男女賃金格差の算出 非正規の「常勤換算」で見かけ小さく
女性活躍推進法が改正され、昨年7月から従業員301人以上の民間事業主の男女賃金格差の開示が始まりました。
労働者を全労働者、正規、非正規の3区分に分けて、区分ごとに男性労働者の平均賃金に対する女性労働者の賃金額の割合が公表されることになっています。運動団体が長年求めてきた男女賃金格差の公表は、日本共産党も国会で繰り返し求めてきたものです。
平均賃金は労働者の区分ごとに賃金総額を人員数で割ることで求めます。その算出方法で厚生労働省は、非正規労働者について「正規労働者の所定労働時間等を参考として、人員数を換算しても差し支えない」(常勤換算)という規定を盛り込みました。非正規雇用では女性は男性より短い勤務時間であることも多く、そのような事業所で人員を常勤換算すると見かけ上、男女賃金格差が小さくなるという問題が指摘されています。
例えば、非正規の男性社員が5人在籍し、平均が時給2000円で1日6時間、週4日勤務(週24時間勤務で4・8万円、男性計24万円)、同様に女性社員が20人在籍し、平均が時給1000円で1日4時間、週4日勤務(週16時間勤務で週給は1・6万円、女性計32万円)となる事業所で男女賃金格差を比べてみます。
人員数を実人員で計算すると週給の平均は男性4・8万円、女性1・6万円になります。男女賃金格差(男性の賃金を100とした場合の女性の賃金の割合)は約33%(1・6万÷4・8万)となります。一方、人員数を所定労働時間40時間で常勤換算すると男性は3人、女性は8人となります。その結果、週給の平均は男性8万円、女性4万円となり男女賃金格差は50%(4万÷8万)となります。このように、常勤換算では実感とかい離したものとなってしまいます。
しかも今後、人員数を単純に実人員によるものと、常勤換算の2種類の男女賃金格差が混在することになります。どちらの方法も男女賃金格差を示すものではありますが、混在することで比較可能性が失われます。
男女賃金格差問題などについて岸田文雄首相らに質問する田村智子議員=2022年12月1日、参院予算委
日本共産党の田村智子参院議員は予算委員会(昨年12月1日)で、常勤換算によるものは実際に受け取っている賃金の格差と大きく異なることがあると指摘し、「給料の支給額を足し上げて人数で割るという、この当たり前の平均賃金を必ず示すように求めるべきだ」と要求。加藤勝信厚労相は拒否しました。
有価証券報告書では常勤換算で非正規労働者数を算定することを認めています。常勤換算で有価証券報告書に記している企業は全体の1割弱にすぎませんが、企業にとって「過重な負担とならないように」という要望を受けた厚労省が、この取り扱いをもとに使用者側と調整したことを認めています。企業に配慮して算出方法の混在を認めた厚労省の姿勢は非常に問題です。
岩藤智彦(いわどう・ともひこ 日本共産党国会議員団事務局)
「しんぶん赤旗」日曜版 2023年2月19日付掲載
平均賃金は労働者の区分ごとに賃金総額を人員数で割ることで求めます。その算出方法で厚生労働省は、非正規労働者について「正規労働者の所定労働時間等を参考として、人員数を換算しても差し支えない」(常勤換算)という規定を盛り込みました。非正規雇用では女性は男性より短い勤務時間であることも多く、そのような事業所で人員を常勤換算すると見かけ上、男女賃金格差が小さくなるという問題が指摘。
日本共産党の田村智子参院議員は予算委員会(昨年12月1日)で、常勤換算によるものは実際に受け取っている賃金の格差と大きく異なることがあると指摘し、「給料の支給額を足し上げて人数で割るという、この当たり前の平均賃金を必ず示すように求めるべきだ」と要求。加藤勝信厚労相は拒否。
不正確な男女間の賃金格差の数字。改めるべき。
女性活躍推進法が改正され、昨年7月から従業員301人以上の民間事業主の男女賃金格差の開示が始まりました。
労働者を全労働者、正規、非正規の3区分に分けて、区分ごとに男性労働者の平均賃金に対する女性労働者の賃金額の割合が公表されることになっています。運動団体が長年求めてきた男女賃金格差の公表は、日本共産党も国会で繰り返し求めてきたものです。
平均賃金は労働者の区分ごとに賃金総額を人員数で割ることで求めます。その算出方法で厚生労働省は、非正規労働者について「正規労働者の所定労働時間等を参考として、人員数を換算しても差し支えない」(常勤換算)という規定を盛り込みました。非正規雇用では女性は男性より短い勤務時間であることも多く、そのような事業所で人員を常勤換算すると見かけ上、男女賃金格差が小さくなるという問題が指摘されています。
例えば、非正規の男性社員が5人在籍し、平均が時給2000円で1日6時間、週4日勤務(週24時間勤務で4・8万円、男性計24万円)、同様に女性社員が20人在籍し、平均が時給1000円で1日4時間、週4日勤務(週16時間勤務で週給は1・6万円、女性計32万円)となる事業所で男女賃金格差を比べてみます。
人員数を実人員で計算すると週給の平均は男性4・8万円、女性1・6万円になります。男女賃金格差(男性の賃金を100とした場合の女性の賃金の割合)は約33%(1・6万÷4・8万)となります。一方、人員数を所定労働時間40時間で常勤換算すると男性は3人、女性は8人となります。その結果、週給の平均は男性8万円、女性4万円となり男女賃金格差は50%(4万÷8万)となります。このように、常勤換算では実感とかい離したものとなってしまいます。
しかも今後、人員数を単純に実人員によるものと、常勤換算の2種類の男女賃金格差が混在することになります。どちらの方法も男女賃金格差を示すものではありますが、混在することで比較可能性が失われます。
男女賃金格差問題などについて岸田文雄首相らに質問する田村智子議員=2022年12月1日、参院予算委
日本共産党の田村智子参院議員は予算委員会(昨年12月1日)で、常勤換算によるものは実際に受け取っている賃金の格差と大きく異なることがあると指摘し、「給料の支給額を足し上げて人数で割るという、この当たり前の平均賃金を必ず示すように求めるべきだ」と要求。加藤勝信厚労相は拒否しました。
有価証券報告書では常勤換算で非正規労働者数を算定することを認めています。常勤換算で有価証券報告書に記している企業は全体の1割弱にすぎませんが、企業にとって「過重な負担とならないように」という要望を受けた厚労省が、この取り扱いをもとに使用者側と調整したことを認めています。企業に配慮して算出方法の混在を認めた厚労省の姿勢は非常に問題です。
岩藤智彦(いわどう・ともひこ 日本共産党国会議員団事務局)
「しんぶん赤旗」日曜版 2023年2月19日付掲載
平均賃金は労働者の区分ごとに賃金総額を人員数で割ることで求めます。その算出方法で厚生労働省は、非正規労働者について「正規労働者の所定労働時間等を参考として、人員数を換算しても差し支えない」(常勤換算)という規定を盛り込みました。非正規雇用では女性は男性より短い勤務時間であることも多く、そのような事業所で人員を常勤換算すると見かけ上、男女賃金格差が小さくなるという問題が指摘。
日本共産党の田村智子参院議員は予算委員会(昨年12月1日)で、常勤換算によるものは実際に受け取っている賃金の格差と大きく異なることがあると指摘し、「給料の支給額を足し上げて人数で割るという、この当たり前の平均賃金を必ず示すように求めるべきだ」と要求。加藤勝信厚労相は拒否。
不正確な男女間の賃金格差の数字。改めるべき。
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