ビジネスと人権 国連「訪日報告書」を読む(下) 差別構造の全面解体必要
労働者教育協会 筒井晴彦理事
国連「ビジネスと人権」作業部会の報告書は結論部分で、国に25項目、ビジネス界に10項目、市民社会に3項目を勧告しています。労働に関わるものを中心に紹介します。
条約批准を
国に対する勧告ではまず、▽リスクに直面するグループに対する不平等と差別の構造の緊急かつ全面的な解体▽国際労働機関(ILO)「雇用と職業における差別禁止条約」(第111号)、同「職業上の安全と健康に関する条約」(第155号)など4条約、6議定書の批准(表)―を求めています。
国連「ビジネスと人権」作業部会が批准を求めている条約と選択議定書
ILO第111号条約は、雇用と職業におけるあらゆる差別を禁止する条約です。第155号条約は、労働者の安全と健康を守るために具体的な対策を講じることを企業に求めています。この2条約はILOの中核的条約です。
そのほか以下のことを国に勧告しています。
▽人権デューデリジェンス(人権侵害を防止するための調査と対策)を義務付ける法律を制定する。
▽独立した強力な国内人権機関を遅滞なく確立すること。司法救済および裁判外救済へのアクセスを改善する。
▽同一価値労働同一賃金の原則を実施するための取り組みを強化し、男女間賃金格差を是正する。民間部門における女性代表の割り当て(クオータ制)の採用を含め、指導的地位に占める女性の比率を高める。
▽既存の差別禁止法を明確かつ包括的な差別の定義を盛り込む内容に改正することを含め、差別を公式に禁止し、制裁を科す。
▽技能実習生制度を改正する際は、国際的な人権基準に基づいて明確な人権保護を盛り込む。
▽労働監督を強化し、強制労働および人身売買の被害者の確認を強める。
▽在留資格にかかわらず、差別のない雇用機会への平等なアクセスと適正な賃金、安全な労働条件を保障することを含め、すべての労働者に労働法が適用されることへの認識を高める。
企業へ勧告
企業に対する勧告には以下のものがあります。
▽国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた苦情処理システムの確立。効果的な苦情処理システムとするため、すべての基準をジェンダーに配慮した方法で解釈する。
▽損害をあたえた被害者・共同体を効果的に救済する。
▽企業の意思決定機関に女性の代表を増やす。
▽就活生に対し、差別につながるような質問を撤廃する。あらゆる形態の差別、搾取、ハラスメント、権力乱用、その他の暴力を職場から撤廃する。
▽労働者の結社の自由と団結権、団体交渉権を促進する。
日本政府と経済界には、勧告内容の速やかな実施が求められています。
国連「ビジネスと人権」作業部会は、日本の人権状況について引き続き情報提供を求めています。人権後進国の日本の状況を国際社会に告発しながら、国際基準にもとついて、誰もが自分らしく生きることのできる社会を実現したいと思います。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月22日付掲載
国に対する勧告ではまず、▽リスクに直面するグループに対する不平等と差別の構造の緊急かつ全面的な解体▽国際労働機関(ILO)「雇用と職業における差別禁止条約」(第111号)、同「職業上の安全と健康に関する条約」(第155号)など4条約、6議定書の批准(表)―を求めています。
企業に対する勧告には以下のものがあります。
▽国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた苦情処理システムの確立。効果的な苦情処理システムとするため、すべての基準をジェンダーに配慮した方法で解釈する。
▽企業の意思決定機関に女性の代表を増やす。etc…
労働者教育協会 筒井晴彦理事
国連「ビジネスと人権」作業部会の報告書は結論部分で、国に25項目、ビジネス界に10項目、市民社会に3項目を勧告しています。労働に関わるものを中心に紹介します。
条約批准を
国に対する勧告ではまず、▽リスクに直面するグループに対する不平等と差別の構造の緊急かつ全面的な解体▽国際労働機関(ILO)「雇用と職業における差別禁止条約」(第111号)、同「職業上の安全と健康に関する条約」(第155号)など4条約、6議定書の批准(表)―を求めています。
国連「ビジネスと人権」作業部会が批准を求めている条約と選択議定書
・ILO「雇用と職業における差別禁止条約」(第111号) |
・ILO「職業上の安全と健康に関する条約」(第155号) |
・ILO「強制労働条約」(第29号)の2014年議定書 |
・ILO「原住民及び種族民条約」(第169号) |
・国連「すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する国際条約」 |
・国連「女性差別撤廃条約」の選択議定書 |
・国連「人種差別撤廃条約」の選択議定書 |
・国連「経済的・社会的・文化的権利に関する国際規約」の選択議定書 |
・国連「市民的・政治的権利に関する国際規約」の選択議定書 |
・国連「障がい者の権利に関する条約」の選択議定書 |
ILO第111号条約は、雇用と職業におけるあらゆる差別を禁止する条約です。第155号条約は、労働者の安全と健康を守るために具体的な対策を講じることを企業に求めています。この2条約はILOの中核的条約です。
そのほか以下のことを国に勧告しています。
▽人権デューデリジェンス(人権侵害を防止するための調査と対策)を義務付ける法律を制定する。
▽独立した強力な国内人権機関を遅滞なく確立すること。司法救済および裁判外救済へのアクセスを改善する。
▽同一価値労働同一賃金の原則を実施するための取り組みを強化し、男女間賃金格差を是正する。民間部門における女性代表の割り当て(クオータ制)の採用を含め、指導的地位に占める女性の比率を高める。
▽既存の差別禁止法を明確かつ包括的な差別の定義を盛り込む内容に改正することを含め、差別を公式に禁止し、制裁を科す。
▽技能実習生制度を改正する際は、国際的な人権基準に基づいて明確な人権保護を盛り込む。
▽労働監督を強化し、強制労働および人身売買の被害者の確認を強める。
▽在留資格にかかわらず、差別のない雇用機会への平等なアクセスと適正な賃金、安全な労働条件を保障することを含め、すべての労働者に労働法が適用されることへの認識を高める。
企業へ勧告
企業に対する勧告には以下のものがあります。
▽国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた苦情処理システムの確立。効果的な苦情処理システムとするため、すべての基準をジェンダーに配慮した方法で解釈する。
▽損害をあたえた被害者・共同体を効果的に救済する。
▽企業の意思決定機関に女性の代表を増やす。
▽就活生に対し、差別につながるような質問を撤廃する。あらゆる形態の差別、搾取、ハラスメント、権力乱用、その他の暴力を職場から撤廃する。
▽労働者の結社の自由と団結権、団体交渉権を促進する。
日本政府と経済界には、勧告内容の速やかな実施が求められています。
国連「ビジネスと人権」作業部会は、日本の人権状況について引き続き情報提供を求めています。人権後進国の日本の状況を国際社会に告発しながら、国際基準にもとついて、誰もが自分らしく生きることのできる社会を実現したいと思います。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月22日付掲載
国に対する勧告ではまず、▽リスクに直面するグループに対する不平等と差別の構造の緊急かつ全面的な解体▽国際労働機関(ILO)「雇用と職業における差別禁止条約」(第111号)、同「職業上の安全と健康に関する条約」(第155号)など4条約、6議定書の批准(表)―を求めています。
企業に対する勧告には以下のものがあります。
▽国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた苦情処理システムの確立。効果的な苦情処理システムとするため、すべての基準をジェンダーに配慮した方法で解釈する。
▽企業の意思決定機関に女性の代表を増やす。etc…