夕べから降り始めた雪は、今日も断続的に降っている。
前山も枯れ木に花が咲いたように景色が一変した。
除雪車が走った後は、道路までの雪かきと薪の運搬をして朝の日課が終わった。
雪降りは、晴れた日に比べて寒さは余り感じないが、暗い空を見ていると仕事のモチベーションが上がらない。
それでも重い腰を上げて作業場に入り、中断していたポーチチェア(飾り台)の加工に取り掛かった。
この家具は何台も作っていて、構造もデザインも頭に入っており、複雑な加工もない。
フリーハンドで描いた部品図と、寸法を書き込んだメモだけで加工をしていたら、ほぞ穴を反対の面に掘ってしまった。
図面通りに加工をしていればしくじる事もないが、慣れと記憶を頼りにやっていると失敗してしまう。
体で覚えた技は忘れることはないが、頭で考えながらやる仕事はよく間違える。
椅子の背や脚のサイズ、座の基本的な高さなどは頭に入っていたが、これも記憶が曖昧で不安を感じることが多くなった。
平行して複数の作業をしていると、先の記憶が飛んでしまって、すぐに思い出せない事も増えてきた。
飾り台は埋め木でリカバリー出来たし、納得できるレベルで仕上がったが、また自身を失くす現実を味わってしまった。