」として雇用と権利を広く保障することが重要です。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年11月13日付掲載
高齢者の労働にも個人請負形式で、インターネットを介する「ギグワーク」労働市場の流入が行われつつあります。
EUではパート、有期雇用、派遣の三つの非典型労働について、それぞれ「非差別」を明示する指令を定めました。均等待遇の世界的な流れのなかで日本でも18年、格差を規制し、均等・均衡待遇を義務づける法改正が。
働く人の権利実現のためには、「雇用によらない働き方」ではなく、違法を許さないことを示す「誤分類」という用語・考え方を広めることが必要。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます