男女賃金格差 公表から是正へ③ 間接差別広く禁止を
早稲田大学名誉教授 浅倉むつ子さんに聞く
―日本は、ジエンダーギャップ指数でみると146力国中125位です。とくに経済分野の不平等は大きく、男女賃金格差は、男性100に対して女性75・5です。原因はどこにあるのでしょうか。
厚生労働省は、男女賃金格差の二大要因を、勤続年数の男女差と、職階の男女差だと説明しています。しかし重要なのは、それらをもたらしている要因です。私は、日本における強固な性別役割分業と、日本企業の内部システムに問題があると考えています。
日本の女性は、男性の5・5倍もの時間を家事・育児・介護に費やしていますが、企業における働き方はワーク・ライフ・バランスからはほど遠いもので、いまだに長時間労働の実態は変わっていません。
高度経済成長期には、管理職になろうとする労働者に、労働時間や勤務地が無限定であることが期待されましたが、そのときに作られた日本企業の雇用管理システムは、いまだに改善されていないのです。コース別雇用における総合職の働き方は、ケア責任を担っている女性にとっては大きな不利益をもたらす間接差別だといえると思います。
日本のジェンダーギャップ指数(2023年)
※指数は、0が完全不平等、1が完全平等
世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書(2023年)から作成
―男女賃金格差の背景には、雇用における間接差別の実態があるのですね。日本の法律でも間接差別は禁止されているのでしょうか。
たしかに男女雇用機会均等法7条が間接差別を禁止しています。ただし、その対象となる行為は、均等法の施行規則が定めている三つの行為類型だけに限定されており、条文の効果は薄いと思います。間接差別の概念をより幅広く認めさせることも必要です。
―こうした差別について、個別の法律で対応するのではなく、体系的な法制を求める議論も生まれています。
日本は、憲法14条で法の下の平等を明記していますが、それを具体化する「差別禁止法」がないではないかと、国連の女性差別撤廃委員会からは、再三、指摘されてきました。最近では、「包括的差別禁止法」を作るべきだという議論も登場しており、重要です。人権保障のためには、性差別の禁止だけでなく、障害、人種、年齢など、さまざまな事由にもとつく差別を禁止する包括的な法制が必要だという議論です。
包括的差別禁止法では、差別とは何かという定義をおくこと、直接差別や間接差別、ハラスメントなどの行為を禁止して、効果的な救済制度を設けることなどが要請されます。将来的には大きな法律を作る必要があると思います。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月9日付掲載
厚生労働省は、男女賃金格差の二大要因を、勤続年数の男女差と、職階の男女差だと説明。しかし重要なのは、それらをもたらしている要因。私は、日本における強固な性別役割分業と、日本企業の内部システムに問題があると。
人権保障のためには、性差別の禁止だけでなく、障害、人種、年齢など、さまざまな事由にもとつく差別を禁止する包括的な法制が必要。
早稲田大学名誉教授 浅倉むつ子さんに聞く
―日本は、ジエンダーギャップ指数でみると146力国中125位です。とくに経済分野の不平等は大きく、男女賃金格差は、男性100に対して女性75・5です。原因はどこにあるのでしょうか。
厚生労働省は、男女賃金格差の二大要因を、勤続年数の男女差と、職階の男女差だと説明しています。しかし重要なのは、それらをもたらしている要因です。私は、日本における強固な性別役割分業と、日本企業の内部システムに問題があると考えています。
日本の女性は、男性の5・5倍もの時間を家事・育児・介護に費やしていますが、企業における働き方はワーク・ライフ・バランスからはほど遠いもので、いまだに長時間労働の実態は変わっていません。
高度経済成長期には、管理職になろうとする労働者に、労働時間や勤務地が無限定であることが期待されましたが、そのときに作られた日本企業の雇用管理システムは、いまだに改善されていないのです。コース別雇用における総合職の働き方は、ケア責任を担っている女性にとっては大きな不利益をもたらす間接差別だといえると思います。
日本のジェンダーギャップ指数(2023年)
総合(政治、経済、教育、健康) | 125位 | 0.647 | |
経済 | 123位 | 0.561 | |
労働参加率の男女比 | 81位 | 0.759 | |
同一労働における賃金の男女格差 | 75位 | 0.621 | |
推定勤労所得の男女比 | 100位 | 0.577 | |
管理的職業従事者の男女比 | 133位 | 0.148 |
世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書(2023年)から作成
―男女賃金格差の背景には、雇用における間接差別の実態があるのですね。日本の法律でも間接差別は禁止されているのでしょうか。
たしかに男女雇用機会均等法7条が間接差別を禁止しています。ただし、その対象となる行為は、均等法の施行規則が定めている三つの行為類型だけに限定されており、条文の効果は薄いと思います。間接差別の概念をより幅広く認めさせることも必要です。
―こうした差別について、個別の法律で対応するのではなく、体系的な法制を求める議論も生まれています。
日本は、憲法14条で法の下の平等を明記していますが、それを具体化する「差別禁止法」がないではないかと、国連の女性差別撤廃委員会からは、再三、指摘されてきました。最近では、「包括的差別禁止法」を作るべきだという議論も登場しており、重要です。人権保障のためには、性差別の禁止だけでなく、障害、人種、年齢など、さまざまな事由にもとつく差別を禁止する包括的な法制が必要だという議論です。
包括的差別禁止法では、差別とは何かという定義をおくこと、直接差別や間接差別、ハラスメントなどの行為を禁止して、効果的な救済制度を設けることなどが要請されます。将来的には大きな法律を作る必要があると思います。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月9日付掲載
厚生労働省は、男女賃金格差の二大要因を、勤続年数の男女差と、職階の男女差だと説明。しかし重要なのは、それらをもたらしている要因。私は、日本における強固な性別役割分業と、日本企業の内部システムに問題があると。
人権保障のためには、性差別の禁止だけでなく、障害、人種、年齢など、さまざまな事由にもとつく差別を禁止する包括的な法制が必要。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます