2021年09月24日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[“チェルシーFC”オーナ アブラモヴィッチはスケトウダラ漁獲割当を維持する]
サハリン州仲裁裁判所は、ロシア独占禁止庁の申し立てを退け、ユダヤ系ロシア人の石油王で英国プレミアリーグのチェルシーFCのオーナ、オリガルヒ(新興財閥)の*ロマン・アブラモヴィッチが関与する年間約1万トンのスケトウダラの漁獲割当を維持する判決を下した。
同裁判所は、独占禁止庁の主張が、訴えを完全に満たすものではないとしている。
独占禁止庁は、アブラモヴィッチらが経営する“ダリニイ”(Дальнее)社所有のサハリン州企業“ポロナイ”(Поронай)に漁獲割当を譲渡した企業自体が、違法な状態で実質的に外国資本管理を受けており、外国人投資法に抵触していることから、取引自体が無効だと指摘、“ギドロストロイ”(Гидрострой)社創業者で元上院議員のベルホフスキーも本件の関係者だと一部伝えられた。
独占禁止庁が、サハリン州仲裁裁判所に申し立てを行ったことから、同庁の主張が認められた場合、当該漁獲割当が、ロシア政府に一度返還され、オークションにより再配分されることが予想されていた。
“ポロナイ”は、2020年、“サリュート”(Салют)社から漁獲割当を譲渡された。
今年2021年の“ポロナイ”のスケトウダラの漁獲割当は、オホーツク海で1万880トンとなっており、製品市場価格は約7億5,000万ルーブルと見積もられた。
“サリュート”は、“エカルマ”(Экарма)グループの“アイルプ”(Айруп)社から分離独立する形で設立された。
2019年、独占禁止庁は、“アイルプ”が外国人投資の違法な管理下にあることを摘発していた。
2015年から“アイルプ”の資本の49%は、韓国企業“Myungsung Fishery”となっているが、独占禁止庁によると“アイルプ”の製品の主な購入者は同韓国企業であり、“アイルプ”の統制、権限を妨げていると指摘した。
このことから、独占禁止庁は、“アイルプ”が合法的に“サリュート”に漁獲割当を譲渡することは出来ないと説明していた。
*ロマン・アブラモヴィッチ(Роман Аркадиевич Абрамович)
1966年10月24日生まれ。ユダヤ系ロシア人の実業家。石油王。投資会社“ミルハウス・キャピタル”のオーナであり、“オリガルヒ”(新興財閥)の一人。また、チュクチ自治管区知事を務めた。“フォーブス誌”によれば、187億ドルの純資産を所有。英国プレミア・リーグのチェルシーFCのオーナ。
報告担当者 原口聖二:
2021年7月、ロシア大統領プーチンは、外国人資本参加規制強化法に署名している。
同法は“国防•安全保障戦略産業に対する外国人投資手続法”(外国人投資法)を改正、漁業分野の外国人資本参加の事前承認の義務付け上限を、50%から25%とする規制強化を目的としている。
これまで、ロシア漁業分野における外国人投資は、2008年4月29日付ロシア連邦第57-FZ号”外国人投資法”に基づき、資本の50%以上となる場合のみ、政府委員会の承認が必要とされていた。