日本の温暖化ガス「削減」 数値目標据え置き、パリ協定に背
日本政府は3月30日、2030年に向けた温室効果ガス排出削減の数値目標と対策を含む国別約束(NDC)を、国連の気候変動枠組み条約事務局に提出しました。
日本の数値目標は、従前の「13年比で26%削減」に据え置かれました。国際的な基準である1990年比に換算すると、わずか18%の削減です。40%から50~55%の削減に引き上げた欧州連合と比べても低すぎます。「気候危機」が叫ばれる中、産業革命以降の温度上昇を1・5~2度に抑制するというパリ協定の目標に全く整合しないものであり、国際社会から「気候危機対策の放棄に等しい」など厳しく批判されました。
日本政府が排出削減の数値目標を引き上げるためには、政府によると、将来のエネルギーの使い方や電源構成を決めるエネルギー基本計画の見直しが必要です。基本計画の改定は3年から4年に1回と定められており、次の見直しの議論は、ようやく今年の夏頃から始まる予定です。
石炭と原発に既得権益を持つ政権、大手電力会社、財界は、今でも再生可能エネルギーや省エネを軽視し、エネルギー転換に消極的です。それが数値目標の引き上げを難しくしています。
新型コロナウイルス対策で手いっぱいだから、温暖化対策なんてどうでもよいと思う人もいるかもしれません。しかし、それは木を見て森を見ない考え方です。
30年代の大恐慌を克服するために、当時のルーズベルト米大統領のニューディール政策は、農村の電化などエネルギー基盤への投資が大きな柱でした。それ以来の大不況になるといわれる現状を克服するために、多くの国は景気・雇用対策、そしてエネルギー転換にも資する金融・財政政策を模索しています。
「脱原発」と「経済成長」は二律背反ではありません。また、「脱原発」と「脱温暖化」も二律背反ではありません。
神戸製鋼所が建設中の石炭火力発電所(中央の煙突の後方)=神戸市灘区
現時点で私たちが選択する、あるいは選択できるのは「原子力と化石燃料を中心とする発電システム」と「再工ネや省工ネを中心とする発電システム」のどちらかです。
後者を選び、かつ「緑の投資」を通して経済の安定成長を図ることは十分可能です。原発のコストが大幅に上昇し、再エネのコストが大幅に低下した現在、それは精神論でも何でもありません。
炭鉱など日本の化石燃料産業の比重は国際的に見てもかなり小さく、他国よりもエネルギー転換は容易なはずです。
日本にとってのエネルギー転換は、産油国や化石燃料会社に支払っている年間約20兆円の多くの部分を国内で回すことにつながり、経済に大きなプラスになります。
グローバル化がもたらした新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)で、逆に国家の役割や政治のリーダーシップの重要性が再認識されています。今ほど、合理的で公正で長期的なビジョンに基づいた国策が必要とされている時はありません。
明日香壽川(あすか・じゅせん 東北大学教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2020年5月3日・10日合併号掲載
新型コロナで、1930年代の大恐慌に匹敵する恐慌に見舞われつつある世界経済。
かつて、アメリカは水力発電などのエネルギー基盤の構築で不況から抜け出した。
21世紀の今。自然エネルギーなどのエネルギー革命で、需要や雇用を生み出し、経済を活性化させていく。
「脱原発」と「経済成長」や「脱温暖化」は二律背反ではありません。
日本政府は3月30日、2030年に向けた温室効果ガス排出削減の数値目標と対策を含む国別約束(NDC)を、国連の気候変動枠組み条約事務局に提出しました。
日本の数値目標は、従前の「13年比で26%削減」に据え置かれました。国際的な基準である1990年比に換算すると、わずか18%の削減です。40%から50~55%の削減に引き上げた欧州連合と比べても低すぎます。「気候危機」が叫ばれる中、産業革命以降の温度上昇を1・5~2度に抑制するというパリ協定の目標に全く整合しないものであり、国際社会から「気候危機対策の放棄に等しい」など厳しく批判されました。
日本政府が排出削減の数値目標を引き上げるためには、政府によると、将来のエネルギーの使い方や電源構成を決めるエネルギー基本計画の見直しが必要です。基本計画の改定は3年から4年に1回と定められており、次の見直しの議論は、ようやく今年の夏頃から始まる予定です。
石炭と原発に既得権益を持つ政権、大手電力会社、財界は、今でも再生可能エネルギーや省エネを軽視し、エネルギー転換に消極的です。それが数値目標の引き上げを難しくしています。
新型コロナウイルス対策で手いっぱいだから、温暖化対策なんてどうでもよいと思う人もいるかもしれません。しかし、それは木を見て森を見ない考え方です。
30年代の大恐慌を克服するために、当時のルーズベルト米大統領のニューディール政策は、農村の電化などエネルギー基盤への投資が大きな柱でした。それ以来の大不況になるといわれる現状を克服するために、多くの国は景気・雇用対策、そしてエネルギー転換にも資する金融・財政政策を模索しています。
「脱原発」と「経済成長」は二律背反ではありません。また、「脱原発」と「脱温暖化」も二律背反ではありません。
神戸製鋼所が建設中の石炭火力発電所(中央の煙突の後方)=神戸市灘区
現時点で私たちが選択する、あるいは選択できるのは「原子力と化石燃料を中心とする発電システム」と「再工ネや省工ネを中心とする発電システム」のどちらかです。
後者を選び、かつ「緑の投資」を通して経済の安定成長を図ることは十分可能です。原発のコストが大幅に上昇し、再エネのコストが大幅に低下した現在、それは精神論でも何でもありません。
炭鉱など日本の化石燃料産業の比重は国際的に見てもかなり小さく、他国よりもエネルギー転換は容易なはずです。
日本にとってのエネルギー転換は、産油国や化石燃料会社に支払っている年間約20兆円の多くの部分を国内で回すことにつながり、経済に大きなプラスになります。
グローバル化がもたらした新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)で、逆に国家の役割や政治のリーダーシップの重要性が再認識されています。今ほど、合理的で公正で長期的なビジョンに基づいた国策が必要とされている時はありません。
明日香壽川(あすか・じゅせん 東北大学教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2020年5月3日・10日合併号掲載
新型コロナで、1930年代の大恐慌に匹敵する恐慌に見舞われつつある世界経済。
かつて、アメリカは水力発電などのエネルギー基盤の構築で不況から抜け出した。
21世紀の今。自然エネルギーなどのエネルギー革命で、需要や雇用を生み出し、経済を活性化させていく。
「脱原発」と「経済成長」や「脱温暖化」は二律背反ではありません。
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