岸田政権の経済・財政運営をよむ③ 米戦略に日本組み込む
国際経済をとりまく環境について、「骨太の方針」は「米中競争、国家間競争の時代に本格的に突入」したと特徴づけています。この情勢認識の下で、「経済安全保障の強化」をうたい、「安全保障の確保に関する経済施策を総合的・効果的に推進する」としています。
5月23日に開かれた日米首脳会談の共同記者会見で岸田文雄首相は、「最先端半導体の」開発を含む経済安全保障分野の協力や宇宙などに関する具体的な協力でも一致できました」と、その成果を宣伝しました。日米首脳共同声明では、日本で「経済安全保障法」が成立したことを挙げ、「経済安全保障を強化するための更なる協力を追求していくことで一致した」と明記していました。
来日したバイデン大統領は、米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF=アイペフ)の発足を宣言しました。中国に対抗するためにバイデン氏が掲げる「民主主義対専制主義」という国家の色分けは、対話とルールに基づいて経済秩序を構築する努力を続けているインド太平洋地域に新たな分断を持ち込むことになります。
政府に白紙委任
「経済安全保障法」でいう経済安全保障とは、日本を軍事・経済の両面で米国の戦略に組み込むものです。「同志国・同盟国」の枠組みの下、敵国を想定して経済の力で脅すことは、政治的な緊張関係を高めることになります。
「経済安全保障法」には、大企業への金融・財政支援策も盛り込まれています。しかも、重要な事項が138カ所も政省令に委ねられ、具体的施策は「政府への白紙委任」とされます。大企業による政府への特別な働きかけの契機となり、政官業の癒着構造をつくる危険があります。
「骨太の方針」では、サプライチェーン(部品供給網)の再構築や官民技術協力に関する施策については、「先行して可能な限り早期に実施する」と強調。半導体レアアース(希土類)を含む重要鉱物、電池など重要な物資の安定供給を早急に確保するために、基金の枠組みも含め、金融支援や助成などの必要な支援措置を整備することをうたいました。
迎賓館赤坂離宮でバイデン米大統領と日米首脳会談を行う岸田首相(右)=5月23日(官邸ホームページから)
「速やかに」追加
重要技術の実用化に向けたプロジェクトを強化する財政支援の5000億円について、原案にはなかった「速やかに」との文言を追加しました。「経済安全保障」の推進体制の強化についても踏み込みました。国家安全保障局を司令塔として、関係省庁の推進体制の強化をうたうとともに、内閣府に経済安全保障推進室(仮称)を速やかに設置することを明記。さらに、「情報の収集・分析等に必要な体制を整備する」とし、機密情報の収集・分析能力の強化をうたっています。
半導体や量子技術など最先端技術をめぐる竸争は激化しています。米国や欧州、中国ではすでに、数兆円単位で半導体・デジタル産業に対する政府の支援策が進められています。今後、企業向けの国際間の補助金競争を招きかねません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月9日付掲載
5月23日に開かれた日米首脳会談の共同記者会見で岸田文雄首相は、「最先端半導体の」開発を含む経済安全保障分野の協力や宇宙などに関する具体的な協力でも一致できました」と、その成果を宣伝。
といっても、日本の半導体産業は取り残されたまま。
バイデン大統領は、米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF=アイペフ)の発足を宣言。中国に対抗するためにバイデン氏が掲げる「民主主義対専制主義」という国家の色分けは、対話とルールに基づいて経済秩序を構築する努力を続けているインド太平洋地域に新たな分断を持ち込むことに。
同じ「インド太平洋」というネーミングでも、アメリカと日本の側は仮想的を持つもの、ASEAN(東南アジア諸国連合)は包摂的で仮想敵を持たない。
国際経済をとりまく環境について、「骨太の方針」は「米中競争、国家間競争の時代に本格的に突入」したと特徴づけています。この情勢認識の下で、「経済安全保障の強化」をうたい、「安全保障の確保に関する経済施策を総合的・効果的に推進する」としています。
5月23日に開かれた日米首脳会談の共同記者会見で岸田文雄首相は、「最先端半導体の」開発を含む経済安全保障分野の協力や宇宙などに関する具体的な協力でも一致できました」と、その成果を宣伝しました。日米首脳共同声明では、日本で「経済安全保障法」が成立したことを挙げ、「経済安全保障を強化するための更なる協力を追求していくことで一致した」と明記していました。
来日したバイデン大統領は、米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF=アイペフ)の発足を宣言しました。中国に対抗するためにバイデン氏が掲げる「民主主義対専制主義」という国家の色分けは、対話とルールに基づいて経済秩序を構築する努力を続けているインド太平洋地域に新たな分断を持ち込むことになります。
政府に白紙委任
「経済安全保障法」でいう経済安全保障とは、日本を軍事・経済の両面で米国の戦略に組み込むものです。「同志国・同盟国」の枠組みの下、敵国を想定して経済の力で脅すことは、政治的な緊張関係を高めることになります。
「経済安全保障法」には、大企業への金融・財政支援策も盛り込まれています。しかも、重要な事項が138カ所も政省令に委ねられ、具体的施策は「政府への白紙委任」とされます。大企業による政府への特別な働きかけの契機となり、政官業の癒着構造をつくる危険があります。
「骨太の方針」では、サプライチェーン(部品供給網)の再構築や官民技術協力に関する施策については、「先行して可能な限り早期に実施する」と強調。半導体レアアース(希土類)を含む重要鉱物、電池など重要な物資の安定供給を早急に確保するために、基金の枠組みも含め、金融支援や助成などの必要な支援措置を整備することをうたいました。
迎賓館赤坂離宮でバイデン米大統領と日米首脳会談を行う岸田首相(右)=5月23日(官邸ホームページから)
「速やかに」追加
重要技術の実用化に向けたプロジェクトを強化する財政支援の5000億円について、原案にはなかった「速やかに」との文言を追加しました。「経済安全保障」の推進体制の強化についても踏み込みました。国家安全保障局を司令塔として、関係省庁の推進体制の強化をうたうとともに、内閣府に経済安全保障推進室(仮称)を速やかに設置することを明記。さらに、「情報の収集・分析等に必要な体制を整備する」とし、機密情報の収集・分析能力の強化をうたっています。
半導体や量子技術など最先端技術をめぐる竸争は激化しています。米国や欧州、中国ではすでに、数兆円単位で半導体・デジタル産業に対する政府の支援策が進められています。今後、企業向けの国際間の補助金競争を招きかねません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月9日付掲載
5月23日に開かれた日米首脳会談の共同記者会見で岸田文雄首相は、「最先端半導体の」開発を含む経済安全保障分野の協力や宇宙などに関する具体的な協力でも一致できました」と、その成果を宣伝。
といっても、日本の半導体産業は取り残されたまま。
バイデン大統領は、米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF=アイペフ)の発足を宣言。中国に対抗するためにバイデン氏が掲げる「民主主義対専制主義」という国家の色分けは、対話とルールに基づいて経済秩序を構築する努力を続けているインド太平洋地域に新たな分断を持ち込むことに。
同じ「インド太平洋」というネーミングでも、アメリカと日本の側は仮想的を持つもの、ASEAN(東南アジア諸国連合)は包摂的で仮想敵を持たない。
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