田中達也(新潟)、現役引退

現在、J2のアルビレックス新潟に所属している、元浦和FW田中達也さんの現役引退が発表になっていました。田中達也は、帝京高校から2001年に浦和に加入します。当時、1年生からレギュラーだったと聞いたのでエリートと思っていましたが、のちにCMで紹介されたエピソードでは「100人中80番目の選手」から這い上がったと聞きます。

プレースタイルはスピード型でした。入団前はドリブルにこだわりがありましたが、プロでプレーするに従って点を取るノウハウを身に着けてきました。2001年当時、ゲームメーカーの小野伸二と最も感覚が合っていたFWで、スペースを見つけて体の向きを工夫してパスを出しやすいようにしており、小野伸二もパスを出すことを喜んでいる様子に見えました。

彼のブレイクは2003年、ブラジル人FWエメルソンと2トップを組んでナビスコ杯(現ルヴァン杯)のベストヤングプレーヤー賞を受賞した頃です。点を取るノウハウはエメルソンから学んだと話しており、枠が見えたら打つ、ドリブルはゴールから逆算して見せるなどはエメルソンから得たノウハウです。まだ20歳と若かった田中達也はアテネ五輪にも出場し、前途は洋々としているかに思えました。

そんな彼のサッカー人生に影が差し始めたのは、2005年の駒場スタジアムで相手DFのファウルタックルで足首を脱臼骨折したことからです。足首があり得ない方向に曲がってしまうほどの大重傷で、大手術を経て足首にプレートを埋めながら翌2006年に復帰を果たしますが、この負傷の後は足首をかばうあまり他の部分を負傷するなど、苦しんだキャリアになってしまいました。

また、戦術的に言えば、田中達也は1トップに向いていない選手という理由もありました。どうしても、瞬間的なスピードで横にいるもう一人のFWと連携して点を取るタイプなので、キープやパスを要求される1トップは苦手でした。3-6-1を旗印とするミシャが浦和の監督になったことで出番を失い、2012年限りで新潟に移籍して浦和を去りました。

しかし、それから10年も新潟でプレーできたのは立派です。プロ意識が高いという理由でサポーターの信頼も厚い選手で、新潟では試合に出るためにはとMFもこなしたと聞きます。浦和でも新潟でもサポーターに愛され、39歳までプレーできた、幸せなサッカー人生だったことと思われます。