きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

EUに学ぶ IT企業規制③ 労働者保護の視点も重要

2022-04-17 06:05:53 | 経済・産業・中小企業対策など
EUに学ぶ IT企業規制③ 労働者保護の視点も重要

情報産業研究者 高野嘉史さん

欧州連合(EU)のデジタル市場法(DMA)は2023年3月までに施行される見込みです。違法なコンテンツ(情報の内容)の速やかな削除などを義務づけるデジタルサービス法(DSA)案も22年1月に欧州議会で承認されていますから、同時施行がめざされています。
これに対してグーグルは、いくつかの懸念を表明しているものの、基本的にDMAを受け入れる意向です。
一方、アップルは強硬な反対意見を表明しています。アップルはこれまで、セキュリティーを理由としてiPhone上への外部事業者による非正規アプリの開設を認めてきませんでした。また韓国など一部の例外を除き、自社のアプリ販売サイト「アップストア」で配信する有料アプリにはアップルの決済システムの利用を義務づけ、売上高の15~30%の手数料を徴収してきました。その総額は年間200億ドル(約2兆5000億円)にも上るといわれており、これが減少することは大きな痛手になります。反対意見の背景にこうした事情がありますから、同法の施行段階では紆余(うよ)曲折があるかもしれません。
DMA法は、主として競争事業者と消費者を保護する視点からの規制ですが、労働者の保護という視点も重要です。GAFAM(ガーファム=グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)は、いずれも事業の拡大とともに雇用者数を増加させてきました。それぞれ特有の手法で労働力を「効率的に」活用=搾取しています。



投票結果で労組結成が決まり、喜びの記者会見をする「アマゾン労働組合」(ALU)のメンバーたち=4月1日、ニューヨーク市ブルックリン(ロイター)

アマゾンの搾取
アマゾンの21年末のパートタイムを含む従業員数は160万8000人(対前年比23・9%増)に上ります。その過酷な労働の実態は各所で指摘されています。
アマゾンは各地で巨大物流施設を運営しています。米国アラバマ州の物流施設で労働組合を結成する動きがありましたが、経営側の介入もあって労働者の過半数の支持を得られず、頓挫しました。それにめげず、22年4月にニューヨーク州の集配センターの労働者が労働組合の結成に成功しました。
配送分野でも、アマゾンは事業の拡大に伴って自前の配送網を整備してきました。個人との委託契約が多く、実質的には労働者であるものを個人事業主扱いとして、労働強化を実現しています。日本の楽天なども、配送に従事する労働者を個人事業者扱いにして搾取を強めています。
EUではこのような労働者に対する保護を強化する動きがあります。21年12月に、デジタルプラットフォーマー(DPF)での労働条件を改善するために、EUは電子的手段での労働状況の監督など5項目の基準のうち2項目以上に該当すれば、労働者と認定することを定めた法案を公表しています。DMA・DSAと合わせてこの法案の早期成立が望まれています。
GAFAMの母国である米国も、規制緩和の流れを転換してきています。連邦取引委員会(FTC)はフェイスブックの個人情報の流出に対して19年7月に約50億ドル(約6200億円)の制裁金の支払いを命じました。その後もGAFAMの寡占に対して反トラスト法違反容疑での提訴が椙次いでいます。

規制の緩い日本
これに対して日本の規制当局はGAFAMへの規制ばかりか、不公正な行為を繰り返す日本の大規模DPFへの規制にも消極的です。
公正取引委員会は22年4月にIT(情報技術)企業による合併・買収などの審査を強化するための市場分析の専門部署を立ち上げましたが、事前審査の対象は合併・買収にとどまります。IT企業による競争事業者の不利益取り扱いなどは、あくまでも事後的な対応です。21年2月に施行されたデジタルプラットフォーム取引透明化法も、DPFの自主的取り組みに任せるものであり、実効性に疑問符を付けざるを得ません。
日本でも、EUが規制しようとしているようなDPFの問題行為は後を絶ちません。新型コロナウイルス禍の今、これらのプラットフォームを利用する消費者、労働者、中小企業を保護する規定を織り込む対応こそが求められています。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月16日付掲載


アマゾンの21年末のパートタイムを含む従業員数は160万8000人(対前年比23・9%増)に上ります。その過酷な労働の実態は各所で指摘。
配送分野でも、アマゾンは事業の拡大に伴って自前の配送網を整備。個人との委託契約が多く、実質的には労働者であるものを個人事業主扱いとして、労働強化を実現。
EUではこのような労働者に対する保護を強化する動き。21年12月に、デジタルプラットフォーマー(DPF)での労働条件を改善するために、EUは電子的手段での労働状況の監督など5項目の基準のうち2項目以上に該当すれば、労働者と認定することを定めた法案を公表。
22年4月にニューヨーク州のアマゾン集配センターの労働者が労働組合の結成に成功。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿