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旅するランチ 013 - イカのしゃぶしゃぶ - 「お食事処 花清」(館山市長須賀)

2014-04-16 22:44:09 | 旅するランチ

2月も終わる頃、南房を巡った。

ここ毎年、菜の花が咲く頃に房総に行くことが年中行事のようになっている。

秋には彼岸花、春には菜の花、ポピー、夏には浜木綿が咲き乱れる南房総は、いつの季節もボクの目を楽しませてくれる。

 

ひなびた港。潮の香りが微かにする。

東京湾の内湾を出て館山に入ると、潮の香りは若干強くなる。

千葉県も南端までくると、さすがに旅気分だ。

館山はウミガメの産卵地でも有名だが、今もウミガメが来るのだろうか。

 

取材が終わって、「花清」という割烹料理のお店で昼食をいただく。

白い木綿の暖簾が小春日和の風にたなびいている。

ランチのコース。

お造りはさすが。地ものである。

温泉旅館に泊まると、決まってお造りが出てくる。それが山奥にあっても。さすがに山奥のそれには閉口する。

やっぱり、魚は地ものでなくてはいけない。

「お造り」は潮の香りのするところで食べたいものだ。

そうこうするうちに、給仕の方が、小鍋に火を入れに来た。ボクはそれをてっきり、鍋物なのかと思っていたが、実はそうではなかった。

 

初めて聞いたのだが、それは「イカのしゃぶしゃぶ」だったのである。

薄く造られた白いイカの身を沸騰した出汁のおつゆに浸すと、少し身が縮こまって白さが際立つ。そう、この瞬間だろうとイカを出汁つゆにつけて食べると、これまで食べたこともない食感が口の中に広がるのだ。

イカであってイカでない。つまり、イカ以上でもなくイカ以下でもない。

こりこりとした食感に、時折ブチっといく感覚は、それはそれは悪くない。

「イカのしゃぶしゃぶ」は最高だった。

 

イカは偉大である。

刺身はもちろん、焼いてよし、似てよしの万能プレーヤーだ。

しかも、「イカそうめん」や「イカ徳利」といったように、違うものに代用される。これがたことなるとそうはいかない。 

「花清」のお座敷に座っていても、磯の香りがただよってくる。

座敷も香りも料理も落ち着く。

ランチなのに、ついついビールを頼んで、一杯飲りながらおかずをつつく。

 

やっぱり春は南房が一番だ。

春を感じる、房総の旅である。

 

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