きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「新しい資本主義」の正体④ 「分配」戦略 格差を助長 分断生む

2021-11-22 07:09:56 | 経済・産業・中小企業対策など
「新しい資本主義」の正体④ 「分配」戦略 格差を助長 分断生む
岸田文雄政権の掲げる「新しい資本主義」は、分配のゆがみを温存し、労働者の間に格差をもたらす「分断」の資本主義です。
政府の「新しい資本主義実現会議」緊急提言は、「分配」戦略の要として賃上げ政策を掲げます。企業の賃上げを税制面で後押しし、消費の拡大とさらなる成長へつなげる狙いです。
税制優遇は、法人税減税が柱になるとみられます。中身は、安倍晋三・菅義偉政権が推進してきた「賃上げ減税」の焼き直しです。この間、賃上げはほとんど起きず、平均実質賃金は過去9年間で年22万円も減りました。

大企業だけ恩恵
減税の対象企業も限定的です。国内企業の6割以上が赤字決算で、法人税を納めていません。税制優遇の恩恵は、資本金規模が大きく、高利益の見込める大企業に集中します。中小企業と大企業で労働者間の賃金格差を広げる恐れがあります。
本気で賃上げを実現するのであれば、最低賃金の抜本的な引き上げに加え、中小企業ほど負担の大きい社会保険料の減免など実効性ある対策をとるべきです。
待遇格差の解消にも疑問符が付きます。
「提言」は、男女間の賃金格差を解消するため、「企業に短時間正社員の導入を推奨するとともに、勤務時間の分割・シフト制の普及を進める」と明記。シフト制は、使用者の意向で一方的にシフト(交替勤務)を減らされる不安定な働き方として、コロナ禍を機に法規制を求める声が相次ぎました。
女性が結婚や出産を機に正規から非正規へ置き換わる現状を踏まえ、正規のまま働き続けられる環境を整備する狙いですが、正規雇用に存在する男女賃金格差の解消は棚上げされています。女性が出産・育児を担うという前提で短時間雇用を押し付ければ、男女の待遇格差を助長しかねません。
第2次安倍政権以降の相次ぐ法改悪で、非正規は約4割まで増加。コロナ禍で大きな打撃を受けています。それにもかかわらず、「提言」は非正規の待遇改善について従来の施策をほぼ踏襲。「正規雇用と非正規雇用の同一労働同一賃金を徹底」すると唱えつつ、基本給や賞与の格差是正など具体策には踏み込みませんでした。
むしろ、産業構造の変化を口実に労働移動の円滑化を促し、副業・兼業の拡大といった雇用の規制緩和を進めようとしています。



京都総評がよびかけた、中小企業支援、最賃引き上げを求めるデモ行進=7月19日、京都市中京区

労働者保護こそ
それに対し、働き手を守るセーフティーネット(安全網)の整備は不十分です。
「提言」は、「フリーランス(個人事業主)の方々が労災保険に加入できるよう、労災保険の特別加入の対象拡大を図る」としています。特別加入制度は、加入が任意であるうえ、働き手が自ら保険料を負担しなければなりません。雇い主が保険料を払う本来の労災保険の適用を求める声が相次いでいます。
労働者性を広げ、いかなる働き方でも広く「労働者」として保護する法整備こそ必要です。(おわり)
(金子豊弘、小村優、清水渡、杉本恒如が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年11月20日付掲載


本気で賃上げを実現するのであれば、最低賃金の抜本的な引き上げに加え、中小企業ほど負担の大きい社会保険料の減免など実効性ある対策をとるべき。
「フリーランス(個人事業主)の方々が労災保険に加入できるよう、労災保険の特別加入の対象拡大を図る」となっていますが、本来なら雇い主が保険料を払う労災保険の適用を求める声が。

「新しい資本主義」の正体③ 経済安全保障 大企業優遇策の口実

2021-11-21 07:20:58 | 経済・産業・中小企業対策など
「新しい資本主義」の正体③ 経済安全保障 大企業優遇策の口実
米国と中国の先端技術の覇権争いが先鋭化する中で、日本国内で「経済安全保障」という議論が盛んに交わされるようになりました。今年6月に閣議決定した「骨太の方針」では、「経済安全保障にかかわる戦略的な方向性として、基本的価値やルールに基づく国際秩序の下で、同志国との協力の拡大・深化を図りつつ」進めると強調されました。今年の「通商白書」も「各国における経済安全保障の強化」に注目し、「米中の技術覇権をめぐる争いなどを背景とし、米中を始めとして、経済安全保障に関する取り組みが強化されており、新型コロナウイルス感染症の拡大によりサプライチェーンのぜい弱性が顕在化したこととも相まって、そうした傾向に拍車がかかっている」と指摘しました。


半導体受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)のロゴ=台湾、1月19日(ロイター)

明確な定義なし
「経済安全保障」という用語は、安全保障と経済の問題が密接に関わる文脈で使用される概念ですが、必ずしも明確な定義があるわけではありません。
岸田文雄内閣の下で新設された経済安全保障担当相に就任した小林鷹之氏は、10月5日の会見で「経済と安全保障がまさに融合していく世の中になっています」と発言したものの、「政府の定義も含めて、また法律をどうしていくかも含めまして、これは今後の検討事項」だとしました。「国の独立、生存、そして繁栄を経済面から確保していくこと。これを経済安全保障という形で定義」していきたいとの考えを表明しました。「独立」、「生存」「繁栄」というだけでは極めて抽象的です。「経済安全保障」という看板さえつければ、巨額利権まみれで、欺隔(ぎまん)に満ちた政策であっても進められる危険があります。
「日本は先端半導体の輸入依存度が高く、先端半導体の製造能力を有していない」として、「新しい資本主義実現会議」が8日に発表した緊急提言には、台湾の半導体企業の日本進出を後押しする文言が盛り込まれました。
「最先端半導体の受託製造でトップシェアを誇る台湾企業の日本進出は、日本の半導体産業の不可欠性と自律性を向上し、安全保障に大きく寄与することが期待される」
翌9日、半導体受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、熊本県での工場建設を正式に発表しました。スマートフォンなどのカメラに使われる画像処理センサーで最大手のソニーグループのソニーセミコンダクタソリューションズも出資。出資比率は20%未満となります。22年に着工し、24年末までの生産開始を目指します。製造するのは自動車などに使われる回路線幅22~28ナノメートル(ナノは10億分の1)のロジック半導体。月間生産能力は300ミリウエハー換算で4万5000枚を計画しています。最先端の半導体ではありません。ソニーGは新工場から画像センサー用半導体などを優先的に調達する方針です。当初の設備投資額は、約70億ドル。日本円に換算すると約8000億円。発表文では、政府が支援策を正式に決定する前の段階から「日本政府から強力な支援を受ける前提で検討しています」と強調していました。政府からの補助金は、半額の4000億円と見込まれています。

「複数年度支援」
「新しい資本主義実現会議」は、こうも提言しています。「先端半導体の国内立地の複数年度に渡る支援、必要な制度整備を早急に進め、強靱(きょうじん)なサプライチェーンを構築する」
政府は、複数年度にわたって、台湾の一つの企業に巨額の税金を注ぎ込む計画です。大企業への「ばらまき資本主義」にほかなりません。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年11月19日付掲載


「経済安全保障」という看板さえつければ、巨額利権まみれで、欺隔(ぎまん)に満ちた政策であっても進められる危険が。
「新しい資本主義実現会議」は、こうも提言。「先端半導体の国内立地の複数年度に渡る支援、必要な制度整備を早急に進め、強靱(きょうじん)なサプライチェーンを構築する」
政府は、複数年度にわたって、台湾の一つの企業に巨額の税金を注ぎ込む計画。

「新しい資本主義」の正体② デジタル化 「国民監視社会」に道

2021-11-20 07:05:09 | 経済・産業・中小企業対策など
「新しい資本主義」の正体② デジタル化 「国民監視社会」に道
岸田文雄政権は「広く関係者の幸せにつながる」「持続可能な資本主義を構築」するといいながら、その実、大企業の利益を最優先にしています。とりわけ危険なのは、医療・介護・教育などの「準公共分野」を、大企業の利益を増やす「成長戦略」の主要な柱に位置付けていることです。

第一に、これらの分野で蓄積される国民の個人情報をデジタル化(コンピューターで処理できる0と1の数列で記号化)し、大企業による利活用を進めようとしています。
岸田政権の「緊急提言」は、▽医療・介護分野で妊産婦・乳幼児・高齢者などの健康状態に関するデータをさまざまな主体が利用できる環境を想定して実証を行う▽教育分野でデジタル教材と学習指導要領をひも付けて、それらを検索できるシステムの開発と実証実験を進める▽将来的に分野横断的なデータ基盤の構築へつなげる―としました。

AIが分析活用
これは、経団連が「新成長戦略」などで政府に迫ってきた施策そのものです。経団連は、▽胎児期から死亡時までの健康状態▽学校・社会教育における学習履歴―などをデータ化し、企業や行政が保有するその他の個人データとひも付けて、データ共通基盤に蓄積することを求めたのです。企業や行政が人工知能(AI)を使って分析・活用するためです。
膨大な個人情報を活用して世界各国の市場を支配した米国や中国のIT(情報技術)企業に対して日本企業が劣後し、「デジタル敗戦」ともいわれる中、政府の後押しで後れを挽回する狙いです。日本医療総合研究所の寺尾正之研究・研修委員は監視社会化の恐れを指摘します。
「健康状態や学習履歴に関する機微な個人情報を営利企業に開放すれば、社会的差別や排除を引き起こす恐れがあります。実際、経団連は学習履歴を企業の『採用、処遇、評価』に使うと明言しています。政府は膨大な個人情報をマイナンバーカードへ集約して一元管理することも狙っており、国民のあらゆる行動を政府が把握する監視社会となる恐れもあります」



オンライン学習教材を紹介する経済産業省のホームページ

公教育の縮小も
第二の危険は、営利企業がつくるデジタル教材を悪用して、公教育を縮小しようとしていることです。
岸田政権の提言案は、▽1人1台のIT端末を活用して新たな学びの環境の整備(ギガスクール構想)を進める▽先端的教育ソフトウエアを導入して「個別最適な学びの充実」に取り組む学校を支援する―としました。
全日本教職員組合の波岡知朗副委員長は批判します。
「『先端的教育ソフト』は企業が営利目的でつくるものです。それを学校で大々的に使わせ、教師の役割を縮小することが『成長戦略』とされています。経済産業省の官僚は『小学校は午前中で終わりにして、学びたい子は塾に行けばいい』とまでいいました。事実上、公教育の民営化が狙われています」
学びの過程も変質するといいます。
「子どもがソフトを使って学習すると、AIが『次はこれをやったら?』と次の課題へ誘導します。できる子は先へ進み、取り残される子は自己責任とされる。『個別最適』の実態は差別・選別です。インターネットを通じてソフトを使った学習履歴はソフト制作企業に蓄積されます。企業はそれを営利目的で使おうとするでしょう。データを十分蓄積できなかった子やデータの提供を拒んだ子は生涯にわたって不利益を被りかねません。総じて、経済政策の中に教育を位置付けること自体が間違っています」
「新しい日本主義」の正体は、公的部門を侵食して大企業の利潤追求の場に変える、新自由主義なのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年11月18日付掲載


医療・介護・教育の分野の個人情報をデジタル化して、民間企業に提供するって。
福祉や教育の充実のためでなくって、民間企業の利益のために使われる…。
「子どもがソフトを使って学習すると、AIが『次はこれをやったら?』と次の課題へ誘導します。できる子は先へ進み、取り残される子は自己責任とされる。『個別最適』の実態は差別・選別」

「新しい資本主義」の正体① 科学技術立国 税金にたかる大企業

2021-11-19 07:09:36 | 経済・産業・中小企業対策など
「新しい資本主義」の正体① 科学技術立国 税金にたかる大企業
岸田文雄政権の目玉政策、「新しい資本主義」。その実現に向けた「緊急提言」案が「新しい資本主義実現会議」で示されました。「新しい資本主義」の正体はなにか、提言案などから考えます。

提言案は冒頭、「1980年代以降、短期の株主価値重視の傾向が強まり、中間層の伸び悩みや格差の拡大、下請企業へのしわ寄せ、自然環境等への悪影響が生じている」と述べ、新自由主義への反省ポーズを示し、「持続可能な資本主義を構築していく」とします。そのために必要なのが「成長と分配」であり、成長戦略ではとりわけ科学技術立国の推進が重要だと強調。その際、民間の技術開発などを「官が支援することを基本とする」としました。大企業のもうけを行政が税財政で支援するというまさに「たかり資本主義」です。

財界戦略と符合
「科学技術立国の推進」で具体的にあげられているのが、社会のデジタル化やグリーン、バイオなど「先端科学技術」です。これらは経団連が昨年11月に策定した「新成長戦略」で「集中投資」すべきとされた分野と重なります。
提言案は「ライフサイエンス分野の強化」として、新型コロナウイルスの経口薬について「国産の経口治療薬の研究開発を支援」「国による買い上げ」など極めて具体的に記述します。新型コロナウイルス対応の飲み薬を開発している国内企業は中外製薬や塩野義製薬など。「新しい資本主義実現会議」の有識者構成員には塩野義製薬の沢田拓子副社長が就任しており、自社の事業支援を政府文書に書き込ませたとみられても仕方ありません。
「クリーンエネルギー技術の開発・実装」では、「再生可能エネルギーの導入拡大」をうたいます。しかし、蓄電池の整備や余剰再エネ電気による水素製造などが具体策となっており、再エネ電気を送電線に優先的に接続する原則の導入などは盛り込まれませんでした。むしろ「再生可能エネルギーのみならず、原子力や水素などあらゆる選択肢を追求」するとしました。臭体的には、高速炉開発や小型モジュール炉の実証など原子力利用を明記。結局、再エネ拡大を看板倒れにする「口先資本主義」です。



中国で開かれた上海モーターショーにトヨタ自動車が出展した電気自動車をチェックする参加者=4月19日(ロイター)

自動車に手厚く
提言案は自動車産業について、「国内で550万人の雇用を抱える」基幹産業と強調。自動車の電動化推進を支援すると述べます。
具体的にあげられているのが車載用電池の生産支援です。「電池及び電池材料の大規模生産拠点の国内立地を支援する」としました。
国内自動車最大手のトヨタ自動車はこれまで、ガソリンと電気を併用するハイブリッド車を重視。電気自動車(EV)は製造していませんでした。しかし4月に15車種のEVを将来的に世界販売すると発表(10月に販売時期を22年中と公表)。9月には電池の開発と供給に対し、2030年までに累積1・5兆円を投資すると表明しました。提言案の車載電池生産支援はトヨタの動きとも符合します。
さらに、提言案は「電気自動車・燃料自動車等の購入を支援する」としました。生産から販売まで国が税財政で自動車産業を手厚く支援する方針です。(つづく)(4回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年11月17日付掲載


トヨタ自動車が地球温暖化対策としてEV(電気自動車)にシフトするって。EVに投資するってことは、将来に売れ筋になると見込んでいるからの事。
脱炭素の為には、官も民も投資が必要ですが、民の投資は利潤を目当てにしたもの。そこに官が税金で支援する必要なないのでは。



税と新自由主義③ 資本の支配 打ち破る力

2021-11-18 07:13:33 | 経済・産業・中小企業対策など
税と新自由主義③ 資本の支配 打ち破る力
政治経済研究所理事 合田寛さん

―グローバル化と新自由主義にどう対抗すればよいでしょうか。
グローバル資本主義の下で資本は簡単に国境を越えます。より低い税、より安い人件費を求めて移動し、諸国民に「底辺への競争」を強います。多国籍企業やその支配的株主に応分の負担を求める課題は困難に直面しています。しかし巨大な力とたたかわずにあきらめてはなりません。

世界的な連帯を
新自由主義の背後にグローバルな競争を利用した資本の支配があるならば、それを打ち破る力はグローバルな連帯の中から生まれます。税の世界で始まった国際協力の取り組みは、新自由主義と決別する道へ踏み出した大きな一歩です。
―どんな変化が見られますか。
税の国際協力は2012年に経済協力開発機構(OECD)の主導で始まりました。15年に最終報告書をとりまとめ、多国籍企業に国別報告書の提出を義務付けました。
国別報告書とは、事業活動を行っている国ごとの収入金額や税引き前利益、納付税額、利益剰余金、従業員数などの報告を求めるものです。多国籍企業と富裕者の隠された富を明るみに出し、失われた税収を取り戻すために活用できます。
国別報告書は課税当局だけが保有し、一般には非公開です。しかし研究者や市民社会の強い要求を受け、OECDは20年7月に企業名を匿名にして集計値を公開しました。国際NGOのタックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)はこれに基づいて税逃れの実態を調べました。
TJNの分析によると、多国籍企業と富裕者の税逃れによる税収損失は毎年4270億ドル(約49兆円)。減税競争などの波及効果を含めると税収損失は9800億ドル(約112兆円)にのぼります。



米国ニューヨーク市にあるグーグルの店舗の入り口に取り付けられた同社のロゴ(ロイター)

2本柱の新規則
―新しい国際課税ルールも決まりました。
16年以降、OECDの主導で約140カ国が参加する「包摂的枠組み」がつくられました。巨大IT(情報技術)企業などに課税するための新しいルールを検討してきました。今年10月に最終合意に達し、2本柱の新ルールを決めました。
一つは、多国籍企業の世界利益を合算し、売上高に基づいて各国に課税権を再配分するルール。ユニタリー(合算)課税と呼ばれます。配分される利益は総利益のうちのわずかな部分だとはいえ、現行ルールを打ち破る斬新な方式です。
もう一つは、法人税に世界共通の最低税率を設定するルール。半世紀続いた減税竸争に歯止めをかける画期的な性格を持ちます。
ただし最低税率が15%という低水準に設定されるなど、内容は不十分です。抜本的な改革に向けた取り組みをさらに進めなければなりません。途上国の意見が十分反映されなかったとはいえ、約140カ国が参加する枠組みの下で税の国際協力が進められたことは今後も重要な意味を持つでしよう。
―米国でも大きな変化が起こりました。
バイデン政権は「米国雇用計画」「米国家族計画」という二つの中長期プランの財源を、大企業への法人税増税と富裕者への所得税増税でまかなうという税制改革を打ち出しました。最低法人税率の設定に向けた国際交渉にも積極的に関与し、「底辺への競争」に終止符を打つ考えを示しました。法人税減税競争の先頭を走っていた米国が方向転換したのは歓迎すべき変化です。
「底辺への競争」に歯止めがかかり、国際的な税の協力体制が強められれば、各国は他国の動向にとらわれず、自国の法人税や資本所得課税を強化することができます。世界的な公正税制の実現へ大きなチャンスが訪れているといえます。
―世界の変化の背景には市民社会の行動がありました。
国際交渉で採用された画期的なルールは、TJNをはじめとする市民運動や有識者が提起し、導入を求めてきたものです。国別報告書も合算課税も最低法人税率も、すべてそうです。市民社会が監視と行動をいっそう強めれば、新自由主義的な税制改革を逆転させ、労働課税から資本課税へのシフトを進めることができるでしょう。
卿(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年11月12日付掲載


一つは、多国籍企業の世界利益を合算し、売上高に基づいて各国に課税権を再配分するルール。ユニタリー(合算)課税。配分される利益は総利益のうちのわずかな部分だとはいえ、現行ルールを打ち破る斬新な方式。
もう一つは、法人税に世界共通の最低税率を設定するルール。半世紀続いた減税竸争に歯止めをかける画期的な性格。
バイデン政権は「米国雇用計画」「米国家族計画」という二つの中長期プランの財源を、大企業への法人税増税と富裕者への所得税増税でまかなうという税制改革。
大企業や富裕層に応分の負担。税金は負担能力に応じて徴収を…。