水産北海道 2021-09-30 | ニュース
道機船連が密漁取締強化と違法漁具撤去を国に要請 オホーツク海のズワイガニ漁場価値の回復を求める
違法漁具の取り外し
道機船連は9月28日、オホーツク海を中心にロシア人乗船の便宜置籍船による密漁行為の継続と違法設置漁具の問題を重く見て、水産庁道漁業調整事務所に対し、密漁取締強化と違法漁具の引き上げを求める要請を行った。
要請は、道機船連の原口聖二常務が同調整事務所を訪ね、田原康一所長に風無成一代表理事組合長名の要請書を手渡した。
それによると、道機船連はロシア報道、関係者からの情報から2000年代後半、ロシア水域(EEZ)で主にカニを対象とした密漁取締が強化されると、密漁グループはロシア水域を波なら日本水域(EEZ)にシフト、日本の港を実質的「母港」にし、オホーツク海を中心にロシア人乗組員の便宜置籍船による日本水域での密漁漁獲物を貿易に見せかけ、日本の港へ製品を陸揚げするなど違法活動を継続していたと理解しており、これによって日本水域での違法漁具が増加、日本人漁業者にとって当該海域の漁場価値が一気に低下したと認識している。
また、オホーツク海を中心とした日ロ周辺海域は、2014年日ロIUU漁業防止協定が発効し、水産庁の取締活動の効果で、密漁は減少したものの、過去に設置された膨大な放置漁具の完全な撤去には至っていないのが共通の認識と考える。加えて完全に密漁が根絶されていないことから、引き続き新たな違法漁具も設置され、今年2021年に入っても、道機船連所属の沖合底引き網漁船が日本EEZオホーツク海で操業中、カニ漁具を揚網、自船の推進機器に絡める被害に遭うなど、乗組員の生命が危機にさらされ、漁業経営に莫大な被害をもたらす事例が複数回発生している。
このことから安全操業を確保し、日本EEZ海域の漁場価値を回復させるため、改めて水産庁道漁業調整事務所に対し、ロシア人乗組員が乗船する便宜置籍船の密漁取締強化と、オホーツク海のカニ漁場を中心として違法設置漁具の引き上げに関し、協力要請を行った。なお2017年日本でも「違法漁業防止寄港国措置協定」(PSMA)が発効してことを指摘し、この協定の厳格適用を遭わせて要請した。
その他、要請では、機船連所属の沖底漁船によるオホーツク海のズワイガニ漁獲量が日ロIUU漁業防止協定発効以後、急速に上昇、2012年のほぼゼロから2016年には800㌧に達した。その後、2019年までに200㌧、2020年には100㌧に満たないレベルまで低下し、再び漁場価値が落ちている一方で、米中の強い需要からズワイガニの国際価格は日本が買い負けするほどの形成を示し、沖底経営にとってズワイガニが国内市場への仕向けによる潜在的戦略資源に位置づけられることを指摘した。
最近の沖底漁船の漁具被害事例としては、2021年9月6日午前6時、オホーツク海枝幸沖合で枝幸港根拠の「第八龍寶丸」が操業中、違法に設置されたカニ漁具を揚網、自船の推進機器に絡め操業を中断した。同船は8月30日にも同様の被害を受けている。
2021年10月01日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[ロシアEEZ沖獲り太平洋サケマス漁獲割当オークションの開催が発表される 効率漁具・漁法未解決]
ロシア漁業庁は、ロシア極東排他的経済水域(EEZ)における太平洋サケマス沖獲り向け漁獲割当オークションを今年2021年12月7日-9日の3日間にわたり開催すると発表した。
落札による漁獲割当配分の権利は2033年(2022年から12年間)までで、6海域、5魚種の57ロットが、全体のTAC設定の約2割の範囲で別表のとおり上場される。
申請受付は9月30日から開始され、締め切り期限は12月2日までとなっている。
ロシアでは、2016年以降、太平洋サケマス漁獲を目的とするEEZ、領海、内水面での流し網の使用は禁止されており、この効率的代替漁具・漁法問題は未解決となっている。
ロシア漁業庁は、科学調査のレヴェルではあるが、トロールで太平洋サケマスが漁獲されるため、この漁法の使用を示唆している。
ロシア漁業庁は、今年2021年のロシアEEZにおける太平洋サケマス沖獲り向けTAC約2万1,000トンに対し、漁獲割当としてベニザケ3,700トンを含む約6,000トンの太平洋サケマスを7社に配分しているが、この実績に関する情報は確認される範囲で伝えられていない。
当該資源利用に関するアクセス、特に漁具・漁法に関する情報が、関連する日本業界にとっても、注目されている。
更に別要素として、ロシア漁業庁は、2021年3月18日、同庁長官シェスタコフが議長となり、傘下科学研究機関代表者会合を開催、来年2022年の自国EEZ太平洋サケマスの沖獲り向けTAC設定について、今年2021年の2万1,000トンから一機に1/3相当の7,000トンを削減、1万4,000トンとする勧告を承認している。
主要魚種のベニザケとシロザケもそれぞれ約3,000トンずつ削減されることとなっている。
なお、沿岸定置網漁業における太平洋サケマス操業は、非TAC対象で、別途、漁獲勧告に基づき行われている。
報告担当者 原口聖二:北クリール海域のベニザケを例に、向う12年間TACの増減がないことを前提とし、今年2021年とTAC設定が全く同じ場合と、勧告どおり来年2022年の削減設定が承認された時のスタート・プライスでの落札単価試算。
(北クリール海域ベニザケ1ロット)
①2021年TAC設定踏襲の場合
4,595トン x 1.840% x 12年 1,015トン
13,840,686ルーブル÷1,015トン 13,636ルーブル/トン 約20.5円/kg
②2022年削減TAC設定の場合
3,064トン x 1.840% x 12年 677トン
13,840,686ルーブル÷677トン 20,444ルーブル/トン 約30.7円/kg
③参考
現在、ロシア政府が準備している水棲生物資源利用税引き上げ法案でのベニザケ
ベニザケ 20,000ルーブル/トン ⇒ 30,000ルーブル/トン 約¥45.0/kg
2016年02月26日 一般社団法人北洋開発協会(原口聖二)
[太平洋サケマス漁獲の流し網漁業代替にかかる表層定置網の有効性検証の計算]
ロシア排他的経済水域における流し網漁業禁止に伴い、遡河性魚種の漁獲のため許可される代替漁法リストが極東漁業規則に盛り込まれることになる。
業界と科学研究機関は合理的で安全な代替漁具を見出したが、現在、これが同漁業規則改正案にリストされていないことが問題となっている。
これは既存の漁船の構造的特徴をいかす表層定置網であり、業界は唯一現実的に代替可能な漁法だと主張している。
業界が科学研究機関に依頼し、この有効性を検証した計算の条件設定等は次のとおりとなっている。
2021年10月04日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[2021年漁期 ロシア極東・北海道沿岸シロザケ操業概況(9月29日)
“2021年漁期 40°N以北-180°E以西沿岸 ロシア・北海道 シロザケ漁獲量比較”
今年2021年漁期、ロシア極東全体のシロザケの生産量は、同年9月29日までに6万4,331トンとなり、これに北海道の漁獲量2万7,164トンを合わせると、40°N以北、180°E以西の両地方沿岸で9万1,495トンのシロザケが漁獲された。
北海道に隣接するサハリン州の沿岸のシロザケ漁獲量は、報告日までに1万7,233トンで、ロシアの生産の13.4%にとどまっており、対北海道比では63.4%となっている。
なお、報告対象沿岸における北海道の漁獲量シェアは29.7%となっている。
2021年09月30日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[日本EEZ“またがり資源”韓国近海スルメイカ操業概況(9月17日)]
“二艘引き西海トロール 韓国イカ漁業を牽引“
韓国漁船による自国EEZでの2021年度漁期(管理期間2021年7月-2022年6月)の2021年7月1日から同年9月17日までのスルメイカの漁獲量は、2万140トンで、前年度同期の257%、TAC設定8万3,830トンに対する開発率が24%となっている。
前年度漁期となる今年2021年1月1日から、資源管理を目的に近海網漁船にもイカのTAC管理が導入されている。
当該漁業は、新年度漁期開始から報告日までに、既に3,340トンを漁獲、当初枠に留保枠を合算してもTAC開発率は既に70%となり、今後の展開次第では、漁業種間利用調整、あるいは期中見直しに発展し、波紋を呼ぶ可能性のある進捗となっている。
一方、科学研究機関の勧告により、各漁業種の内、唯一、TACを拡大させた二艘引き西海トロールは9,020トンを漁獲し、前年度同期の200%を超える生産となっており、全体の45%を占めプレゼンスを発揮、今漁期、韓国イカ漁業を牽引する位置づけとなっている。
西海トロールは、2018年度漁期に試験的にTAC設定が導入され、2019年から正式枠となった経緯がある。
なお、主要漁業の沖合イカ釣は、ロシア政府間協定に参加している漁船もあり、まだ3,840トンだが、それでも前年同期の162%の生産となっている。
2021年09月30日
北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[アレッグ・カン創業漁業会社“クック”への債権者破産申し立てが認められる]
極東の“カニ王”と称されたアレッグ・カン(Олег Кан)が創業した、漁業会社クリリスキー・ユニヴァサリヌイ・コンプレクス(Курильский универсальный комплекс:“КуК”:“クック”)の破産宣言がサハリン州仲裁裁判所によって行われた。
香港の取引業者“C-World Limited”は、2020年8月、カニ製品の供給契約を結んだが“クック”が前渡金を受け取りながらこれを履行しなかった。
“C-World Limited”は、約3,500万ドル相当の賠償を求め提訴していたが、ロシア当局が“クック”の銀行口座を停止させたことから、債権者破産申し立てに踏み切ったとされている。
今回、サハリン州仲裁裁判所は“C-WorldLimited”の請求を合理的であると認めたが、同時に、“クック”は他の債権者に対して債務を負っており、返済の可能性に関する内容は明らかにされていない。
アレッグ・カンには2014年から2015年、カニを輸出する際、製品価値を過小評価し脱税した疑いがかけられている。
製品はパナマの会社への通関価格で輸出申告されたが、実際には、はるかに高い価格で日本の企業へ輸出され、ロシア国家の損害は2億1,300万ルーブルと見積もられている。
また、アレッグ・カンには、2010年にウラヂオストクで殺害された同業他者ワレリイ・プヒデンコ(Валерий Пхиденко)事件への関与の疑いがかけられている。
なお、アレッグ・カンは、海外逃亡中とされ、国際指名手配中となっている。
2021年09月29日
リポート 北海道機船漁業協同組合内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[2021年漁期北海道隣接サハリン州シロザケ操業概況(9月26日) 北海道沿岸との進捗比較]
今年2021年漁期、北海道に隣接するサハリン州の沿岸のシロザケ漁獲量は、同年9月26日までに1万6,000トンで、一方の北海道の沿岸は2万300トンとなっている。
また、ロシア極東全体の生産量は報告日までに6万3,050トンで、これに北海道沿岸を含めると、おおまかに40°N以北、180°E以西沿岸で8万3,350トンのシロザケが漁獲されたことになり、サハリン州と北海道のシェアは、それぞれ、19.2%と24.4%になる。
他方、当該操業を序盤リードしてきた東西カムチャツカ半島沿岸は2万4,930トンで約3割となっている。
なお、南クリール沿岸と東サハリン沿岸の漁獲ダイナミズム、進捗は、別図の通りとなっている。