飛騨地方にもようやく太陽が戻ってきた。
風は冷たいが、5月の陽光で、山が輝いている。
丸まって縮んでいたトチの葉が、太陽に向かって一斉に開いた。
昨日までは田んぼに入っても、長靴を通して水の冷たさが伝わってきたが、今日は水も温んでいた。
午前中で野良仕事を終え、朝取り野菜を手土産に名古屋に向かうことにした。
未だちょっと細いが、畑で取れるのはネギしかなく、少し寂しいので裏山で山ウドを掘って、みやげに加えた。
水路で洗い、藁で束ねてダンボール箱に入れたら、このまま市場へ出荷できそうな感じになった。
例によって、せせらぎ街道の「清見庵」の蕎麦で腹ごしらえをした。
同行のユキ(柴犬)も、この店と馴染みになり、広い庭で日向ぼっこをしながら、おとなしく待っていてくれる。
西ウレ峠のカラマツは濃い緑に、ナラやクリも淡い新緑に変わっていた。
冬枯れの雪景色が、ついこの前であったような気がするが、今日は初夏の風景だった。
この街道は、季節の移り変わりが肌で感じられる。
坂本峠越えの旧道が開いていたので、久し振りに通ってみたが、まるで緑のトンネルを抜けるようで気持ちが良かった。
飛騨と美濃を結ぶ峠道は、険しい山中を通るので、冬季は閉鎖されるし、大雨や土砂崩れなどで通行止めになることが多く、年間半分以上も閉ざされる。
1車線の曲がりくねった道だが、鹿や猿に出遭うことはあっても、対向車に会うことはめったにない。
秋の紅葉と初夏の新緑が特に美しいので、この時期は名古屋の往復に利用している。