後楽園に黄昏が迫っている。
白山通りを行き交うクルマの列は忙しなく、ストップとゴーを繰り返す。
あの頃、白山の校舎を出て、水道橋駅に向かう途中、丸の内線の高架をくぐると、西側の視界が開けた。矯声とともに、乗り物がものすごいスピードで宙を走り、その蜘蛛の糸のようなレールの向こうに見える、黄昏ゆく空を、ボクはいつも見ていた気がする。
もう20数年前のことである。
通り沿いの歩道に、ボクの残像がまだ残っているようで、その見えない微かな光を目で追っていくと、8ビートのドラムの音が脳の奥から聞こえてくるんだ。
多分、世間知らずで馬鹿だったんだと思う。何も考えることなく、無神経に生きていたんだと思う。さも、自分が何かに抗って、さも、自分で何かを獲得したかのように。
あれから、この街に来ることはそれほど、多くはなかった。だから、こうして、この懐かしい通りを歩くと、ついあの頃のしみったれた8ビートとともに苦いおもいがよみがえってくる。
その東京ドームシティの一角。
かつてはなかった、アイリッシュパブの「ハブ」。
ちょっと、歩き疲れた。
ボクは、店に入り、ギネスのパイントとフィッシュ&チップスを頼んだ。
たまに、食べたくなる「ハブ」のフィッシュ&チップス。ギネスとの最高のパートナー。
ギネスのグラスは、黄昏ゆく街並みに、まるで夜の帳が降りたような漆黒のカーテンが沈んでいく。東京ドームシティの色とりどりの光がグラスに反射し、やがて溶けていった。
フィッシュ&チップス。
オニオンソースをかけて。
おいしい。
ボクの中のロックンロール。
あの頃見ていた風景とともに、今よみがえってくる。
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