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お風呂さすらい 54 「湯本温泉 公衆浴場恩湯」(長門市深川湯本)

2015-06-04 02:55:41 | お風呂さすらい

山々に朝もやが立ちこめている。

早朝7時。わたしは、床を抜け出て、風呂に向かった。山々には秋の気配。ひやりとする空気は凛と躰を引き締めるばかりでなく、気持ちまで洗い流してくれるようだ。

階段を降りて、川沿いを歩く。

犬の散歩をするご婦人とすれ違うと、何故か自然と口をついた。

「おはようございます」。

 

生まれたての朝。まっさらな心。

川の流れは清らかで、微かに流れの音を湛えている。

その音だけが、この世界にある唯一のもの。

 

この川を少し上れば、見えてくるはずのあの建物。

昔から変わらないたたずまいは、威厳のある温かみ。

木造に不似合いであるはずのネオン管が、この温泉建築を、時には懐かしみを感じさせ、時には異形にも映し出す。

サザエさんのオープニング、山口の回でも登場した「湯本温泉 恩湯」。

その早朝の湯浴にわたしは向かっている。

 

10年ほど前に一度、この「恩湯」に来たことがある。

なんの知識もなく、かみさんに連れて来られ、その朴訥とした風呂に至って感動した。

その温泉に、また再び行くことができる。それは無上の歓び。

 

朝7時。

建物のネオン管はまだ辛うじて点灯していた。

これが点いているのと、いないのとでは、天と地の開きがある。風情が違うのだ。

200円を払って、いざ中へ。そう、原泉かけながしのお湯が僅か200円なのだ。

朝からお風呂に入る幸せを噛みしめながら。

 

風呂桶はコンクリートの打ちっぱなし。タイルなんかではない。

ねずみ色の古びた風呂桶。お湯は柔らかく、どちらかといえばぬるい。だが、加温加水なし、しかも床下からも涌きあふれるという奇跡の湯。豊富な湯量が、遠慮なく溢れ出てくる。

 

近所のおじさんらが朝風呂に訪れ、あれやこれやと話しをする。

ボクはただお湯に浸かり、瞑想をする。

 

気持ちいい。

ただただ。

あるがままに。

 

朝の散歩と朝風呂。

躰と意識が清廉になっていく。

その瞬間が、まさに朝風呂の極意である。

 

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
うん (ふらいんぐふりーまん)
2015-06-08 11:44:24
やっぱ温泉は、こういうとこが一番いい感じだよな、師よ。
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Unknown (熊猫)
2015-06-08 14:36:22
こういう秘湯ともいうべき温泉が、世の中にはたくさんあるんだろうね。
返信する

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