2022年08月31日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[世界市場におけるスケトウダラ製品の強い需要]
米国水産業界の多くのセクターが、追加貿易関税、新型コロナウイルス(以下CV19)拡散防止対策、そして最近ではウクライナ情勢の影響に耐えている中、ベーリング海のスケトウダラ製品はかつてないほど順調に伸長している。
CV19により米国国内で消費されるスケトウダラのフィレとすり身の需要が急増し、ウクライナ情勢が世界市場での米国製品の需要を強化するための役割を果たした。
米国アラスカのスケトウダラ生産者協会会長クレイグ・モリスは、常にこのような状況ではないが、過去、例を見ない好調となっていると語り、この3年間、主にマーケティングで外食市場の閉鎖等、いくつかの深刻な問題を抱えてきたものの、スケトウダラのフィンガー・スティック・フライ(冷凍食品)が、在宅の勤務者、学生、家族の食卓に流れ込み、国内消費を増加させ続ける支持者を確立することになったと加えた。
外食産業に流通していた生鮮、冷凍水産物は2020年に大打撃を受けたが、食料品小売市場は記録的な売り上げとなり、昨年2021年には外食市場も回復したため、製品の供給はCV19前のレベルをも超え続けた。
米国農務省は、2011年-2016年、年間300万ドルのスケトウダラ製品の政府買上を行ってきたが、昨年2021年に大幅に拡大して3,500万ドルを購入、今年2022年については5,746万ドルが見積もられている。
買上製品の中心はフィンガー・スティック・フライで、小売店ばかりでなく、業務用として全米の学校給食プログラム、食糧援助プログラム等に供給された。
これまで大量のロシア産スケトウダラがH&G(ドレス:シングル・フローズン)に1次加工されて中国に供給され、そこでフィレに2次加工(ダブル・フローズン)されることで世界市場に供給されてきた。
しかし、ロシアのスケトウダラ漁船団の近代化における最近の進歩は、供給体制を変え始めている。
ロシア産スケトウダラはH&Gとして中国に供給されるばかりでなく、一部、洋上でフィレ加工(シングル・フローズン)まで行われ、製品の世界市場への直接供給が開始されている。
現在は、ウクライナ情勢による一部制裁措置等、貿易の鈍化で、ロシア漁業は国内市場への製品の供給強化に力点を置いており、米国にとってロシアとの世界市場での競合に休息の時となっている。
米国漁業の需要に応えたフィレの増産は、供給不足に向かうすり身市場にもインセンティヴを与えている。
世界市場のすり身も同様に強い需要を維持しており、2022年末に向けて、日本、韓国向けの製品価格が大幅に押し上げられると予想されている。
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