岸田政権の経済・財政運営をよむ④ “労働者保護”が欠如
岸田文雄政権の労働政策は、安倍晋三政権から続く「働き方改革」の焼き直しです。成長分野に特化した労働移動や使い勝手のいい労働力の拡大に傾倒しています。新型コロナウイルス禍で浮き彫りとなった不安定な働き方に対する改善策は棚上げにし、大企業が求める「人」への投資に重きを置いています。
格差温存の方針
7日に閣議決定された「新しい資本主義実行計画」は、自由競争を重視した新自由主義的な政策が経済的格差の拡大といった「弊害」を招いたと反省の弁を述べました。しかし、経済財政運営の基本方針である「骨太の方針」には格差の温床である低すぎる最低賃金や待遇格差の是正に向けた新たな施策はほとんど見当たりません。
「骨太」は最賃について、できる限り早期に「全国加重平均が1000円以上となることを目指し、引き上げに取り組む」と明記しました。最低生計費は時給換算で全国どの地域でも1500~1600円です。この水準から程遠い上、全国一律の最賃を求める声に反し地域間格差を温存することになります。経済財政諮問会議のメンバーである十倉雅和経団連会長は5月16日の経済財政諮問会議で「産業構造の転換には成長分野への円滑な労働移動が必要」だと政府にハッパをかけました。
政府は、世界が覇権を争うデジタル分野などへの労働移動を促す狙いで今年度から施策パッケージを新設。2024年度までの3年間に4000億円規模の予算を投じます。
その上で「多様な働き方の推進」や「兼業・副業の促進」など従来掲げてきた政策を列挙。根底には、欲しい時に欲しい数だけ労働力を調達し、不要になれば切り捨てるという企業の思惑があります。正規雇用の破壊を助長しかねません。
最低賃金を1500円にと訴える労働者たち=5月31日、札幌市
運動の成果反映
一方、男女の賃金格差の開示を義務化するなど前進面もあります。賃金格差の是正を求め続けてきた運動の成果です。
「骨太」は女性活躍と銘打って、「同一労働同一賃金を徹底し、女性が多い非正規雇用労働者の待遇を改善する」としました。しかし政府のいう「同一労働同一賃金」は、待遇格差の中心である基本給や退職金についての差別を是認しています。国際労働機関(ILO)などが提起する「職務」に基づく同一価値労働同一賃金から大きくかけ離れた名ばかりのものです。
新型コロナウイルスの感染拡大は雇用の調整弁とされてきた非正規雇用労働者やフリーランスの脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにしました。
ウーバーイーツや個人事業主の宅配ドライバーなど「雇用によらない働き方」の増加を念頭に「骨太」は、「事業者がフリーランスと取引する際の契約の明確化を図る法整備や相談体制の充実など、フリーランスが安心して働ける環境を整備する」と明記しました。
働く実態は労働者にもかかわらず個人事業主と誤って分類されている「誤分類」の是正には踏み込んでいません。あくまで自営業者として保護するというものです。
世界では、ILOや欧米諸国を筆頭に「誤分類」をただし「労働者」として保護しようという動きが活発化しています。
それにもかかわらず「骨太」も「実行計画」もそれには一切触れていません。労働者の人権を守るという発想が欠如しています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月10日付掲載
「多様な働き方の推進」や「兼業・副業の促進」など従来掲げてきた政策を列挙。根底には、欲しい時に欲しい数だけ労働力を調達し、不要になれば切り捨てるという企業の思惑。
一方、男女の賃金格差の開示を義務化するなど前進面も。
働く実態は労働者にもかかわらず個人事業主と誤って分類されている「誤分類」の是正には踏み込んでいません。
抜本的な改善が求められています。
岸田文雄政権の労働政策は、安倍晋三政権から続く「働き方改革」の焼き直しです。成長分野に特化した労働移動や使い勝手のいい労働力の拡大に傾倒しています。新型コロナウイルス禍で浮き彫りとなった不安定な働き方に対する改善策は棚上げにし、大企業が求める「人」への投資に重きを置いています。
格差温存の方針
7日に閣議決定された「新しい資本主義実行計画」は、自由競争を重視した新自由主義的な政策が経済的格差の拡大といった「弊害」を招いたと反省の弁を述べました。しかし、経済財政運営の基本方針である「骨太の方針」には格差の温床である低すぎる最低賃金や待遇格差の是正に向けた新たな施策はほとんど見当たりません。
「骨太」は最賃について、できる限り早期に「全国加重平均が1000円以上となることを目指し、引き上げに取り組む」と明記しました。最低生計費は時給換算で全国どの地域でも1500~1600円です。この水準から程遠い上、全国一律の最賃を求める声に反し地域間格差を温存することになります。経済財政諮問会議のメンバーである十倉雅和経団連会長は5月16日の経済財政諮問会議で「産業構造の転換には成長分野への円滑な労働移動が必要」だと政府にハッパをかけました。
政府は、世界が覇権を争うデジタル分野などへの労働移動を促す狙いで今年度から施策パッケージを新設。2024年度までの3年間に4000億円規模の予算を投じます。
その上で「多様な働き方の推進」や「兼業・副業の促進」など従来掲げてきた政策を列挙。根底には、欲しい時に欲しい数だけ労働力を調達し、不要になれば切り捨てるという企業の思惑があります。正規雇用の破壊を助長しかねません。
最低賃金を1500円にと訴える労働者たち=5月31日、札幌市
運動の成果反映
一方、男女の賃金格差の開示を義務化するなど前進面もあります。賃金格差の是正を求め続けてきた運動の成果です。
「骨太」は女性活躍と銘打って、「同一労働同一賃金を徹底し、女性が多い非正規雇用労働者の待遇を改善する」としました。しかし政府のいう「同一労働同一賃金」は、待遇格差の中心である基本給や退職金についての差別を是認しています。国際労働機関(ILO)などが提起する「職務」に基づく同一価値労働同一賃金から大きくかけ離れた名ばかりのものです。
新型コロナウイルスの感染拡大は雇用の調整弁とされてきた非正規雇用労働者やフリーランスの脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにしました。
ウーバーイーツや個人事業主の宅配ドライバーなど「雇用によらない働き方」の増加を念頭に「骨太」は、「事業者がフリーランスと取引する際の契約の明確化を図る法整備や相談体制の充実など、フリーランスが安心して働ける環境を整備する」と明記しました。
働く実態は労働者にもかかわらず個人事業主と誤って分類されている「誤分類」の是正には踏み込んでいません。あくまで自営業者として保護するというものです。
世界では、ILOや欧米諸国を筆頭に「誤分類」をただし「労働者」として保護しようという動きが活発化しています。
それにもかかわらず「骨太」も「実行計画」もそれには一切触れていません。労働者の人権を守るという発想が欠如しています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月10日付掲載
「多様な働き方の推進」や「兼業・副業の促進」など従来掲げてきた政策を列挙。根底には、欲しい時に欲しい数だけ労働力を調達し、不要になれば切り捨てるという企業の思惑。
一方、男女の賃金格差の開示を義務化するなど前進面も。
働く実態は労働者にもかかわらず個人事業主と誤って分類されている「誤分類」の是正には踏み込んでいません。
抜本的な改善が求められています。
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