また、路麺の名店の灯りが消えた。
旗の台の駅前にある「だし家」である。その店名の通り、出汁が絶品の路麺店だった。
クルマ好きなら走り屋、サッカーならば点取り屋、プロ中のプロを指すのが○○屋だ。しかも、家がついてると、更にプロを指す。作家、写真家など。つまり、出汁のプロなのだ。
京都に、「お出汁と小麦の店」という店がある。その店はラーメン屋さんなのだが、それは結果に過ぎない。この「だし家」も究極の出汁を求めたのかも。それが結果的にそば・うどん屋になったというのは穿ちすぎか。
ともあれ、この店は路麺でありながら玄人の雰囲気が漂っていた。店に入りにくいのだ。だから、何度も入店しようとして、やめたことがある。素人は拒まれるのだ。ようやく、入ったのが最初で最後の入店だった。
「とろろ昆布そば」。
330円。
丸みのある優しいお出汁。かつお出汁だけでなく、もう少し複雑な香り。尖って攻撃的なお出汁とは対象的で、恐らく何十年もかけて、この返しにたどり着いたに違いない。「だし家」の店名に相応しい芳香。抜群にうまい。330円で、この幸せがいただけるなら、なにものにもかえがたい。そして、この器。路麺の店でもなかなか見ない、緑の丼が洒落ている。
うまいよ。うますぎるよ。
心の中から、そう叫び、ひたすら蕎麦をすすった。
ごちそうさまでした。
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