リオネル・メッシの記憶

W杯優勝のアルゼンチン代表主将、リオネル・メッシの記憶です。メッシはアルゼンチンのロサリオで少年時代を過ごしますが、当時成長ホルモンの分泌障害を患っており、このままでは背が伸びないという診断を受けていました。そんなメッシを、スペインのバルセロナが治療費を負担する約束で、少年時代に獲得した経緯があります。その治療の成果もあって、メッシは167cmと大きくはないものの、大人として相応の体型になることができました。

バルセロナ時代のメッシは、その圧倒的な個人技が秀逸でした。彼の全盛期は、まとめて3人、4人とドリブルで抜いてゴールを決めることもありました。DFをゴール前に上げていて、取られたらカウンターを食らってしまうCKでも、ショートコーナーからドリブルを見せたこともありました。メッシが、絶対に取られないという自信があったから故のプレーだったことでしょう。

当時、バルセロナの映像を見ると、相手が必死で立てたメッシ対策がいろいろあって印象的でした。欧州CLで対戦したローマは、両サイドの攻撃的MFをSBの外側まで下げて6バックで守ってきました。クラブW杯で対戦したリバープレートも、ダブルボランチを守備専念にして、メッシが得意とするバイタルエリアに人数をかけて守ってきました。それでも、メッシはどこかで隙を見つけて点を取れることが多かった印象です。

2010年代はバルサのメッシと、レアルのCロナウドが、試合数を上回る高いレベルの得点王争いを繰り広げていました。そのため、この時期の欧州最優秀選手はメッシかCロナウドのどちらかで決定という時期が長かった印象です。メッシはユース時代から育ったバルサへの愛着が強く、他チームからのオファーは「見ないで断る」ほどでした。

もっとも、アルゼンチン代表としてのメッシは、「バルサほど機能させられていない」という評価でした。メッシは守備をしないので、その分を1枚守備的MFでカバーさせて対応しましたが、メッシが封じられたときに攻撃が機能しなくなることが多かった印象です。そのため、メッシはなかなか代表でのタイトルがなかったですが、昨年南米選手権で優勝したことで突破口が開きました。

今は、フランスリーグのPSGに在籍します。昨年不振で、「メッシの時代は終わった」という評価もありましたが、それを今回のW杯優勝で打ち破りました。強引なドリブルはあまり見られなくなり、ゲームメーカー的にさばくプレーも多くなりましたが、今でも上手いことだけは間違いありません。そんな彼を、写真のように撮っておけたことは、自分自身の経験として大切にしたいと思います。