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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
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粉飾された賃金抑制策 「経労委報告」を読む② エンゲージメントとは

2023-02-22 07:09:25 | 働く権利・賃金・雇用問題について
粉飾された賃金抑制策 「経労委報告」を読む② エンゲージメントとは
今回の「報告」では、賃金抑制DNAに加えて、いま一つ危険な別のDNAを合体させようとしている問題がある。
「賃上げ」の提唱を別とすれば、今次「報告」の最大の特徴は、いたるところで「エンゲージメント」向上の必要を唱えていることであろう。労働生産性の向上には働き手の「エンゲージメント」を高める必要がある、労働投入と付加価値の最大化を図っていく鍵を握るのは働き手の「エンゲージメント」である、「エンゲージメント」を高めることで「組織・チームの付加価値を最大化していかねばならない」、等々。この呪文のような用語は何を意味するのであろうか。

満足度さらに下落
日本では婚約の際などによく使われるengagementという英語は、ビジネスのうえでは組織に対する愛着心や働きがいという意味で使われている。経団連が「エンゲージメント」問題を重視するようになったのは、アメリカの調査会社が行った調査で、日本の社員の「仕事に対する満足度」が世界最低辺(2017年調査では139カ国中132位、2022年調査ではさらに下落して129カ国中128位)に位置することが暴露されてからである。世界一忠実な従業員を擁していると信じていた財界・大企業は衝撃を受け、「エンゲージメント」の重視に向かったのである。



裁量労働制の拡張に反対の声をあげる人たち=2022年12月20日、東京都港区

異質な取り組み方
しかし、「報告」にみるその取り組み方は、国際的にきわめて異質なものである。
第一に、「報告」では「エンゲージメント」を独自に定義して、「組織や仕事に主体的に貢献する意欲や姿勢を表す概念」としている。しかし企業への「愛着」と「貢献」とは別である。人格的に自立した労働者は企業に「主体的に貢献する」責務など負ってはいない。経団連は、従業員に企業への忠誠を誓わせることが「エンゲージメント」であるかのようにいい、大企業の中には創業家の家訓を持ち出して従業員に忠誠を誓わせる経営者まで登場している。
しかし国際社会で問題になっているのは、従業員の側からの企業評価なのである。いまだに従業員を自由な人格を持つ個人として尊重する見地に立てない経団連は、力づくで従業員に「エンゲージメント」をもたせることしか思いつかないのである。
第二に、そこから「報告」は、社員について「年代、雇用形態、部署、職種などの区分ごとにエンゲージメントの状況を把握し、必要な対策を講じること」を推奨している。息が詰まるような監視・監督社会の構築である。実際「報告」のなかでは、社員に関する状況把握から、その分析・課題把握→施策実行→効果測定にいたる対策を、企業が繰り返し実施することで従業員の「エンゲージメント」を高める施策が提起されている。すでにそこからは、パワハラの多発、職場の息苦しさに耐えかねた若者たちの離職や海外逃避、等が生じているのであるが、「報告」執筆者の耳目には入らないようである。
第三に、「報告」はこのエセ「エンゲージメント」の向上を口実に、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度など「労働時間をベースとしない処遇」の拡張を執拗(しつよう)に要求している。そうした無政府的な労働環境が広がるなら、構築されてきたわが国の賃労働関係は解体され、企業経営者が思いのままに給与・就業条件を決定する専制社会への道が開かれることになろう。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年2月21日付掲載


日本では婚約の際などによく使われるengagementという英語は、ビジネスのうえでは組織に対する愛着心や働きがいという意味で使われている。
経団連は、従業員に企業への忠誠を誓わせることが「エンゲージメント」であるかのようにいい、大企業の中には創業家の家訓を持ち出して従業員に忠誠を誓わせる経営者まで登場。
「報告」はこのエセ「エンゲージメント」の向上を口実に、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度など「労働時間をベースとしない処遇」の拡張を執拗(しつよう)に要求。
偽りの「愛着心」や「働きがい」で、労働時間規制をとっぱらって、企業に忠誠に働かせようってことでしょうか。

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