ロシア漁業ニュースヘッドライン

北海道機船漁業協同組合連合会
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一般社団法人北洋開発協会

“チェルシーFC”オーナ アブラモヴィッチ 1万トンのスケトウダラ漁獲割当を失う可能性

2021-09-15 13:23:35 | 日記

 

2021年09月15日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

[“チェルシーFC”オーナ アブラモヴィッチ 1万トンのスケトウダラ漁獲割当を失う可能性]

ユダヤ系ロシア人の石油王で英国プレミアリーグのチェルシーFCのオーナー、オリガルヒ(新興財閥)の*ロマン・アブラモヴィッチが年間約1万トンのスケトウダラ漁獲割当を失う可能性がある。

ロシア独占禁止庁は、アブラモヴィッチらが経営する“ダリニイ”(Дальнее)社所有のサハリン州企業“ポロナイ”(Поронай)に漁獲割当を譲渡した企業自体が、違法な状態で実質的に外国資本管理を受けており、外国人投資法に抵触していることから、取引自体が無効だと指摘している。

“ギドロストロイ”(Гидрострой)社創業者で元上院議員のベルホフスキーも本件の関係者だと一部伝えられている。

独占禁止庁は、サハリン州仲裁裁判所に申し立てをしており、同庁の主張が認められた場合、当該漁獲割当は、ロシア政府に一度返還され、オークションにより再配分されることが予想される。

第1回目の口頭弁論は2021年9月21日に予定されている。

“ポロナイ”は、2020年、“サリュート”(Салют)社から漁獲割当を譲渡された。

今年2021年の“ポロナイ”のスケトウダラの漁獲割当は、オホーツク海で1万880トンとなっており、製品市場価格は約7億5,000万ルーブルと見積もられる。

“サリュート”は、“エカルマ”(Экарма)グループの“アイルプ”(Айруп)社から分離独立する形で設立された。

2019年、独占禁止庁は、“アイルプ”が外国人投資の違法な管理下にあることを摘発していた。

2015年から“アイルプ”の資本の49%は、韓国企業“Myungsung Fishery”となっているが、独占禁止庁によると“アイルプ”の製品の主な購入者は同韓国企業であり、“アイルプ”の統制、権限を妨げていると指摘した。

このことから、独占禁止庁は、“アイルプ”が合法的に“サリュート”に漁獲割当を譲渡することは出来ないと説明している。

“エカルマ”グループは、現在、この問題について最高裁で係争中にあり、代表コースチンは、コメントは控えたいとしている。

水棲生物資源の配分を所管するロシア漁業庁は、第3者の立場であり、動向を見守りたい旨を表明している。

*ロマン・アブラモヴィッチ(Роман Аркадиевич Абрамович) 

1966年10月24日生まれ。ユダヤ系ロシア人の実業家。石油王。投資会社“ミルハウス・キャピタル”のオーナーであり、“オリガルヒ”(新興財閥)の一人。また、チュクチ自治管区知事を務めた。“フォーブス誌”によれば、187億ドルの純資産を所有。英国プレミア・リーグのチェルシーFCのオーナー。

報告担当者 原口聖二:

2021年7月、ロシア大統領プーチンは、外国人資本参加規制強化法に署名している。

同法は“国防•安全保障戦略産業に対する外国人投資手続法”(外国人投資法)を改正、漁業分野の外国人資本参加の事前承認の義務付け上限を、50%から25%とする規制強化を目的としている。

これまで、ロシア漁業分野における外国人投資は、2008年4月29日付ロシア連邦第57-FZ号”外国人投資法”に基づき、資本の50%以上となる場合のみ、政府委員会の承認が必要とされていた。

 

(関連過去事例:中国企業パシフィック・アンデス事件)

2014年9月、中国企業“パシフィック・アンデス”(PacificAndes International Holdings)グループがロシアのスケトウダラ事業から完全に撤退した。

“パシフィック・アンデス”は、切り身製品を主体とする世界最大の漁業コングロマリットだったが、2012年、同社が株主向けに、多数のロシア極東漁業会社を実質管理して、ロシア海域のスケトウダラの60%を支配している旨の報告をしたことに端を発し、ロシア独占禁止庁から調査を受け、外国人投資法等の違反を指摘され、政府委員会の決定により、現地登記の資産の売却を命令された経緯にある。

一方、現在の“ルスカヤ・ルイボァプロムシェレンナヤ・カンパニヤ”「ロシア漁業会社」(Русская рыбопромышленная компания) の前身で、当時のロシア水産投資企業グループ“ルスコエモーレ”「ロシアの海」(Русское море”)の”ルスコエモーレ・ダブイチャ"(Русское море добыча")は、その後、“パシフィックアンデス”が関与していたとされる“トウルニフ“(ТУРНИФ)、“イントラロス”(Интрарос)、“ヴォストークルイブプロム“(Востокрыбпром”)、“ソフガバニルイバ”(Совгаваньрыба)、"バルトスタル・ホールデイング“(Балтстар холдинг")、"マリックス”(Маликс")等を次々と買収、2013年に、ロシア海域スケトウダラの最大のクオータ・ホルダーとなった。

当時、一部投資関係者は、この中国資本に関する調査が、同グループの資産入手コストを下げ、低下価格なものにするためのものと、その背景を分析していた。

当時の“ルスコエモーレ”「ロシアの海」は、かねてから極東漁業に関心をもっており、幹部関係者によれば、中国企業“パシフィック・アンデス”に関する噂と、提携されていたとされる極東漁業会社への調査は、彼らの資産価値を削減させ、市場価値を下げる、安全な圧力をかけたということができると指摘していた。

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