岸田政権の経済・財政運営をよむ⑤ 最低自給率の農政踏襲
ロシアのウクライナ侵略は、両国が穀物輸出国であるだけに、世界の食料供給に不安を引き起こしました。日本は食料や資源などの多くを外国からの輸入に頼るひ弱さをさらけ出し、食料品、素資材、エネルギーなどの激しい値上がりに見舞われています。
この事態にあって、「骨太の方針」は「わが国の食料・農林水産業が輸入に大きく依存してきた中で、世界の食料需給等をめぐるリスクが顕在化している」と認め、「食料自給率の向上を含め食料安全保障の強化を図る」としました。「新しい資本主義実行計画」も、「食料安全保障の確立に向けて、足腰の強い農林水産業を構築することで、食料自給率の向上を図る」とうたいました。
しかし、食料自給率を史上最低の37・17%(2020年度)まで下落させた歴代自民党政権の農政を見直すこともなく、既存の施策を羅列するにとどまっています。
米国いいなりで
そもそも、農業生産の自然条件に恵まれた日本で、農業を衰退させた責任は、米国・財界いいなりの歴代自民党政権の農政にあります。自動車など工業製品の輸出拡大の見返りに、米国の圧力を受けて、牛肉・オレンジをはじめとして日本の農産物市場を次々と差し出し、国内農業を犠牲にしてきたのです。
農産物輸入の「自由化」の一方で、農産物の価格保障や農家の所得補償など農業支援を投げ捨てました。
特に、新自由主義の「市場万能」論に基づき、政府が米の生産と流通を市場まかせとした1995年以降、米価は下落し続けました。他方では、米の生産経費が上がり続け、米農家の多くが赤字生産を強いられました。2018年度には、当時の安倍晋三政権が米の生産調整(減反)からも手を引き、生産調整に協力する農家に対する米の直接支払い交付金を廃止。政府が推奨してきた法人経営や集落営農組織さえ大きな打撃を受けました。
「世界で一番企業が活躍しやすい国」を掲げた安倍政権は、中小の家族農業を切り捨てる一方、農業経営の大規模化や企業の農業参入を推進。「岩盤規制」を打ち破ると称して、農業協同組合法、農地法、主要農作物種子法など、戦後の家族農業を支えてきた諸制度を次々に壊してきました。
麦刈り=5月28日、佐賀県
生産基盤弱体化
そうした歴代自民党農政の結果、1965年度に73%だった食料自給率が、2020年度には37・17%まで下落したのです。農業の中心的な担い手が減少し、高齢化し、耕作放棄地も拡大するなど、農業の生産基盤自体も弱体化しています。
現在、新型コロナウイルス禍のもとで、外食をはじめとして米需要が激減し、米価が大暴落しています。しかし、岸田文雄政権は、米価の暴落を放置しているだけでなく、「水田活用の直接支払い交付金」の削減を打ち出しました。一方では米からの転作を奨励しながら、他方では水田を活用して麦、大豆、飼料用作物などへ転作する農家への支援を打ち切ろうというのです。
岸田政権は、「骨太の方針」や「新しい資本主義実行計画」で食料安全保障や食料自給率の向上を掲げるものの、農業を再生させる抜本策を示せず、農業を衰退させてきたこれまでの自民党農政を踏襲しています。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月11日付掲載
そもそも、農業生産の自然条件に恵まれた日本で、農業を衰退させた責任は、米国・財界いいなりの歴代自民党政権の農政にある。
2018年度には、当時の安倍晋三政権が米の生産調整(減反)からも手を引き、生産調整に協力する農家に対する米の直接支払い交付金を廃止。政府が推奨してきた法人経営や集落営農組織さえ大きな打撃。
日本政府は、口先では食料自給率の向上を言いながら、農家への直接支援、価格保障や所得補償などはあまりにも不十分。
ロシアのウクライナ侵略は、両国が穀物輸出国であるだけに、世界の食料供給に不安を引き起こしました。日本は食料や資源などの多くを外国からの輸入に頼るひ弱さをさらけ出し、食料品、素資材、エネルギーなどの激しい値上がりに見舞われています。
この事態にあって、「骨太の方針」は「わが国の食料・農林水産業が輸入に大きく依存してきた中で、世界の食料需給等をめぐるリスクが顕在化している」と認め、「食料自給率の向上を含め食料安全保障の強化を図る」としました。「新しい資本主義実行計画」も、「食料安全保障の確立に向けて、足腰の強い農林水産業を構築することで、食料自給率の向上を図る」とうたいました。
しかし、食料自給率を史上最低の37・17%(2020年度)まで下落させた歴代自民党政権の農政を見直すこともなく、既存の施策を羅列するにとどまっています。
米国いいなりで
そもそも、農業生産の自然条件に恵まれた日本で、農業を衰退させた責任は、米国・財界いいなりの歴代自民党政権の農政にあります。自動車など工業製品の輸出拡大の見返りに、米国の圧力を受けて、牛肉・オレンジをはじめとして日本の農産物市場を次々と差し出し、国内農業を犠牲にしてきたのです。
農産物輸入の「自由化」の一方で、農産物の価格保障や農家の所得補償など農業支援を投げ捨てました。
特に、新自由主義の「市場万能」論に基づき、政府が米の生産と流通を市場まかせとした1995年以降、米価は下落し続けました。他方では、米の生産経費が上がり続け、米農家の多くが赤字生産を強いられました。2018年度には、当時の安倍晋三政権が米の生産調整(減反)からも手を引き、生産調整に協力する農家に対する米の直接支払い交付金を廃止。政府が推奨してきた法人経営や集落営農組織さえ大きな打撃を受けました。
「世界で一番企業が活躍しやすい国」を掲げた安倍政権は、中小の家族農業を切り捨てる一方、農業経営の大規模化や企業の農業参入を推進。「岩盤規制」を打ち破ると称して、農業協同組合法、農地法、主要農作物種子法など、戦後の家族農業を支えてきた諸制度を次々に壊してきました。
麦刈り=5月28日、佐賀県
生産基盤弱体化
そうした歴代自民党農政の結果、1965年度に73%だった食料自給率が、2020年度には37・17%まで下落したのです。農業の中心的な担い手が減少し、高齢化し、耕作放棄地も拡大するなど、農業の生産基盤自体も弱体化しています。
現在、新型コロナウイルス禍のもとで、外食をはじめとして米需要が激減し、米価が大暴落しています。しかし、岸田文雄政権は、米価の暴落を放置しているだけでなく、「水田活用の直接支払い交付金」の削減を打ち出しました。一方では米からの転作を奨励しながら、他方では水田を活用して麦、大豆、飼料用作物などへ転作する農家への支援を打ち切ろうというのです。
岸田政権は、「骨太の方針」や「新しい資本主義実行計画」で食料安全保障や食料自給率の向上を掲げるものの、農業を再生させる抜本策を示せず、農業を衰退させてきたこれまでの自民党農政を踏襲しています。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月11日付掲載
そもそも、農業生産の自然条件に恵まれた日本で、農業を衰退させた責任は、米国・財界いいなりの歴代自民党政権の農政にある。
2018年度には、当時の安倍晋三政権が米の生産調整(減反)からも手を引き、生産調整に協力する農家に対する米の直接支払い交付金を廃止。政府が推奨してきた法人経営や集落営農組織さえ大きな打撃。
日本政府は、口先では食料自給率の向上を言いながら、農家への直接支援、価格保障や所得補償などはあまりにも不十分。
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