裏山の栗の花が満開で、窓を開けると青臭い独特の匂いが漂ってくる。
蜜蜂は栗の花の蜜が好きなので、栗の木の下で様子を見ていたが、蜂の姿は見当たらなかった。
栗の蜂蜜はほんのりと花の香りがして、独特のくせはあるが、通にはたまらない味だといわれている。
栗は腐食に強い木なので、鉄道の枕木や土木用材などに多く伐採されて飛騨でも少なくなり、国産の栗蜜はめったに手に入らない。
屋根の庇に置いてある蜜蜂の巣桶に、幻の蜜を運んできてくれないかと、毎日見に行っているが未だ入らない。
笹ゆりは終わりが近づき、日陰の遅咲きだけが今を盛りと香りを放っていたが、間もなく散りそうだ。
崖にはオレンジ色の「木いちご」がたくさん実を付けていた。
木いちごは種類が多いが、オレンジ色は甘味は薄く味も淡白なのでたくさん食べられる。
手を触れるとポロッと落ちるくらいに熟したいちごを、朝露と一緒に口に含むと野の味が口中に広がる。
桑の実が終わったので、これからしばらくはいちごが楽しめそうだ。
「またたび」も葉が白くなり、かわいらしい花を付けていた。
またたびの実は猫がよだれを垂らして喜ぶというが、これとよく似た「さるなし」の実は人がよだれを垂らすほど旨い。
月が変わって、裏山も少し賑やかになってきた。
「飛騨の山里暮らし」 7月号をUPしたのでご覧下さい。