インドの西部にあるラジャスターン州でも、4月の終わりともなれば、5時半には明るくなってくる。わたしは起き上がり、チャイ屋を探した。バスターミナルには少しずつ、長距離バスを待つ人々が出てきた。それに合わせて、チャイ屋も出ているはずだ。
予想通り、バスターミナルの入口にチャイ屋はいて、曲芸のようにチャイを淹れていた。
「チャイを一杯」と言って2ルピーを渡すと、店のおやじは「4ルピーだ」と返した。わたしはそれに反論する元気はもうなかった。野宿をして、一泊分の宿泊費を浮かすことは出来たが、一睡も出来ないまま、朝を迎えたのだ。これから、宿探しが待っていると思ったら気が重くなった。
チャイを飲みながら、タバコを吸っていると、一人のリキシャーワーラーが近づいてきた。
「モーニング」。
「やぁ」。
「どこへ行くんだい?」。
彼ら、お決まりの挨拶だった。
「レイクサイドのゲストハウスは高くて、昨夜は野宿したよ」。
わたしはそう言った。
彼にカマをかけたのだ。
すると、リキシャーワーラーはこう言った。
「安い宿はそっちじゃない。バザールの近くだ」。
「あぁ、そうだったな」。
わたしは吹き出しそうになるのをこらえて、言い返した。
「乗ってけよ」。
「まだ、宿は開いてない。後でお願いするよ」。
そう言って、彼との会話を終えた。場所さえ見当がつけば簡単だ。何しろ、時間はたっぷりとある。後はゆっくりと探すだけだ。
チャイを飲み終えて、わたしは市街を目指すことにした。
ウダイプルはピチョラー湖を中心とする街で、湖を見下ろす宮殿が有名である。湖の街だけに、風がやや爽やかだ。もしかすると、この街はインド人にとっての避暑地かもしれない。
市街地に入ると、朝の7時を過ぎたばかりだったが、かなりの人が歩いていた。もしかすると、バザールに行く人かもしれない。そう思い、人々の後をついていくと、案の定バザールに出た。まだ多くの店は閉まっていたが、野菜やスパイスを売る店は、色とりどりの品物を既に広げていた。
しばらく歩くと、ターリーの店を見つけた。腹も空いてきたところだし、わたしは店に入り、ターリーを注文した。客の姿はまばらで、店の主人もそんなに忙しくなさそうだ。そんな頃合いを見計らって、主人に尋ねてみた。
「このあたりにゲストハウスはないか?」。
主人はわたしの風体を値踏みするように見ながら、親指で、店の裏側を示した。
「いくらだい?」
わたしが言うと、主人は「ターリー付きで、一泊45ルピー」。
「え?」
わたしが驚く様子をすると、「宿も経営している」と彼は笑いながら言った。
「ターリーは3食?」
わたしが続けざまに尋ねると、指でVサインを作って、「2食だ」と言った。
「ターリーなしなら、一泊いくらだい」。
わたしの質問攻めに、うんざりした様子で彼はこう答えた。
「35ルピーだな」。
決して悪い交渉ではなかった。宿泊費もターリーの値段も、これまで辿ってきた、いずれの地よりも格段に安かった。わたしは咄嗟に、「ターリー付きで頼むよ」と言ってから、気がついた。思いがけずにロープライスだったから、値引き交渉を忘れてしまったのだ。
しかし、今日はなんと運がいいのだろう。リキシャーワーラーの話から、バザールまで来て、入った定食屋がゲストハウスを経営している。その宿代が飯付きで、しかも安価とは。
物乞いへの施しが巡り巡って返ってきたのだろうか。ターリーを食べながら、わたしはそんなことを思った。
ところで昨日観たテレビ、みやぞんがインドでタンドリー窯自作してたけど、それで作ったタンドリーチキン、なかなか美味そうだったなあ。
タンドリーチキンもある高級(?)ターリー、食べたいなあ・・・。
タンドリーチキンって高級だよね。師は「ティッカ」って知ってる?タンドリーチキンが骨付きであるのに対して、ティッカは骨なしのもの。「オレ深」のときには気づかなかったけれど、3年前にボブネッシュんチに行ったとき、お店の店頭でよくぶら下がっているのを見たよ。ティッカもタンドリーで焼いてるようで、オレンジ色してた。ティッカの方が安いよ。
「イッテQ」。子どもとかみさんがよく見てるよ。昨日ちらっとみたらアーリア系の人が映ってたけれど、やっぱりインドだったか。ちなみに昨夜は、読書感想文に追われていたよ。
インドの旅ではティッカ、食べてないなあ。なんせ最初の旅では「インド内菜食主義」という謎のテーマを作って、ほとんど肉食べてなかったから。
今思えば、もっと色んなもの食べときゃ良かったよ・・・。
インド内菜食主義。
確かに謎だね。
師はバフステーキ食べなかったっけ?
あれは2回目か?
ティッカ、自分も食べてないよ。
ボブネッシュの家に行って、いろいろ教わったぐらいだから、自分も偏ったものしか食べてなかった。
まぁ、まだお互いインドには行くでしょう。その時、いろいろ試してみようよ。